埼玉県営プールの水着撮影会「キャンセルキャンペーン」を行ったのは誰なのか

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中央大学法科大学院教授で弁護士の野村修也が6月16日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。協会側が中止要請を撤回した埼玉県営プールの水着撮影会について解説した。

埼玉県営プールの水着撮影会「キャンセルキャンペーン」を行ったのは誰なのか

※画像はイメージです

埼玉県営プールの水着撮影会、協会側が中止要請を撤回し謝罪 ~知事の指示は英断

「過激な露出やポーズ」が公序良俗に反するなどとして、埼玉県公園緑地協会が県営公園での水着撮影会を一律で認めないとしたことに対し、施設管理を委託している埼玉県が待ったをかけた。同協会は6月12日、関係団体に当初判断の撤回を連絡し、謝罪した。

飯田)越谷市にある「しらこばと水上公園」のプール、そして川越市の「川越水上公園」で行われる予定だったイベントに関する報道です。

野村)今回のいちばんの問題は、「一律に禁止してしまった」ということです。そうなった経緯について、県の方は当初から「市民の苦情があり、自分たちで調査した結果、そうなった」と言っています。

飯田)そうですね。

野村)その判断がおかしいということで、大野知事が週末に指示を出し、「表現の自由の関係で、きちんと禁止するものとしないものをはっきりさせよう」という方針にしたのは英断だったと思います。

公権力側が権力を使って中止を要求するのは憲法上の大きな問題 ~その経緯を調べるべき

野村)ただ、「本当に市民の声を聞いただけで一律禁止にしたのか」ということです。どうも、そのあとに特定の政治団体が「これは許さない」という話になったことが、大きな影響を与えたのではないかと思います。

飯田)特定の政治団体から。

野村)「それは関係ありません」と知事は言っていますが、経緯をはっきりと分析する必要があると思いますね。

飯田)経緯を。

野村)なぜかと言うと、一方で表現の自由、あるいは出演する予定だった人たちの営業の自由もあるわけです。弁当を出す業者の人たちも中止になれば、かなりのダメージを受けることになります。

飯田)中止になれば。

野村)自治体という公権力側が、権力を使って中止を要求するのは憲法上の大きな問題になります。「どういう経緯があったのか」は、慎重に調べる必要があるのではないでしょうか。

都市公園法の第1条「公共の福祉を増進するために」は目的条項であり、効果は発生しない

飯田)判断には影響しないとされていますが、一方で要請した側が根拠にしていたのは、都市公園法の第1条「公共の福祉を増進するために」というところで、これに反するのではないかと。しかし、この解釈がまかり通るとすると、さまざまなイベントが実施できなくなってしまいますよね。

野村)法律の1条は「目的条項」なのです。この法律はどういう目的のためにあるかというもので、基本的には効果は発生しません。

飯田)普通はそう解釈するのですね。

「キャンセルキャンペーン」をしている人たちはリベラルとは別の異質な考え方 ~自治体がそれを受けてしまう環境を変えなければいけない

野村)1条を使っていること自体もおかしいですし、問題は中止を要求する人たちの好き嫌い、趣味の問題で「いい、悪い」を判断されたら困るわけです。

飯田)その人たちの好き嫌いで。

野村)基本的に表現の自由というのは、自分にとって好ましくない表現であっても、「それを最大限守る」というのがリベラルの考え方です。

飯田)嫌いな表現でも。

野村)だから中止要請を行ってキャンセル運動をしている人たちは、自分たちの嗜好によって社会を管理しようという、リベラルとはまったく別の異質な考え方です。自治体が弱腰になって、それを受けてしまうという現在の環境を分析し、今後はそうならないように考える必要があります。

「他人の表現を最大限尊重する」のが自由な社会

飯田)今回の問題が出てきたところで、ネット上で対象として置かれるものに、名古屋や大阪で行われた「表現の不自由展」があります。大阪では行政が会場の使用を認めなかったこともあって、「表現の自由に反するのではないか」と批判がありました。そういう主張をするのであれば、水着撮影会も同じように認めるべきだろうと。

野村)好き嫌いではなく、「他人の表現を最大限尊重する」というのが自由な社会なのです。

飯田)その上で批判を受けるのはありだと。

埼玉県営プールの水着撮影会「キャンセルキャンペーン」を行ったのは誰なのか

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「自分たちの主義や主張が合わないものは管理していく」という専制主義的な思考にいくことは問題

野村)私もこの問題についてツイートしたとき、「先生は水着がお好きなのですか?」という変な反応がありました。

飯田)そうでしたか。

野村)そういう捉え方はおかしい。どんな行為であったとしても、犯罪にならないような行為に関しては、最大限の自由を認めるというのが我々の自由主義社会の基本であり、それを共有できる人たちがリベラルなのです。

飯田)本来の意味の。

野村)それがなかなか日本では理解されない。よく言う、いわゆる括弧付きのリベラルは「自分たちの主義や主張が合わないものは管理していく」というような、やや専制主義的、全体主義的な思考の方に向かってしまう。それがいま浮き彫りになっている気がするので、大きな問題として捉えるべきだと思います。

飯田)自分たちの主義や主張が合わないものは管理していく方向に。

野村)過去にも、スーパーで自衛隊がイベントを企画し、子どもたちに迷彩服を着せようとしたら、「それは戦争を容認することになるのでダメだ」と反対されたので、自衛隊の方がひっこめたという事例もあります。こういうところをどう考えていくべきなのか、みんなでもっと深く議論する必要がありますね。

飯田)それが派生していくと、コミケなどで思い思いにコスプレし、それを写真に撮ってもらうことも規制されかねません。

野村)それぞれ、いろいろな仕事をされている方がいて、その仕事で生活が成り立っている人たちがいるのです。特に犯罪でなければ、自由を確保することも大切だと思います。

法律の使い方を間違えると人を縛る場合もある

飯田)法律を使って人を縛ろうとすることは、本来の法律の趣旨に反しますよね。

野村)法律は深く勉強すれば、そうではないということがわかるのです。

飯田)どれだけハンドルの遊びの部分を確保するかというところですね。

野村)リーガルマインドが醸成されている人と、単に法律をちょっと齧った人では大きな違いがあるので、そこを見た方がいいと思います。

飯田)法律に関係する方は節度のようなものを学んだり、感じたりするものですか?

野村)一種のノウハウのような形で、法律家は基本的にマインドを共有しています。

飯田)ある意味で権力になり得るものだから、抑制的に使うということですか?

野村)法律は使い方を間違えると、人を縛ることになってしまう場合もあります。

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