日銀が掲げる「インフレ見通し」は甘い
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経済アナリストのジョセフ・クラフトが6月6日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。今後の日本経済について解説した。
消費者物価指数3%半ば ~政府の電気代等の抑制策で実質的には4%以上
飯田)日本経済について、いまの消費者物価指数を見ると3%半ばくらいです。日銀の植田総裁は、年後半には2%を割ると予想していますが、どうご覧になりますか?
クラフト)アメリカの金融政策当局が引き締めに走るなか、植田総裁は緩和を続けると明確に示しています。そうすると日米の金融政策の違いによって、相対的に、より日本の経済が下支えされるということから、日本株に投資されているのです。
年内に2%を切るという日銀の見通しは甘いのでは
クラフト)個人的には、日銀が掲げているインフレ見通しは、少し楽観的すぎるのではないかと思います。忘れてはいけないのですが、いまの3%という数字は、実質上は4%以上なのです。政府が還元しているので、1.2ポイントほど下げている状況です。
飯田)還元というのは、ガソリン代の補助金や電気代などの抑制策で。
クラフト)それが10月には切れます。延長するとは思いますが、これをなくして見なくてはいけない。いまは4%と考えると、6月の時点でさえ6000品目以上が値上がりしています。電気代は下手をすると15~45%の値上がりです。これでどうして年内2%なのか……。私はそうは思えません。植田さんは私よりもはるかに頭のいい方ですので、そこは見通しているのかも知れませんが。
飯田)なるほど。
クラフト)日本のインフレは、日銀が想定しているほど下がらないと思います。
労働力不足で賃金が上昇し、サービスインフレが上がる ~インフレの下落は大きくない
飯田)日本のいまのインフレ状態は、内需が高まったものというよりも、外から入ってくる原材料や原油価格が高止まっているところからくる、コストプッシュインフレだとよく言われます。石油輸出国機構(OPEC)やOPECプラスの話などをみると、この高止まりは続いてしまうのでしょうか?
クラフト)その一部なのですが、実は日本のインフレも、アメリカのインフレとほぼ似た形に動いています。
飯田)変わりつつあるのでしょうか。
クラフト)アメリカほどではないと思いますが、アメリカも最初はコストプッシュ型でした。そのあと落ち着いて財インフレは下がりましたが、国内の労働力不足で賃金が上がり、いまはサービスインフレになっています。
飯田)なるほど。
クラフト)日本がいまどうなっているのかと言うと、財インフレが下がるなか、日本も労働力不足に陥って賃金が上がっています。日銀や政府も賃金を上げなくてはいけないという方向は正しいのですが、皮肉にも賃金を上げると、サービスインフレも上がりますので、日銀が見込んでいるインフレの下落はそれほど大きくないのではないかと思います。
インフレが下がるタイミングは2024年か
飯田)その先に待っているのは、インフレが上がり、苦しくなるので賃金も上がる。賃金が上がるとまたインフレが加速するという、イタチごっこになってしまうかも知れないのですね。
クラフト)年末に、インフレがいまの水準よりも高くなっているとは言いませんが、アメリカ経済、中国経済、そして日本経済がある程度は減速しないと、インフレも下がりません。そのタイミングは、今年(2023年)というよりも来年ではないかと思います。
アメリカと同じ道を辿らないように
飯田)アメリカでは、「インフレは一時的なものだ」と最初にパウエルさんが言っており、ブレーキを踏むのが遅れました。日本も同じような道を辿らないようにしなくてはいけませんね。
クラフト)日本も同じような方向なのですが、日本銀行が懸念しているように、ずっと続いていたデフレで2回ほど、早期に利上げして失敗したという経緯があります。日本はアメリカと違って、アウトプットギャップがマイナスです。
飯田)需給ギャップですね。
クラフト)慎重になる要因は否定しませんし、「利上げしろ」とは言いませんが、インフレ率が2%を切るのは難しいのではないでしょうか。インフレには日銀が見ているよりも粘着性があるのではないかと思います。
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