外交の得意な岸田総理の本領を発揮した「G7広島サミット」の成功

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東京大学公共政策大学院教授・政治学者の鈴木一人が5月26日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。G7広島サミットを含め、岸田外交について解説した。

外交の得意な岸田総理の本領を発揮した「G7広島サミット」の成功

2023年5月20日、集合写真撮影に臨む岸田総理~出典:首相官邸HPより(https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/actions/202305/20g7summit_session.html)

岸田総理が7月開催のNATO首脳会議に出席調整へ

岸田総理大臣は7月にバルト3国のリトアニアで開かれる欧米の軍事同盟、北大西洋条約機構(NATO)の首脳会議に出席する方向で調整に入った。先進7ヵ国(G7)議長国として、ロシアが侵略を続けるウクライナへの支援や、インド太平洋地域での連携強化を図る。

飯田)G7広島サミットが終わり、岸田外交はいろいろ手を打っている感じがあります。サミットの結果を含めて、岸田さんの外交をどうご覧になりますか?

鈴木)安倍政権のときに外務大臣を務めていましたし、外交が得意なのだと思います。英語もできますし、そういう意味では、岸田さんの本領が発揮されたのではないでしょうか。

NATOとAP4によってアジア太平洋とヨーロッパが連動 ~安全保障のグローバルな再編成が起きている

鈴木)NATOに関しては、アジア太平洋パートナー(AP4)と呼ばれる枠組みがあります。アジア太平洋諸国のNATOに近い友好国、日本、韓国、オーストラリア、ニュージーランドがいま連携しています。

飯田)AP4。

鈴木)NATOにとってみると、最大の問題はロシアによるウクライナ侵略ですが、同時にインド太平洋における安定、とりわけ中国の問題にもNATOが何らかの関与をしていく。お互い様ではありませんが、アジア太平洋とヨーロッパが連動するような、安全保障のグローバルな再編成がいま起きています。

この両者を調整する役目が日本

鈴木)その一環として岸田総理は今度、NATOの首脳会議にも出る方針ですが、NATOのメンバーになるわけではないので、ここは両者を調整していく。アジア太平洋の状況をNATOの人たちにも理解してもらい、何かあればお互いに助け合う関係をつくりたいのだと思います。

飯田)広島サミットの直前に、NATOの連絡事務所を東京に開設するという話も出てきました。これも同じ流れですか?

鈴木)そうですね。今回、NATOの事務所が日本にできるのは、いわゆるリエゾンオフィスと言うのですけれども。

飯田)リエゾンオフィス。

鈴木)緊密に連絡を取り合う場合、対面で話す方が情報量は多くなります。いろいろな状況に対し、柔軟に対応できるようにするための事務所です。NATOの事務所としては、アジアに初めてつくられるわけですけれども、連携を強めていくことが目的だと思います。

現実的な対応をする岸田総理 ~アジア太平洋とヨーロッパを連動させるためのリーダーシップを発揮

鈴木)岸田さんはおそらく、「自分の得意分野は外交だ」と思っているのでしょう。

飯田)得意分野だと。

鈴木)核軍縮や核なき世界のような大きな目標はありますが、岸田さんは非常に現実的です。特にこだわりがあるわけではなく、アメリカとの関係についても、ロシアによるウクライナ侵略についても現実主義的な対応をする。

飯田)ウクライナ情勢に対しても。

鈴木)そういう意味で、岸田さんはこういう場面でリーダーシップを発揮するのが上手なのだと思います。

ゼレンスキー大統領の広島サミットへの電撃的な来日にも混乱なく対応 ~「どの時点で誰に話をすれば動きやすいのか」を知悉

鈴木)「どの時点で誰に話をすれば動きやすいのか」を知悉している。官邸内や外務省内、自民党内がよく見えているのではないでしょうか。先日のG7サミットにも、いきなりゼレンスキー大統領が来ましたが、混乱してもおかしくない状況でした。

飯田)そうですよね。

鈴木)でも、落ち着いてこなしました。サミットのスケジュールは警護の問題もあるので、最初からかっちり決めるのが一般的です。

飯田)各国の首脳が来ますから。

鈴木)それを混乱なく、大きく変えていった。岸田さんはそういう目配りや気遣いが上手なのだと感じさせられました。

サミットの元来のコンセプトである首脳同士の信頼を高めることができた

飯田)ゼレンスキーさんが「来る、来ない」のところでも既にスケジュールは変わっていましたけれど、まずG7各国首脳とのセッションに出席し、そのあとは招待国ともアウトリーチ会合を行いました。そして、ここを予定より1時間以上延ばし、全員に意見を言ってもらうような場面もありました。なかなかそういうサミットはないですよね。

鈴木)そうですね。サミットの元来のコンセプトは、首脳が個人として参加し、信頼を高めることです。外交交渉のように原稿を読んで演説するような感じではなく、首脳同士の会話を重視するのがサミットです。

飯田)「フミオ、日本はどうよ?」というような感じで。

鈴木)まさにそうです。今回も平和記念公園で歩きながら会話するようなところを重視していました。厳島神社でもみんなが車座になって話しているようなシーンがたくさんあるわけです。

ゼレンスキー大統領など話題になるテーマが詰め込まれ、絵になるサミットだった

鈴木)それをそつなく、時間調整をしながらやり遂げるのは大変なのですけれど、うまくやったなと感じます。いま各国首脳の個人のツイッターやホームページに、G7広島サミットの動画が公開されています。

飯田)各国ありますね。

鈴木)マクロン大統領は「俺が偉いのだ」というような雰囲気があったり、イギリスのスナク首相は控えめで、「主役はゼレンスキー大統領」というような動画だったり。各国の特色が出ていて面白いです。

飯田)それぞれ違いますね。

鈴木)ああいう動画を見ても、いろいろなものを詰め込んだ絵になるサミットでしたし、同時にゼレンスキー大統領をはじめ、話題になるテーマが詰め込まれていました。

飯田)そうですよね。

鈴木)アウトリーチ招待国の首脳にしても、モディ首相を始め、いろいろな意味で「自分たちが行ってよかった」と思えるようなサミットだったと思います。そういう意味では、岸田さんは今回、非常にうまくやったのではないでしょうか。

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