バイデン政権の足元を見て強硬に出る中国の「本当の狙い」
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経済アナリストのジョセフ・クラフトが6月6日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。今後の米中関係について解説した。
米国務省の高官が中国を訪問 ~ブリンケン国務長官の訪中を調整か
米国務省で東アジア・太平洋地域を担当するクリテンブリンク次官補が6月4日、中国を訪問した。2023年2月にアメリカ軍が中国の偵察気球を撃墜して以降、延期となっているブリンケン国務長官の訪中の時期なども話し合った可能性がある。米国務省によると、国家安全保障会議(NSC)のサラ・ベラン中国担当上級部長も同行している。
飯田)米中のパイプですが、少し前にサリバン大統領補佐官が王毅政治局委員と会談しました。そのくらいですよね。
APEC首脳会議の際、米中首脳会談に持っていきたいアメリカ ~より好条件をつくるためにアジア安全保障会議での国防相会談に臨まなかった中国
クラフト)サリバンさんやクリテンブリンクさん、先のブリンケンさんの訪中にしても、何が目的かと言うと、11月にアメリカで開かれる「アジア太平洋経済協力会議(APEC)」首脳会議のときに、「米中首脳会談に持っていきたい」というのがアメリカの意向です。
飯田)アメリカは今年(2023年)のAPEC議長国ですね。
クラフト)習近平体制が確立し、もはや独裁国家になった中国について、アメリカとしては習近平氏本人と話さなければ埒があかない。だからアメリカは首脳会談を切望しているのですが、中国は強(したた)かであり、アメリカの意図をわかっていますので、いまは強気に出ています。週末にシンガポールで開催されたアジア安全保障会議のなかで、米中の国防相会談があるのではないかと注目されていましたが、中国側は会いませんでした。
飯田)そうですね。米中の国防相会談については結局、行われませんでした。
クラフト)本来は会うべきなのですが、中国としては、この先のブリンケン国務長官の訪中、そしてバイデン大統領との首脳会談において、より好条件をつくるためには、アメリカの足元を見て強気に外交を進めているという印象です。
不要な衝突を避けるためにも、緊急時の直結したコミュニケーションラインを設けたいアメリカ ~拒否する中国
飯田)シンガポールで行われたシャングリラ会合のなかでは、国防長官が中国を批判しました。アメリカの艦艇に対して、中国の軍艦が相当接近して危なかったという映像まで出てきましたね。
クラフト)アメリカは常々、不要な衝突を避けるため、あるいは緊急時のために直結したコミュニケーションラインを設けたいのですが、中国はひたすらに拒否するわけです。
飯田)中国側が。
クラフト)ここが外交の駆け引きなのですが、本当に危ないのは、1つ間違えたら中国の戦闘機を撃ち落としたり、あるいはアメリカの軍艦が衝突したりと、何が起きるかわからないことです。中国は「危ない外交の駆け引きを行っているな」という印象です。
飯田)先日も、アメリカの偵察機の目の前に戦闘機が入ってきて、後方乱気流がかなり危なかったらしいですね。
消極的な民主党の足元を見て強硬に出る中国 ~政権によって駆け引きを変える
クラフト)ただ、国務省の幹部の話だと、その辺りの中国の出方はわかっていたようです。
飯田)わかっていた。
クラフト)ここが民主党政権の弱いところですが、ときにはアメリカが強気に中国を引き離して強硬姿勢を見せないと、中国も歩み寄りません。共和党はそういうところが強いのです。トランプ政権のときには行き過ぎた部分もありましたが、民主党はどちらかと言うと、そういう部分が消極的なのです。
飯田)民主党は。
クラフト)中国はその足元を見て、強気に出ている。そういう駆け引きです。政権によって駆け引きを変えるのも、1つのポイントかも知れませんね。
融和姿勢で入っていく民主党を見透かす中国
飯田)エスカレーションさせないために、こちらがまず1個エスカレートさせると。
クラフト)「エスカレート・トゥ・ディエスカレート」という言葉がアメリカ軍のなかにはあり、共和党はよく使うのですが、民主党はどちらかと言うと融和姿勢で入っていく傾向があります。そこを中国に見透かされているのだと思います。
すべて、11月の米中首脳会談を見据えた外交の駆け引き
飯田)今回のように国務次官補などが訪問しても、より高い条件を突き付けてくるのでしょうか?
