ジャーナリストの鈴木哲夫が5月25日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。「こども特例公債」について解説した。
少子化対策の財源として「こども特例公債」発行へ
2024年度から政府が行う「次元の異なる少子化対策」で不足分の財源を穴埋めするため、国債の一種である「こども特例公債」を約2年間に渡って発行する方針を固めた。また、社会保険料を引き上げて財源とする「支援金制度」も創設する見通し。
飯田)社会保険料の引き上げは、500円などさまざまな数字が出ていますが、来月(6月)に閣議決定する「骨太の方針」に盛り込まれる予定です。
鈴木)そもそも政策をつくるのであれば、財源をどうするかという問題とセット論でなくてはおかしいわけです。防衛費のときもそうでした。とりあえず防衛費を増やすけれど、「では財源は?」となってしまう。そのときは増税という話になりましたが。
飯田)セットで。
鈴木)少子化対策や子育て政策は、財源がわからないまま「あれをやります、これをやります」と、ずっとメニューだけが並んできました。
子育て政策は財源含めて社会保険のなかで行う ~施政方針演説で、岸田総理が触れる
鈴木)でも、実はヒントがあったのです。今年(2023年)1月の施政方針演説で、岸田さんが「子育て政策を行う」と言っています。財源も含め、仕組み等については「社会保険のなかで」と、チラッと言っているのです。注意しなければ聞き流してしまいます。
飯田)そうですね。
鈴木)そこで既に、「財源を含めて社会保険で上積みする」という可能性を入れているわけです。
飯田)社会保険でと。
鈴木)社会保険には「医療」「介護」「年金」もあります。それらも含めてというのは、「あれあれ?」と思います。
社会保険のなかでやるということは、いずれ国民負担になる
鈴木)子どものためにお金は取らないけれど、他のところ、例えば医療費や介護でお金を徴収する。あるいはみんなに渡す年金を減らして、その分を回すなど、「いずれ国民負担になるのだろうな」という内容が、あの一言に隠れているわけです。
飯田)なるほど。
鈴木)これはある種、官僚の作文の妙と言うのでしょうか。でも、「これは大変なことになる」「結局は国民負担だよね」と、そこで気付いた人たちもいたのです。そしてその通りになってきた。
少子化対策の財源として扶養控除を見直す案も
鈴木)子育てや少子化対策について、6月の骨太方針に入れるために、財源含めて会議を開くわけです。そこで岸田さんは「増税はしない。税金で賄うことはしない」と言ったので、「増税はないのだな」と思うかも知れません。でも増税はないけれど、社会保険で負担するなら、実質増税とは言わなくても国民が負担することになるのです。
飯田)天引きされますよね。
鈴木)いま言われているのが、子育て支援として高校生まではずっとお金を渡す代わりに、いままで行っていた扶養控除、子どもについても扶養している場合には控除されるのですが、それをなくしていこうという話が出ています。
飯田)そういう話が出ていますね。
鈴木)これはある種、まだ観測気球の可能性はあるのですが、控除がなくなってしまったら、税金をよけいに払わなくてはなりません。高校生で1万円をもらったとしても……。財源というのは、非常に巧妙な話なのです。
飯田)扶養控除がなくなってしまう方が、場合によっては痛いことが多いですよね。
鈴木)その通りです。社会保険のなかで、ある程度の財源、ざっくり「3兆円」と言われていますが、これが安定するまでのつなぎとして「つなぎ国債」を発行する。「そこまで埋めていく」などと言っています。
「こども特例公債」は2年間発行 ~3年目からは社会保険の負担か
鈴木)少し負担して、ソロリソロリと始まりますが、3年後くらいになったらみんな気が付きます。「あれ? 今月からとんでもなく社会保険料が増えている。なぜ増えているの?」と。これはいつものパターンです。
飯田)岸田総理は「当面は」という感じで、「税金はあてにしない」と言っていますが、「こども特例公債」は2年に渡って発行するということです。では3年後からはどうするのか。やはり税金から、という話になるのでしょうか?
鈴木)社会保険の負担になると思いますよ。年金を減らしたり、負担をさらに増やすなどの可能性もあります。正直ではないと思いませんか?
飯田)正直ではないですね。
子育てを社会で考えるのであれば、議員定数を削減することなど、正直な議論をするべき
鈴木)本当に子育てを社会で考えるならば、「痛みも同時にある」、「こういうところで歳出削減をするのだ」と示して欲しい。議員定数の削減など、「みんなで負担しながら子育てをしていこう」という正直な議論をもっとしなければいけません。いままでと同じ手法でやられて、私たちがお金を出し、私たちが子どもへの対策を行うのでは、異次元でも何でもありませんよね。
飯田)そうですね。
鈴木)その辺りの正直さを、私は求めたいです。
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