米ブリンケン国務長官が中国を訪問した「2つの目的」

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ジャーナリストの須田慎一郎が6月19日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。北京で行われた米ブリンケン国務長官と中国・秦剛外相の会談について解説した。

米ブリンケン国務長官が中国を訪問した「2つの目的」

中国の習近平国家主席(中国・北京)=2023年4月6日 AFP=時事 写真提供:時事通信

米ブリンケン国務長官と中国の秦剛外相が会談

中国・北京を訪問したアメリカのブリンケン国務長官は6月18日、中国の秦剛外相と5時間半にわたって会談を行った。バイデン政権の閣僚が中国を訪問するのは初めてで、国務長官の訪中も2018年以来、約5年ぶりとなる。

飯田)18日午後に行われましたが、会談の直前には「それほど成果のあるものではない」と、ハードルを下げてから行きましたよね?

半導体をめぐる米中間の対立の熱を冷ます

須田)そうは言っても、安全保障面や経済面、特に半導体をめぐって米中間での対立が激化しています。少し熱を冷まさなければならないという状況が1点目です。

飯田)半導体をめぐって激化する対立に。

須田)2点目は不測の事態に備え、ホットラインをきちんと機能する状態にしておく必要があります。ホットラインが遮断されてしまうと、予想できないリスクが発生しかねない状況になってしまいます。

飯田)ホットラインが遮断されてしまうと。

須田)トランプ政権末期に、アメリカサイドが国内の混乱に乗じて、中国に対し「場合によっては何らかの軍事的攻撃をしてくるのではないか」と示唆することがありました。中国サイドもそれをイメージして、警戒度がかなり高まり、中国サイドは相当、恐れをなしたのです。

飯田)トランプ政権末期に。

いざというときのホットラインの設置

須田)中国が混乱していることを受け、アメリカ軍トップの統合参謀議長が直接ホットラインを通じて中国のトップと連絡を取り合い、「アメリカがそのようなことを行う意思はない」と伝え、一触即発の事態は回避できました。これについては、アメリカ議会でそういう動きがあったと証言されています。事実関係としてこのような状況がありました。

飯田)そうだったのですね。

須田)「いざ」というときの連絡手段がないと、望まない衝突が起こってしまう可能性もあります。今回は、細いかも知れないけれど「一定の関係は確保しましょう」というレベルの話だと思います。

飯田)ここから一足飛びの雪解けにはならないのですね。

須田)なりません。

米中首脳会談を行っても、中国側にはメリットがない

飯田)今回はブリンケン氏が行きましたが、直前にはウィーンで安全保障担当のサリバン大統領補佐官が王毅氏と会っています。この先、首脳会談にまでつながっていくのですか?

須田)首脳会談につながる可能性は、ないわけではありません。しかし中国側から見て、実施するメリットがあるのかどうか。

飯田)中国側にメリットがあるか。

須田)アメリカは2024年に大統領選挙を迎えるので、そこへ向け、ある種の実績づくりではないですが、バイデン大統領の支持率をアップさせる思惑がある。それを中国が手伝う必要性があるのかどうか。

飯田)バイデン大統領の支持率を上げるために。

須田)中国側には何ら得られるメリットがない。例えば台湾問題で釘を刺されてしまうとメンツ丸潰れですし、中国としてはやらない方がよかったということにもなりかねません。その辺りを探っているのではないかと思います。

飯田)中国にとっての首脳会談は、成功が確約されなければ開かれないという話もありますからね。

須田)何らかの成果が得られなければ、というところだと思います。

台湾への武力攻撃に至るまでの中国のレッドラインを探りたいアメリカ

須田)もう1点、先ほどのホットラインの構築とともに、中国はどのラインを越えたら台湾に対して武力攻撃を行うのか。そのレッドラインの設定は現状どうなっているのかなど、その辺を探り合って、何らかの合意を得るという目的もあるのかも知れません。

飯田)台湾侵攻へのレッドライン。

須田)かつてはアメリカが台湾の独立派を支援する、あるいは連携するなど、「絶対に容認できない」というレッドラインが存在したのです。

飯田)以前は。

須田)現状、その辺りが非常に曖昧になっているので、それを引き直す。とは言っても次の政権、もしくはバイデン政権から政権交代が起こったあとに、次の政権で継続されるのかどうかも不透明ですからね。

2024年1月の台湾総統選 ~中国のレッドラインを意識する民進党

飯田)アメリカ大統領選は2024年ですが、その前に、2024年に入ってすぐ台湾総統選もあります。この辺りの結果などがレッドラインに絡んできたりしますか?

須田)台湾も台湾で、いまの政権も含めて「独立」という動きを見せず、言葉すら使いません。独立派とは完全に線引きし、相互に交わらないという、これまでのレッドラインを意識した行動を取っていることは間違いありません。

飯田)そうですね。

須田)中国側がそのレッドラインを上げてこない限り、武力衝突は来年(2024年)や再来年に起こるはずはないのですが、その辺りがどういう状況になっているのか、見通しが立っていないのだと思います。

飯田)台湾の与党・民進党は、野党時代は独立についても言っていました。しかし政権を獲り、特に蔡英文政権は独立という言葉を使わずに、ずっと「現状維持」と言っています。

須田)そうですね。

飯田)次に立つと言われている頼清徳氏も、かつては独立と言っていた時期もあるけれど、蔡英文路線で行くと言っている。これを中国側がどのように見ているのか、アメリカ側としては見極めたいのですか?

須田)そこもすべて、「かつてのレッドライン」を意識した発言です。

曖昧にすることで中国の国益につなげるという選択肢も

飯田)その結果も、この先の地域情勢に絡んできますよね?

須田)中国側の本音としては、「手を差し伸べてくるけれども、机の下では蹴ってくるのがアメリカのやり口だ」ということも十分にわかっているのです。

飯田)あえてレッドラインを曖昧にする。中国版の曖昧戦略を行うことが、中国の国益になると思っているかも知れないのですね。

須田)そのような選択肢もあると思います。

飯田)一筋縄ではいきませんね。

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