「OPECプラス」が協調減産を延長する「2つのポイント」
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経済アナリストのジョセフ・クラフトが6月6日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。原油の協調減産の枠組みを2024年末まで延長することで合意した「OPECプラス」の決定について解説した。
OPECプラス、協調減産を2024年末まで延長
飯田)主要産油国でつくる「石油輸出国機構(OPEC)プラス」が、協調減産の枠組みを2024年末まで延長することを決定しました。原油はこのまま高止まりになってきますか?
経済需要の減速懸念を見込んでの減産 ~減産して価格を維持したい
クラフト)2つのポイントがあります。まず、「OPEC」と「OPECプラス」が経済需要の減速懸念を見込んでいる印象が非常に強いです。従って、減産して価格を維持していきたい思いがあるのでしょう。もう1つは、アメリカの中東での影響力が著しく低下しているということです。
飯田)アメリカの中東での影響が。
クラフト)数年前まではサウジアラビアを筆頭に、ある程度アメリカとも連携してきた向きがありましたが、サウジアラビアにとっては、むしろロシアや中国との連携を強めている印象が大きい。この2つがポイントではないかと思います。
米中経済の先行きを楽観できないところからの減産
飯田)イランとの関係改善にも、中国が関わっているようです。
クラフト)減産のニュースが前にあったときは、一時的に80ドル台に乗ったのですが、やはり需要がおぼつかないのか、そこから70ドル前半で落ち着いている感じがあります。それも見込んでの減産延長ではないかと思います。
飯田)足元の動きも、米国産標準油種(WTI)が71ドル91セントです。だいたいこのくらいになってきているのですね。
クラフト)そうなのです。まず中国の経済回復がそれほど強くありません。アメリカも政策的に、インフレを抑制するための減速を促している状況なので、2大経済の先行きがあまり楽観的ではないことを見込んだ減産ではないかと思います。
シェールオイルにより、中東の重要性が低下するアメリカ ~そのためロシアや中国と連携していく中東諸国
飯田)アメリカの中東でのプレゼンスという意味では、第3艦隊など、さまざまな軍事的な拠点があります。本当にサウジアラビアはそっぽを向いたりするでしょうか?
クラフト)サウジアラビアがそっぽを向いているというよりも、アメリカでの中東の重要性が低下しているのです。特に30年以上前は、中東のエネルギーはアメリカの国家政策の重要なポイントでした。しかし、ここ10年~20年間はアメリカが自国生産を行うようになり、いまや原油生産のナンバー1はアメリカなのです。
飯田)シェールオイルですね。
クラフト)アメリカから見た中東の重要性が、昔より低下してきている。ここがいけないところですが、そうなると外交も薄らいでいく可能性があります。それを見越して、サウジアラビアや中東諸国はアメリカに頼るのではなく、ロシアや中国、その他の国と連携していく構図ではないかと思います。
中東と上手く付き合っていたトランプ政権 ~バイデン政権になり、中東でのアメリカ外交が著しく低下
飯田)1つ気になるのは、アメリカが陰に陽にかなり支援しているイスラエルに関してです。トランプ政権時代は、サウジアラビアとも手を結びつつ動くような方向だったと思いますが、いかがですか?
クラフト)トランプ政権のときはサウジアラビアとも仲がよく、イスラエルへのグリップも効いていました。トランプ氏自体にはさまざまな問題がありましたが、アメリカの大統領のなかでは、いちばん中東和平に近付いた政権だったと思います。
飯田)トランプ政権が。
クラフト)バイデン政権はイスラエルとも仲が悪いですし、サウジアラビアともギクシャクしています。中東でのアメリカ外交が著しく低下している印象は否めませんね。
イランとの対立を深めるネタニヤフ政権 ~イスラエル・イランの中東戦争につながる懸念も
飯田)政権発足時には、「イランとの6ヵ国合意をもう1回動かす。それで安定させるのだ」というようなことを言っていましたが、うまくいっていないのでしょうか?
クラフト)いまや諦めていますし、さらに懸念を言うと、実はイスラエルの国内問題で極右派のネタニヤフ政権がイランとの対立を深めているのです。最悪の場合、これがイスラエルとイランの中東戦争につながっていく可能性もあります。
飯田)中東戦争につながっていくことも。
クラフト)通常であれば、アメリカが影響力を持って双方を止めるのですが、いまは影響力が弱いので、アメリカでも歯止めが効かない状況に陥っていると思います。個人的に、先行き1年における地政学リスクの最大懸念は、台湾やウクライナよりも、中東かも知れないと危惧しています。
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