北朝鮮が軍事偵察衛星「2回目の打ち上げ」を急ぐ『意図』
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防衛研究所・地域研究部主任研究官の渡邊武氏が6月1日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。北朝鮮が宣言した軍事偵察衛星の2回目の打ち上げについて解説した。
政府、北朝鮮の軍事偵察衛星の2回目発射へ警戒維持
浜田防衛大臣は5月31日、北朝鮮が早期に軍事偵察衛星の2回目の打ち上げを目指す宣言をしたことを踏まえ、次のように述べた。
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ロケットとしての能力拡張に集中した北朝鮮
飯田)彼らはロケットと言っていますが、北朝鮮が発射した弾道ミサイルはどんなものでしょうか?
渡邊)もともと発射場の拡張を行っていたところで、実際にロケット発射に適した場所ではあります。新型エンジンを試そうとしていたところ、その技術を得る過程で行った発射だと考えています。
飯田)新型ロケットと言うか、ミサイルを使ってきましたが、どのような特徴があるのですか?
渡邊)詳細はよくわからないところがありますが、おそらく衛星軌道に乗せられる重量を引き上げているなど、何かしらの能力の拡張があったのではないかと考えています。
飯田)より重いものを運べるということですか?
渡邊)その辺りを重視したのではないでしょうか。今回、固体燃料を使うのではないかという話も一部ではありましたが、いままで経験があって、能力を高めるのに適している液体燃料のエンジンを使ったようです。ロケットとしての能力拡張にかなり集中したのではないでしょうか。
最近は本当の情報を基盤にプロパガンダを行う ~打ち上げ失敗を認める
飯田)今回は、失敗したことを北朝鮮側も認めています。失敗を認めるのは珍しいことですか?
渡邊)昔の北朝鮮では、あまりなかったことですね。失敗しても「成功」と言い張るような国でした。金正恩氏の世襲後にその傾向が強くなりましたが、最近は本当の情報を基盤にプロパガンダを行う傾向があります。
2段目エンジン点火の際に異常発生か
飯田)今回の失敗ですが、2段目への点火が上手くできなかったのではないかと言われています。そのような理解でいいのでしょうか?
渡邊)そのようですね。北朝鮮自身が言っているのと、韓国軍などがみているもので、ほぼ話は一致しているようです。
飯田)2段目のエンジン点火は難しいのでしょうか?
渡邊)その辺りの技術的なことについては詳細を存じていないのですが、2段目に至るところで、少し難しい動きをさせようとしていたという指摘はあるようです。
2021年から目標として掲げていた軍事偵察衛星の打ち上げ
飯田)今回は載せる衛星も軍事偵察衛星だと言われています。これは事前に北朝鮮も言っていたことですよね?
渡邊)事前にも言っていましたし、2021年のときから、そういったものを目指すと言っていました。
飯田)2021年の時点で掲げた目標に向け、着々と前進しているのでしょうか?
渡邊)日米韓などの軍事目標を叩くことができるような能力を構築しつつあるのだと思います。まだ完成までの距離は少しあると思いますが。
「リアルタイムで標的を掴む」ことを重視する金正恩氏 ~そのためには軍事偵察衛星が必要
飯田)軍事偵察衛星で見ようとしているものは、どういったものが考えられますか?
渡邊)艦艇などです。海の上にアメリカ軍などが展開してくる、増援部隊が来る、空母が来るとなったときに、それを撃つ能力を持とうとしているのではないかと前から言われていました。しかし、そのためにはリアルタイムで標的を掴まなくてはいけない。金正恩氏自身、先日の指導の際にも「リアルタイム」を重視する内容の発言をしています。
飯田)リアルタイムでアメリカや同盟国の艦艇を把握する。例えば北朝鮮が仲よくしている国で言うと、中国やロシアはその情報を持っていますよね?
渡邊)以前言われていたのですが、例えば中国が、北朝鮮がやるような作戦に協力してくれるなら話は別ですけれど、そうなると中国の意思に依存して行動することになってしまいます。北朝鮮としては、やはり自分の能力を持ちたいのでしょうね。
飯田)北朝鮮としては、仮に中国やロシアであっても独立独歩で動きたい思惑があるのですか?
渡邊)日本と韓国とアメリカなどの協力をイメージすると、少し違うところがあります。中国やロシアとの関係では、あまり合同で訓練するような経験もありません。そうなると独自性が欲しいのではないでしょうか。
飯田)「血の友誼(ゆうぎ)」などと言いますが、演習も両方では行っていないのですね。
渡邊)そういった仕組みの同盟関係ではありません。同盟関係ができるまでにも相当の摩擦がありました。
日本からの迎撃は可能なのか
飯田)日本の対応ですが、今回のようなミサイルの場合、迎撃は可能なのでしょうか?
渡邊)能力的には可能だと思いますが、確実性を考えると各種センサー、あるいは日米韓で協力する情報共有から、どのくらい状況を素早く把握できるかにかかってくると思います。
他国から非難を受けることを呼び水として核実験を行う ~国内向けのプロパガンダの意味も
飯田)核実験なども含めて、今後の北朝鮮の動きはどんなものが考えられますか?
渡邊)「核実験に至る」という可能性も排除できないと思います。かつての衛星発射の例として、少し前に第2回核実験がありましたが、衛星を発射して他国から非難が出ることを期待しているのです。非難を受けたことで「我が国の自主権を侵害した。だから我々は核実験せざるを得ない」などという形を取ることがあります。
飯田)呼び水として打ち上げを行っているのでしょうか?
渡邊)そうですね。「外から敵が来た。この体制こそが戦うということなのだ。国民よ、この体制に従え」というような形でもあるわけです。
飯田)国内向けのプロパガンダの部分もあるのでしょうか?
渡邊)いま、日米韓との対立が非常に深まっています。そのプロセスのなかでも行っていましたが、人民軍への再入隊キャンペーンなど、国内ではそのような運動も行っています。
ミサイルやロケットの発射を脅しとして使う
飯田)最終的には、北朝鮮はアメリカとの対話を目指すのでしょうか?
渡邊)目指すと思いますが、対話するときに「しばらくはミサイルやロケットを発射しない」と言うわけです。それは脅しであり、「要求を聞かなかったらまたやるぞ」ということです。「止めている」というのが脅しの手段ですので、一方的に脅されないようにしないといけません。
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