今後の「米雇用状況」がアメリカの金融政策を占う上でも重要
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第一生命経済研究所・首席エコノミストの永濱利廣が6月1日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。今後のアメリカ経済について解説した。
米マーケットが注目する米雇用統計 ~インフレが減速せず、さらなる利上げが必要
飯田)アメリカの債務上限問題について、議会下院で上限を停止する法案が賛成多数で可決されました。アメリカ経済への影響はいかがでしょうか?
永濱)実は、マーケットではそれほど警戒していませんでした。これまでも債務上限問題は、議会がねじれると起きていました。たまに政府閉鎖などになることもありますが、今回はとりあえず(米議会下院で法案が通ったので)無警戒の状況です。それよりもマーケットが注目しているのは、6月2日に発表される米雇用統計です。
飯田)雇用統計。
永濱)アメリカを見ると、少し前までは7月にも利下げが織り込まれる状況でしたが、インフレが思ったよりも減速せず、むしろ加速しているため、まだ利上げが必要だという認識になっています。6月利上げか7月利上げかはわかりませんが、これを見る上では雇用統計が非常に重要です。雇用者数の伸びがコンセンサスに19万5000人くらいだったと思います。
飯田)非農業部門ですね。
永濱)これを上回るか下回るかで、マーケットが動くのではないかという気がします。
雇用統計が増えると利上げの織り込みが強まり、金利が上昇 ~再び円安に
飯田)19万5000人を上回るとなると、「まだ雇用は強い」と見るのですね。
永濱)「強いな」ということです。いまの状況ですと、6月は据え置きで7月には1回利上げすることが織り込まれています。雇用統計が少し強いくらいであればないと思いますが、雇用統計はかなり振れますので、大幅に増えると利上げの織り込みが強まり、金利が上昇するかも知れない。いまは円高気味ですが、また円安の方向に進む可能性はあると思います。
飯田)140円を超えてくるということですね。
雇用が強く、長短金利差がマイナスになっても景気が強い ~今後のアメリカの雇用状況が金融政策を占う上でも重要
飯田)アメリカの場合、インフレが高く、利上げしてもなかなか落ちない。その一因として、雇用が強く、人手不足が未だに続いていると言われます。
永濱)アメリカ経済の過去を振り返ってもそうなのですが、景気が悪くなるときは、必ず雇用も悪化するのです。アメリカでは長短金利差がマイナスに突っ込むと、「景気後退に入るのではないか」と言われる傾向があります。
飯田)長短金利差がマイナスになると。
永濱)今回はこれだけ利上げしていますので、長短金利差が思い切りマイナスに突っ込んでいます。多くの市場関係者は、「アメリカは景気後退だ」と見ていましたが、思ったよりも景気が強いのです。その原因は、おっしゃる通り雇用ですね。コロナで労働市場からアーリーリタイア組が退出してしまった影響が大きいと思います。そういった意味でもアメリカの雇用状況は、金融政策を占う上で非常に重要だと思います。
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