解散を見送った岸田総理の本当の「狙い」

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元内閣官房副長官で慶應義塾大学教授の松井孝治氏が6月16日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。「今国会での解散はしない」という岸田総理の表明について語った。

解散を見送った岸田総理の本当の「狙い」

2023年6月14日、祝辞を述べる岸田総理~出典:首相官邸HPより(https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/actions/202306/14shigikaigichokai.html)

岸田総理が今国会での衆議院解散を見送ると表明

岸田総理は6月15日、官邸で記者団の取材に応じ、「立憲民主党が内閣不信任案を出すのであれば即刻否決するよう指示を出した」と述べた上で、今国会での解散はしないという考えを明らかにした。

飯田)解散の見送りをわざわざ表明するのは珍しいなと思いましたが、どうご覧になりますか?

松井)与野党ともに言われていることですが、立憲民主党も泉代表が辞任するというようなことを言って、最終的には「腰砕け」という感じもありました。岸田首相も最近は含みを持たせ、やや牽制球を投げたような感じがします。

13日の会見後も閣僚の間ではさほど切迫感はなかった

松井)広島サミットが成功して、「いまが解散のしどきでは」という時期も一瞬ありましたが、マイナンバーカードやご子息の問題、公明党との関係が出てきた。最終的には岸田さんらしい判断だったと思いますが、ここまで見せる必要があったのかなという気はします。

飯田)13日の会見で含みを持たせ、表現も変えてきました。そこで永田町全体に「解散風が吹きすぎた」とみたのでしょうか?

松井)13日のちょうど総理会見くらいの時間に、何人かの閣僚の方も含めてご一緒したのですが、切迫感はありませんでした。ただ与党も野党も、選挙基盤の弱い方は神経質になっていた感じがします。

環境がほぼ安定している状況のなかでここまで揺さぶりを掛ける必要があったのか

飯田)いかに自分の選挙に有利かどうかの動きで、センシティブな人たちは過剰に反応してしまったところがあるのでしょうか?

松井)任期の半分も満たないときに、確かに不信任というのは解散事由として非常に大きな話ですが、維新の会の方がおっしゃっているように、不信任はある種、季節行事的なところもあります。

飯田)そうですね。

松井)それを奇貨として揺さぶりを掛けるにしても、少なくとも6月に入り、現状ではいろいろな環境が安定しています。そのなかで、ここまで揺さぶる必要があったのかどうかは不思議に思いますね。

飯田)環境が安定しているなかで。

松井)自公の間で妥協が図れて、しかもいまの環境だと、防衛費の問題も税収の上振れなどがあります。普通に考えたら、少し前に言われていたほど悪い環境なのかどうかが見えません。「9月解散」、「10月選挙」と言う人もいますが、税収の上振れを見ると、場合によってはもう少し先送りできる可能性もあるのではないでしょうか。

飯田)もう少し先に。

松井)そんな状況のなかで、ここ数日の騒動はどうなのか。「最後は総理の専権事項」と言われていますから、わからないところもあるけれど、それでも「常識的ではないな」という感じを私の接している与野党の方からは受けます。

岸田総理の狙いは自民党総裁選に近いところで選挙に勝つこと

弁護士・野村修也)次の解散の見通しですが、多くの方は、もしかすると臨時国会の冒頭で解散するのではないかと。

飯田)秋に解散。

野村)増税の話などをする前に解散した方がいいのではないかという意見もありますが、むしろまたいだ方がよいという考え方だとすると、岸田政権にとってどんなメリットがあるのですか?

松井)今後の税収や見通しにもよるのですけれど、いま微妙に方針転換していますよね。増税の時期についても先送りし得る。

飯田)骨太の方針。

松井)ある程度、税収の見通しが堅調であれば、それほど「増税」と言わなくてもいいのではないでしょうか。最終的に岸田さんが目指すのは再選でしょうから、それに向けて考えると本当に秋がいいのかどうか。

飯田)解散が秋でいいのか。

松井)しばらく前はなかったのですが、もう少し引き付け、もう1度税収を見て予算編成してからでもよいのではないかという噂を、最近耳にすることがあります。

野村)岸田総理にすれば、総裁再選を考えると、総裁選に近いところで選挙に勝った方がいい。

松井)そういうことですね。

9月末召集・冒頭解散の可能性も

野村)内閣改造はどの辺りで組み込むことになりますか?

松井)いずれにしても、内閣改造をここでしない手はないと思います。

飯田)この夏から秋にかけて。

松井)それは行われるのではないでしょうか。総裁選を優先するなら、フレッシュなところに人気のある人を投入し、国民にアピールできる体制をつくることが大事です。

飯田)なるほど。

松井)9月解散・10月選挙であれば、8月くらいに考えるのではないかというのが通説でした。それも含め、どこで勝負をかけるのかが見えてくるのではないでしょうか。私が存じ上げているいろいろな方だと、夏の間に改造し、国連総会のあと召集して……。

飯田)9月末召集。

松井)そして冒頭解散だと言う方が多いですね。

立憲民主党・泉代表「150議席獲らなければ代表辞任」発言は退きどころを考えてのことか

飯田)野党側ですけれども、泉さんは「150議席を割った場合は代表を辞任する」と不退転の決意を示していますが、実際はどうなのでしょうか?

松井)周囲の話を聞くと、泉さんは統一選挙のあとに辞意を表明し、一瞬、野田さんが後継で動いたけれど、幹事長の受け手がいなかった。ですから泉さん自身はある意味、退きどころを見ているのかも知れません。

飯田)疲れてしまった部分はありますか?

松井)立民の方々の多くが「あの目標数値は非現実的である」とおっしゃっています。現状だと野党は、立憲が減った分は確実に維新が伸びて、なおかつ自民もある程度は減るでしょうから、その部分でも維新が伸びる。衆議院では維新が野党第1党になる勢いです。そういう状況はもう、泉さんのなかでもある程度見えているのではないでしょうか。

泉代表が降りた場合、立憲民主党の次期代表は誰に

野村)もし立憲民主党で泉さんが降りることになったら、次は誰になりそうですか?

松井)実績やその他で言えば長妻さんですかね。辻元さんの名前も出てきていますが、立民自身も中道でいくのか、ある程度左派に振れていくのか、あるいは分裂含みでいくのか……。いろいろな見方があるようですが、いまの状況で言うと、全体としての統制は芳しくないと思います。

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