ロシア情勢に詳しい筑波大学名誉教授、中村逸郎氏が5月8日、ニッポン放送「辛坊治郎 ズーム そこまで言うか!」に出演し、辛坊と対談。ロシアの大統領府クレムリンに対して行われたドローン(無人機)攻撃について、「仕掛けたのは(ロシアの民間軍事会社)ワグネルだ」と私見を解説した。
ロシアは9日、第二次世界大戦で旧ソビエトがナチスドイツに勝利したことを祝う戦勝記念日を迎えるが、それを前に大きなニュースが続いている。ロシアの大統領府クレムリンに対するドローン攻撃、「10日に撤退する」と表明したロシアの民間軍事会社ワグネルがウクライナ東部のドネツク州バフムトへの大規模攻撃を開始、さらにウクライナ侵攻を支持する著名な作家の乗る車が爆破され運転手が死亡するという事件も起きた。戦勝記念日を前にしたロシアで今、何が起きているのか-。
辛坊)クレムリンに対するドローン攻撃を仕掛けたのは誰だと思われますか。
中村)僕は知っています。
辛坊)本当ですか。そのお話を伺う前に、ドローン攻撃の概略を整理しておきます。ロシアの首都モスクワにある、ロシア政治の中枢であるクレムリンに3日未明、ドローンが飛び込み、上空で爆発している映像が全世界に配信されました。
攻撃を仕掛けた者に関しては、有力説が主に3つあるようです。それは、ウクライナによる攻撃説と、ウクライナへの攻撃を激化させようとするためのロシアによる自作自演説、そしてウクライナに共感する者による近距離からの攻撃説です。さて、中村さんから極秘情報をお伝えしていただきます。
中村)その3説は、いずれも間違いです。私は、ワグネル関わっているとみています。今回のドローン攻撃は、ロシアのプーチン大統領が執務をしている建物の上にピンポイントで行われました。ただし、ドローン攻撃といっても爆発は花火のように小規模でした。モスクワ市内は現在、厳重な防空システムが稼働しています。ですから、攻撃を仕掛けたとすれば、クレムリン内からドローンを飛ばしたと考えるのが自然です。
辛坊)クレムリンの外から飛ばしたら、あのように小さい物でも到達できないだろうということですね。
中村)そうです。今回の攻撃ではドローン2機が使われましたが、クレムリン内から飛ばされたとすると、プーチン大統領の政権中枢に反プーチン勢力がいると考えられるのです。
ドローンが爆発したドーム状の建物の上にはロシア国旗が掲揚されています。ドローン攻撃は、どうやらロシア国旗を狙ったのではないかと思われます。ドローンが爆発した際の映像を見ると、ドームを2人の人物が駆け上がっている様子も映っています。この2人は、ドローンの爆発で焼かれたロシア国旗を下ろし、国旗の代わりにワグネルの旗を掲げようとしていたのではないかと、私は考えています。
ワグネルは今、すごく威張っています。しかし、ワグネルの旗を揚げようとしたのだけれども、ドローンが結果的にはロシア国旗に当たらなかったということなのだと思います。
辛坊)なるほど。そうなると、攻撃は内部犯行といえるのでしょうか。
中村)プーチン大統領が最も怖がるワグネルの創始者プリゴジン氏が、プーチン大統領に反旗を翻しているということです。
辛坊)それは、今後のロシアを占う意味で重要な情報ですね。
中村)その通りです。ワグネルは現在、ウクライナとの最前線で戦っており、多数の死傷者を出しています。一方、ロシアの正規軍は最前線の後方から安全にウクライナへ向かっています。つまり、ワグネルはプーチン大統領に使われるだけの身になっているわけです。
こうした状況の中、プリゴジン氏はロシア軍の上層部がワグネルに弾薬の供給を渋っていると非難する声明をSNS(交流サイト)上で発表しました。ロシアのショイグ国防相を暗に批判した形です。今回のドローン攻撃は、その後に起きています。
プリゴジン氏とショイグ国防相の対立は非常に厳しくなっています。ワグネルが最前線から引き揚げると、今回の戦況はもはやウクライナ軍とロシア軍の対立構図ではなく、ロシア国内の権力闘争という構図になります。今後、ロシアの国内情勢を注視していかなければならない状況になってきているといえます。
この記事の画像(全1枚)
番組情報
辛坊治郎さんが政治・経済・文化・社会・芸能まで、きょう一日のニュースの中から独自の視点でズームし、いま一番気になる話題を忖度なく語るニュース解説番組です。
[アシスタント]増山さやかアナウンサー(月曜日~木曜日)、飯田浩司アナウンサー(木曜日のみ)