キャスターの辛坊治郎が5月30日、自身がパーソナリティを務めるニッポン放送「辛坊治郎 ズーム そこまで言うか!」に出演。岸田文雄首相が長男の翔太郎首相秘書官(政務担当)について、首相公邸の公的なスペースで不適切な行動をとった責任を取らせ、更迭することを明らかにしたことを巡り、「自分の保身のためには、こんなことで息子のクビを切る。典型的なポピュリズム(大衆迎合主義)だ」と指摘した。
岸田文雄首相、長男の翔太郎首相秘書官を6月1日付で更迭
岸田文雄首相は長男の翔太郎首相秘書官について、「昨年末に首相公邸の公的なスペースで親戚と写真撮影するなど不適切な行動をとった責任を取らせたい」などとして、6月1日付で更迭することを明らかにした。また、松野博一官房長官は翔太郎氏から「退職手当などを返納したい」という申し出があったことを明らかにした。
辛坊)この問題に関しては、多くの人が勘違いをしていませんか。岸田文雄首相の息子の翔太郎氏が宴会をしたり、写真撮影をしたりしていたのは首相「官邸」ではなく、首相「公邸」ですよ。公邸というのは、自宅の代わりです。
首相「公邸」は自宅の代わり 「官邸」ではない
辛坊)首相公邸と首相官邸はつながっています。公邸の維持は公費で賄われていますし、危機管理上からも首相は公邸に住むべきだという指摘があります。
一方、首相公邸は、かつて首相官邸として使われていました。つまり、公邸は旧官邸ということになります。この旧官邸では死者も出ています。1932年の五・一五事件では犬養毅首相(当時)らが旧陸軍青年将校によって殺害され、近代日本最大のクーデターとされる1936年の二・二六事件でも犠牲者が出ています。こうした経緯から、「幽霊が出る」という噂がたえず、気味悪がって別の私邸に住んだ歴代首相もいます。
繰り返しますが、首相公邸は自宅です。自宅に親族や知人を招いて宴会をしたら、悪いんですかね。これが首相官邸だったら大問題ですが、自宅ですよ。
政権維持のためには何でもする岸田政権の「ポピュリズム」
辛坊)息子の翔太郎氏が親族を集めて“閣僚写真”を撮ったのは、旧官邸時代に組閣の記念撮影に使われた「西階段」と呼ばれる場所です。現在の岸田政権下でも昨年8月の内閣改造の際に、本来の撮影場所である官邸の階段が工事中だったため、この西階段が使われました。ですから、公的なスペースといえば、そうです。このため、自宅として使う生活エリアではなく、歴史的建造物として扱われている場所で公私混同の不適切な行動をしたとして、週刊誌にたたかれたわけです。
しかし、私が首相だったら「官邸じゃなく、公邸、自宅だよ。住みたくないが、危機管理上、『住め』って言われるから、しかたなく住んでやってる。宴会しようが、どこで写真撮ろうが、大きなお世話だ!」と開き直りますね。ところが、岸田首相がそれを言わないのが、むしろたちが悪いと思います。
これまで何度も指摘してきていますが、岸田政権は典型的なポピュリズム(大衆迎合主義)政権で、政権維持のためには何でもします。政権の強力な支持母体である自民党保守派をつなぎとめるためには、防衛費の増額でも原子力発電所の再稼働でも何でもやります。どうすればポイントが高くなるかを綿密に計算し、支持率と見比べながら政策を決めている強烈なポピュリズム政権です。現在も50%前後の支持率がありますが、やることなすこと全てが将来に禍根を残すけれども、目先の支持率だけは高いという政権です。
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辛坊)岸田首相が息子の翔太郎氏を首相秘書官に起用した際に、私は「常識から外れている」と指摘しました。今回、岸田首相は翔太郎氏を事実上、クビにすることにしました。クビにされた翔太郎氏は、政治家としてはもう使い物にならないでしょう。つまり、岸田首相は自分の保身のためには、こんなことで息子の将来を犠牲にするような人だということです。要するに、岸田首相は典型的なポピュリズムです。私は最悪だと思います。
息子の翔太郎氏を巡っては、「一般市民の感覚が分かっていない」という声が、一部のメディアで報じられています。さらに、「一般庶民の感覚を取り戻すところから始めろ」との声も報じられました。しかし、私は逆だと思います。一般人が旧官邸である公邸に招かれたら、象徴的な場所で記念撮影をしたいと思っても不思議ではありません。翔太郎氏は一般市民の素朴な、純朴な感覚を持っているからこそ、あんなことをやってしまったのだろうと思いますよ。
番組情報
辛坊治郎さんが政治・経済・文化・社会・芸能まで、きょう一日のニュースの中から独自の視点でズームし、いま一番気になる話題を忖度なく語るニュース解説番組です。
[アシスタント]増山さやかアナウンサー(月曜日~木曜日)、飯田浩司アナウンサー(木曜日のみ)