習近平氏の「琉球」発言は、台湾を本気で獲りにくる「サイン」の1つ

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作家で自由民主党・参議院議員の青山繁晴とキヤノングローバル戦略研究所主任研究員の峯村健司が6月15日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。習近平国家主席の「琉球」発言について解説した。

習近平氏の「琉球」発言は、台湾を本気で獲りにくる「サイン」の1つ

20カ国・地域(G20)首脳会議(大阪サミット)に出席するため来日した、中国の習近平国家主席(中央)=2019年6月27日午後、関西国際空港 写真提供:産経新聞社

習近平氏が「琉球(沖縄)」について異例の発言

飯田)峯村さんは夕刊フジでも連載されていて、先日は「中国の習近平国家主席が『琉球』発言」という内容の記事を書かれていました。ここにきていろいろな新聞が追いかけ出しましたね。

峯村)ようやくですね。北京にいる特派員たちは、なぜこれに気付かないのでしょうか。人民日報の1面に習近平氏が「琉球」と言ったことが書かれた記事を見た私は椅子から転げ落ちるぐらい驚いたのに、日本のメディアを見たらどこも書いていないことに愕然としました。

青山)書いたら追放されるからですよ。峯村さんの方がよくご存知だと思いますが。

峯村)リスクを負ってでも書かなければいけない記事です。

「琉球(沖縄)は我々のものだ」と言う中国海軍の大佐や将軍

峯村)青山さんに伺いたいのですが、「沖縄が危ない」という話を、かなり早い段階からおっしゃっていたではないですか。

青山)私自身が民間専門家のときに、北京や上海で軍や共産党系の人と議論すると、「沖縄」とは呼ばず「琉球」と呼んでいました。

飯田)琉球と。

青山)わざわざ呼び方を変えて「我々のものだ」と、中国海軍の大佐や将軍まではっきり言っていました。

飯田)尖閣のみならず。

青山)中国は周りの圧力に弱い国なのです。日本は聖徳太子の時代から海を挟んだ強敵であり、特にプレッシャーを掛けて「バッファゾーン(緩衝地帯)」をつくろうとするのです。

峯村)クッションのような。

青山)中国はもともと軍事力が弱いから「冊封」として、直接的に占領するのではなく、いわば精神的に支配するのです。皇帝に朝貢させて貢がせる。その対象として見ているので、いつも激しい言い合いになりました。言い合いからしか本音は出てこないので。

峯村)おっしゃる通りですね。

青山)中国のなかにも、日本のことが好きな人はいましたしね。

飯田)当時から。

青山)朝鮮戦争で休戦したときに中国の人民義勇軍と言っていましたが、そのトップだった将軍が出てきたのです。もちろん退役将軍ですけれども。

飯田)当時でも。

青山)1日目、彼は英語ができないので通訳が入っていたのですが、率直に「共産党が何を言おうが、私の目が黒いうちは朝鮮半島には行かない」と言ったのです。

峯村)そこまで。

飯田)そこまで言い切るのですね。

青山)しかし、2日目になったら通訳の女性がいなくなり、陸軍大佐と名乗る人が突然「通訳だ」と言って現れました。英語も日本語もほとんどできない人でした。

飯田)ええ?

青山)つまり監視しているのです。

琉球(沖縄)は日本が武力によって清国から脅し取ったものだ ~中国メディアによるキャンペーンが始まる

飯田)峯村さんは記事のなかでも「言葉の使い方には意味がある」と指摘しています。

峯村)特に、14億人のトップである独裁者が言ったことに対しては、みんな「ピリッ」とくるわけです。これを聞いた部下たちは「これは自分たちもやらないといけない」と思うわけです。案の定、習氏の発言の2日後から中国メディアでは「沖縄帰属問題」を提起するようなキャンペーンが始まっています。

飯田)中国メディアが。

峯村)そもそも「沖縄(琉球)処分」というのは、「日本が武力によって清国から脅し取ったものだ」と。そして「来月(7月)には玉城デニー沖縄知事が訪中する。まさに日中関係のなかの一筋の光明なのだ」とキャンペーンです。世論戦が始まっているとみたほうがいいでしょう。

習近平氏の「琉球」発言は、台湾を本気で獲りにくる「サイン」の1つ

中国の習近平国家主席(中国・北京)=2023年4月6日 AFP=時事 写真提供:時事通信

台湾有事の際、最前線となる沖縄 ~その内部が混乱してくれればいい

飯田)沖縄には米軍基地もあり、台湾のことを考えると、ここが重要だという内容が一連の文脈で位置付けられているのですか?

