戦略科学者の中川コージが5月23日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。中国がアメリカ大手の製品の調達を禁止した半導体について解説した。
中国がアメリカの半導体大手の製品調達を禁止
中国のインターネット規制当局は5月21日、アメリカの半導体大手「マイクロン・テクノロジー」の製品について、中国国内の主要な情報インフラ事業者による調達を禁じると発表した。サイバーセキュリティに懸念があるためとしている。
飯田)アメリカの対中半導体規制に対抗して、中国側も動いている感じですか?
中川)工業情報化部というところが規制しているのですが、そこはインターネットの規制当局なので、サイバー関係のことで規制してきているのだと思います。
アメリカによる規制への報復とこれまでの反スパイ法などと揃える、という2つの文脈
中川)ただ、党全体の意思としては、当然ながら半導体に経済安全保障のフォーカスが当たって、アメリカが規制してくる。そのなかで「自分たちも報復する」という形で対応しておかないと、という政治的な意図も当然あります。
飯田)報復として。
中川)もう1つは、サイバーセキュリティや天然資源に近いような形で、ネット資源のようなものも彼らは国家的な戦略資源として見なしています。そういう意味では、いままでの「反スパイ法やサイバーセキュリティ法などと揃えた形で」という文脈もあります。
飯田)反スパイ法やサイバーセキュリティ法などと揃えた形で。
中川)その2つですね。1つは経済安全保障の報復として。もう1つは彼らがいままでやってきたサイバーセキュリティに関する、自分たちの方針と揃える形で進めているのだと思います。
アメリカの規制によって、「中国の半導体の内製化が10年遅れるだけ」とも言える ~「規制することによって国産化が進んでしまう」ということも
飯田)実際のところ、これで何か問題が起こるのでしょうか? それとも、もう内製化してしまっているからほとんど問題ないのでしょうか?
中川)彼らは半導体の内製化を実現できていません。半導体に関しては「中国製造2025」という目標を掲げていましたが、まったく到達できていない。
飯田)半導体の内製化は。
中川)トランプ政権時代に始まった対立、あのときは米中貿易摩擦というような形でしたけれども、そこから対立が激化した。そのなかで半導体に関しては、国産化を目指していたけれど、まだ全然達成できない段階でアメリカにやられてしまった。そういう意味では、相当の痛手ではあります。
飯田)内製化できていないなかでの規制は。
中川)ただ、それは5年~10年という期間では痛手なのですが、もともと国産化を目指していたという意味では、2030年代だった達成目標が2040年代になるかも知れないということです。
飯田)10年遅れるだけとも言える。
中川)遅れるわけですが、逆に言うと、いままでは「半導体の規制をするぞ」とアメリカが言っていれば、ある意味で中国は怖いわけです。しかし、もし彼らが国産化してしまった場合、アメリカは逆に「カードが少なくなってしまう」という裏返しでもあります。
飯田)中国が国産化してしまうと。
中川)そのなかで半導体は、経済安全保障上のいちばんのトピックとして、20年後~30年後を考えたときに、今度は中国が独自で強くなってしまう可能性があります。「規制すれば勝った」という話ではなく、「規制することによって国産化が進んでしまう」ということも長期スパンではあり得るので、我々はそこも懸念しておかなければなりません。
中国は半導体を使わないハイエンドな製品で経済的につなげられるので、半導体がなくてもいい状況にある可能性も考えるべき
中川)経済安全保障に関して、半導体の規制だから、アメリカ側も中国側も非常にホットな話題として扱っているわけです。
飯田)半導体だから。
中川)しかし、中国はミスリーディングをよくするので、「半導体に目が向いてくれれば、他のことができるではないか」というような考えもあります。
飯田)なるほど。
中川)半導体ばかりを気にしていると、半導体以外の産業項目も多いので、ある意味でミスリーディングされないようにしなければいけない。中国は手品師と思っておいた方がいいです。
飯田)手品師。
中川)危ないですよね。
飯田)注目している右手ばかり見ていると、左手で何かやっているのか? と。
中川)わからないのです。
飯田)半導体ばかりに目が行くけれど、もしかするとEVやドローンだとか……。
中川)例えば他の、ハイエンドの半導体を使わないものはたくさんあるわけです。そのような製品で経済的につながれれば、彼らとしては「別にいい」という状況になっているかも知れません。
半導体以外の「総量」で考えるべき
中川)ゼレンスキーさんが日本に来たことは、決して中国は嫌ではないのです。ミスリーディングをよく使うので、この辺りで「半導体、半導体」と、半導体ばかりに気を取られているだけではなく、他のところもきちんとチェックしなければなりません。
飯田)他のところも。
中川)もちろん、オランダからの製造装置が止められたことは、中国としては確かに痛いのです。半導体は間違いなく痛い。しかし我々は、他のところでどれだけ痛がっているかという総量で見た方がいいです。
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