これが北朝鮮の「脅威」 失敗を明らかにでき「核の有用性」を理解

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地政学・戦略学者の奥山真司が6月20日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。軍事偵察衛星の打ち上げ失敗を認めた北朝鮮について解説した。

これが北朝鮮の「脅威」 失敗を明らかにでき「核の有用性」を理解

2023年5月31日、平安北道鉄山郡の西海衛星発射場で新型衛星運搬ロケット「チョンリマ(千里馬)1」型に搭載して打ち上げられた軍事偵察衛星「マンリギョン(万里鏡=望遠鏡)1」号 朝鮮通信=時事 写真提供:時事通信

北朝鮮の重要会議で衛星打ち上げ失敗について「最も重大な欠陥」と指摘

朝鮮中央通信は6月19日、北朝鮮・朝鮮労働党の重要会議、中央委員会拡大総会で、5月31日の軍事偵察衛星の打ち上げ失敗が「最も重大な欠陥」だと指摘され、早期に再び打ち上げを行う方針が強調されたと伝えた。

飯田)打ち上げ失敗を認めましたが、「認めるんだな」と思いました。「携わった人たちはどうなってしまうのだろうか」とも思います。

奥山)それも少し怖いですが、逆に私は北朝鮮のような組織が、本気で行っている衛星打ち上げに対して「失敗を認められる」ということが脅威だなと思います。手ごわいなと。

飯田)脅威ですか?

北朝鮮が失敗を明らかにできる組織であるという「脅威」 ~失敗を認めてさらに乗り越える

奥山)皆さん経験があると思いますが、あらゆる組織のなかで、失敗を明らかにできる組織は強いのです。例えば工場で働いていたら、何か不都合なことが起きたとき「上に報告できるかどうか」が組織全体の強みにつながっていくのです。

飯田)そうですね。

奥山)兵器開発において、失敗したことを北朝鮮のような閉鎖的な国が認められる。それはこの分野において、失敗を認めた上で乗り越える可能性を示しています。日本にとって「さらに脅威が高まっているな」と思います。

飯田)北朝鮮の脅威が。

奥山)撃たれる側の日本にとって、より進化した兵器を防ぐ手段は、いまのところミサイル防衛しかありません。

北朝鮮のような小さな国が国防を考える場合、核兵器を持たなくてはならない

奥山)さらによくないことが1点あります。我々は、「北朝鮮はコスパがいい状況で国防を行っている」と認識を改めなくてはいけないと思います。

飯田)コスパがいい状況で国防を行っている。

奥山)島根県や鳥取県くらいのGDPでありながら、北朝鮮は200万人くらいの特殊部隊を養い、核兵器まで持っているのです。

飯田)そうですね。

奥山)もちろん、国民を犠牲にしている部分はありますが、究極に小さい国が国防を考える場合、日本人にとって認めたくない事実ですが、「核兵器を持たなくてはいけない」と彼らは合理的に考えているのです。

「安全と国際的な名誉」を与えてしまう核兵器

奥山)なおかつ、北朝鮮の態度を見ていてもわかるのですが、核兵器は「安全と国際的な名誉」を同時に2つ与える存在になっています。

飯田)安全と国際的な名誉。

奥山)実際に安全保障の世界では、「安全と名誉を与えてしまうものだ」という認識があります。

「核兵器の有用性」を理解している北朝鮮

奥山)イラクとリビアは、両国とも核兵器を開発しなかったために、アメリカに潰されているのです。

飯田)リビアのカダフィ大佐、イラクのサダム・フセインですね。

奥山)やられましたよね。北朝鮮としては、「核兵器に絞るしかない」となるわけです。

飯田)どんなに批判されても、どんなに取り引きを持ち掛けられても突っ走りきる。

奥山)国連も制裁も関係ありません。ある意味では、非常に特化した極端な例ではありますが、「核兵器の有用性」を理解している人たちなのかも知れません。日本としては、非常に扱いづらい問題だと思います。残念ですが「あっぱれ」としか言いようがない感じです。

飯田)核の削減を考えるのであれば、この不都合な事実を見なくてはいけないのですね。

奥山)見なくてはいけません。

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