岸田総理に今国会での解散の選択肢はなかった
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ジャーナリストの須田慎一郎が6月19日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。岸田総理が今国会での衆議院解散を見送るまでの背景について解説した。
通常国会、21日に閉会へ
国会では6月16日、政府が最重要法案と位置づけた防衛費増額の財源確保法などが成立し、今国会は6月21日の会期末で閉会する見通しとなった。
解散含みであれば混乱しているはずの国対が静かだった ~「解散はない」と確信
飯田)先週は「解散するかしないか」というところでしたが、15日夕方に「なし」と総理が表明するまでは非常に盛り上がっていました。須田さんは13日にもご出演いただきましたが、既に「解散はないだろう」という感触をおっしゃっていました。
須田)とは言っても、週末に向けた異様な盛り上がり方を見て、「ひょっとすると、ひょっとするのではないか」という気持ちもよぎりました。そういうとき、どこに取材をかけるのかと言うと、与党の国会対策委員会なのです。
飯田)国対なのですね。
須田)内閣提出の閣法と言われる重要法案は、LGBT理解増進法案や財源確保法案の2法でした。しかも、これは与野党の対立法案であり、当時はまだ成立の見通しが立っていませんでした。それをスムーズに成立させるのが国対の役割なので、解散となるとそこで終わってしまいます。
飯田)解散すると。
須田)成立させることができるのか、それとも廃案になってしまうのかという瀬戸際だったので、解散含みで動いていると、相当ドタバタしているはずなのです。ところが国対は落ち着いており、着々と仕事をしていました。そこで私は「解散はないな」という確信を持ちました。
ポイントとなった6月16日 ~17日から天皇陛下が不在になり解散詔書が取れない
飯田)国会の会期は21日までありますが、16日が1つのポイントになっていました。17日から天皇陛下がインドネシアを訪問されるので、日本を空けることになると、解散の詔書が取れない。国事行為は代行がいらっしゃいますが、なかなか難しい。
須田)過去に前例がありません。そうすると国会は事実上、16日までとなります。ではどのように法案を成立させればいいのか。そこで、かなりの神経戦が繰り広げられるはずなのです。
飯田)16日までに成立させるには。
須田)野党第1党の立憲民主党が本会議の採決前に内閣不信任案を出してきたら、それが優先されます。そうなると、成立の目処がまったく立たなくなってしまうこともある。本来なら解散の方向になると大慌てになるはずですが、静かだったので、「これは言われていないのだろうな」と思いました。
解散風に慌てた立憲民主党が問題となっている法案を成立へ ~「してやったり」の岸田総理
飯田)13日の時点で、本来は委員会採決が予定されていた財源確保法が、野党の反対によって15日に延びました。委員会が15日、本会議の16日で可決となると、相当タイトになります。そこを目掛けて問責決議案など、いろいろなものを出して遅らせ、解散できないようにする方法も野党にはありましたが、野党側も静かでしたよね?
須田)そうですね。会期末が迫っているなかで、現状で言うと内閣提出の法案も成立率が9割を超えています。そのなかで山場と言われた財源確保法案とLGBT理解増進法案が成立したので、岸田首相としては「してやったり」なのです。
飯田)両方とも成立して。
須田)解散風を煽った結果、立憲民主党が慌てて、問題となっている法案をどんどん成立させてくれた。内心ニンマリではないかと思います。
「解散風の効果」が波及 ~公明党との関係からもここでの解散の選択肢はなかった
飯田)それもあって、「解散風の効果」がいろいろなところに波及するのですね。
須田)法案のやり取りに注目するのではなく、解散の方ばかりが気になっている。立憲民主党も、いま解散になったら相当厳しい状況になると言われています。自分たちの立場の問題も絡んでくるので、法案の審議よりもそちらに気が向いてしまったのでしょうね。
飯田)結果として「スーッ」と通ってしまった。
須田)振り返って考えると、岸田さんとしてはしてやったりだろうなと思います。しかも、言質を取られるような言い方はしていません。法案が成立するスケジュールを睨んだ上で、木曜(15日)の夜に「解散はない」と言い出したのも、曰く言い難いところがあると思います。
飯田)そうですよね。
須田)わざわざ官邸の玄関で立ち止まり、あえてぶら下がりで言ったため、みんなは肩透かしを食らってしまった。
飯田)夕方の6時15分ごろに設定され、「これで解散か」と集まったところで「今国会での解散はありません」と言われた。そこでみんな脱力してしまったのですね。
須田)そのときには、翌日のスケジュールがすべて決まっていました。
飯田)国会の日程が。本会議がここで立ち、法案が審議されるというように、大体は前日に決まりますよね。すべて目処が立っていたのですね。
須田)その段階で解散はないのです。もともと解散はなかったのでしょうけれどね。いま解散してしまったら、公明党が相当反発します。ただでさえ亀裂が入っているのに、公明党との関係が完全に決裂しかねない。後付けになってしまいますが、そこから考えても、(解散は)選択肢としてなかったと考えていいと思います。
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