クラフト)中国は当然、いい条件を要求してくるでしょう。アメリカがそこをどうするかですね。アメリカは第1段として、クリテンブリンク次官補が訪問することにより、ブリンケン国務長官の訪中を設定する。
飯田)第1段階として。
クラフト)そこで今度はブリンケン国務長官が、バイデン大統領との首脳会談の条件を設定するという流れです。当然、中国も最終的にはバイデン大統領との首脳会談を開きたいので、どこに落としどころを見つけるのか。これはある種の外交戦なので、偶発的にただ起きているわけではなく、11月の首脳会談を見据えた外交の駆け引きだと捉えるべきです。
相手が強いと思えば下手に出て、「弱い」と思うと、横暴に上から出る ~「弱い」と思われているバイデン政権
飯田)バイデン政権になり、アラスカで外交当局同士が会ったときに、ブリンケン氏と王毅氏が激しく応酬しました。その上の楊潔篪氏などとも、カメラが入っているところで激しくぶつかっていました。
クラフト)トランプ政権の場合、何をしてくるかわからないので、中国は怖かったのです。現に、急に関税を掛けられましたが、中国は挑発しませんでした。
飯田)なるほど。
クラフト)しかし民主党政権の場合、そこは怖くないのです。強く出てきませんから、強硬姿勢に打って出る。中国は相手を見ながら動いているのだと思います。
飯田)かつてニクソン氏がアメリカ大統領だった時代は、「マッドマン・セオリー」が使われました。本当に何をするのかわからない、「核を使うかも知れないぞ」ということまで言って、当時のソ連を怖気づかせた。権威主義国家にはそういう戦略が効くのかも知れませんね。
クラフト)権威主義国家が唯一わかる言葉は「強さ」です。
飯田)なるほど。
クラフト)相手が強いと思えば下手に出ますが、自分たちの方が強いと思うと、横暴に上から出る。いまのバイデン政権は見透かされてしまっているという印象です。
中国にとって日本は目障りな存在
飯田)それを日本の外交に応用できるかと言うと、難しいですね。
クラフト)アメリカとしては、日本や欧州と結束することで中国に圧力を掛けていく。特にアジアにおいて、アメリカの影響力は年々低下しており、日本の外交に頼っている部分があります。
飯田)日本の外交に。
クラフト)インド太平洋経済枠組み(IPEF)を日本がまとめたこともありますし、中国からすれば、日本は嫌な存在だと思います。軍事的には脅威ではありませんが、外交面では日本の強かさと言うか……。
飯田)仲間づくりの上手さですね。
クラフト)そういうところが中国としては目障りで、やりにくい部分だと思います。
G7での成功を揺るぎないものにするためにも、反ロシアや中国への経済威圧の流れをG20で固めなければならない
クラフト)今回のG7サミットは、まさしく日本の手腕を見せつけたところだと思います。
飯田)G7のなかだけではなく、ウクライナもそうですが、インドやオーストラリアなど、「アウトリーチ」と呼ばれる招待国たちも巻き込みました。
クラフト)中国やロシアから見た今回のG7サミットは、中国・ロシア包囲網を強めたという意味でも、「日本、いい加減にしろよ」という感じではないでしょうか。
飯田)共同声明だけを見ると、あまり強い言葉は入っていないのに、中国があれほど激烈に反応するというのは、「中身で取っていったな」というところですよね。
クラフト)今回のG7の成功を揺るぎないものにするためには、G7での合意がどこまでG20に反映されるかということです。特にウクライナや反ロシア、中国への経済威圧の流れをG20に持ち込めたら、本当の成功になります。G7で終わらせず、G20で固めないといけません。
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