峯村)この議論をしたことがあるのですが、「別に我々は沖縄を占領するつもりはない」とよく中国の政府や軍の人々は言っていました。

飯田)沖縄を占領するつもりはない。

峯村)それはさすがにわかっています。ただ、台湾有事を考えたとき、日米両国にとっていちばんの前線基地は沖縄です。いざとなったときに、「沖縄の内部が混乱して米軍や自衛隊の基地が使えなくなってくれればいい」というのがおそらく本音です。

最終的な戦略目標は沖縄から米軍基地が出ていくこと ~世論に訴え戦わずして勝つ

峯村)究極的には、いちばん邪魔な沖縄の米軍基地が出て行ってくれること。これが最も理想的な姿、最終的な戦略目標なのでしょう。

飯田)それを沖縄の世論によって進めようとしているのですか?

峯村)世論は強いです。例えば沖縄の世論から反戦デモや反基地デモが起きれば、基地が使えなくなりかねない。まさに戦わずして勝つやり方です。この辺りは共産党が何十年もやってきた得意技です。

台湾併合のため、米軍を追い出す目的で世論をつくろうとする中国

飯田)かつて青山さんと夕方の番組でご一緒していたときに、元沖縄県知事の仲井眞弘多さんに来ていただき、議論したことがあります。

青山)私が電話して来ていただきましたね。

飯田)あのとき青山さんと仲井眞さんのなかで、当時もあるし現在もある「琉球独立論・沖縄独立論」について、「あれは酒飲み話なのですよね」というような話もありました。いまだとその辺りはだいぶ変わりましたか?

青山)いや、基本的には変わっていません。仲井眞さんがおっしゃったのは酒飲み話という表現ではなく、「ロマン」なのです。

飯田)ロマンですか。

青山)峯村さんが世論戦とおっしゃいましたが、中国軍は戦闘よりも「世論戦・心理戦・法律戦」という「戦わざる戦争」を重視します。

飯田)戦わざる戦争。

青山)福岡のドーム球場のはす向かいに中国の総領事館がありますが、当時は中国の総領事が沖縄に入り、沖縄の華僑の人々を集めて秘密会議を行ったのです。目標は米軍を叩き出すことです。代わりに自衛隊が来たとしても、自衛隊は憲法9条があるので問題ないと。

飯田)なるほど。

青山)仲井眞さんの先祖は大陸から来た人なので、働きかけたのです。ところが愛国者でダメだったので、次に自由民主党に不満を持っていた「翁長雄志那覇市長(当時)に働きかけろ」と工作を指示した。

飯田)当時の翁長雄志市長に。

青山)これまでも私は公の場で話しているのですが、その議事録を入手しました。議事録というのは、出席者のどなたかが記録したものかも知れませんが、本物です。本物であることは2重3重に確認しました。

飯田)議事録が本物であることを。

青山)もう1回言いますが、米軍を追い出す目的で世論をつくり、そのために首長選挙にも介入し、生半可ではない世論戦・心理戦・法律戦を行う。それも基本的には、将来の「台湾併合」という目的があるわけです。

飯田)台湾併合のため。

「琉球」発言は台湾を本気で獲りにくるサインの1つ

青山)尖閣諸島はご存知の通り、沖縄県石垣市の尖閣諸島なので、尖閣については武力占領もあり得ます。しかし、沖縄本島を武力で占領するとなると、先ほど言った通り冊封の歴史なので。

飯田)なるほど。

青山)中国軍はもともと弱いのです。いまも物量はあるけれど、陸海軍の実戦経験はゼロです。陸軍はあっても、ベトナムで負けているわけです。5月に米軍の太平洋艦隊と話したときも、中国に実戦経験がないことを重視していました。米軍はよくも悪くも実戦経験の塊なので。

峯村)そうですね。

青山)自衛隊も実戦経験はありません。ただ、日米の訓練は実戦を基にしているから、中身が詰まっている。中国はそれを警戒しているので、特に沖縄に関心が強いのです。峯村さんが夕刊フジで指摘された「習近平氏が『琉球』と言ったのは大変なことだ」という話は、「台湾を本気で獲りにくる」というサインの1つです。

峯村)おっしゃる通りです。日本は国を挙げて対策に乗り出すべきです。

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