福島第一原発「処理水」 IAEA事務局長による3ヵ国への説明は「1つの補強材料」になる

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外交評論家で内閣官房参与の宮家邦彦が6月30日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。福島第一原子力発電所の「処理水」海洋放出について解説した。

福島第一原発「処理水」 IAEA事務局長による3ヵ国への説明は「1つの補強材料」になる

緊急時に放水を停止する遮断弁を備えた建屋内の様子=2023年6月26日午前、福島第1原発構内 写真提供:産経新聞社

福島第一原発の処理水、IAEA事務局長が韓国やニュージーランドなど3ヵ国に説明へ

東京電力福島第一原子力発電所の「処理水」海洋放出をめぐり、国際原子力機関(IAEA)のラファエル・グロッシ事務局長が7月、韓国、太平洋島嶼国のクック諸島、ニュージーランドの3ヵ国を訪問する方向で調整していることがわかった。各国政府に対し、処理水放出の安全性に対する評価を含む包括報告書の内容を説明する。

飯田)7月4日に日本を訪問し、包括報告書を総理に手渡す予定で、その後に3ヵ国を歴訪するということです。

宮家)数年前に現場へ行き、タンクが次々と建てられている光景を目の当たりにしましたが、最終的に決断したのは菅元総理です。

日本のトリチウム排出量は国内外の原子力発電所と比較しても低水準 ~政治的な部分で説明が必要

宮家)そのあとも関心があったので、それなりに処理の仕方や結果、諸外国との関係等々、私なりに勉強したつもりです。「絶対安全だ」と言える人はいないかも知れませんが、自然界にあるものと同程度まで処理が進んでいるわけですから、科学的に考えたら、こんなに大騒ぎする話ではありません。

飯田)科学的に考えれば。

宮家)ただ、当然のことながら、政治的にどこかで説明した上で処理しなくてはいけないわけです。結論を出さなくてはいけない。

中立的な国際機関であるIAEA事務局長が説明することは補強材料になる

宮家)トリチウムの濃度は韓国や中国など、諸外国の方が高い場合が多いわけです。

飯田)日本は低水準です。

宮家)それにもかかわらず受け入れないというのは、日本が言うからダメだということなのかも知れません。それであれば第三者の、中立的な国際機関の人間が言えばいいのです。

飯田)第三者が。

宮家)IAEAの事務局長に説明してもらうことは、1つの補強材料になるでしょう。いちばん問題になっている韓国や太平洋の島々へ説明に行くというのは順当なところだと思います。

飯田)そうですね。

宮家)IAEAだって、この程度で原子力発電がダメだと言われたら困ると思います。いま使っているところはすべてダメになってしまうわけですから。おそらく国際機関としても当然、やるべきことをやっているのだと思います。

包括報告書には韓国や中国の関係者も入っている

飯田)包括報告書をつくるにあたっても、各国の原子力を専門とする科学者たちが、実際に日本に入っている。メンバーを見ると、韓国や中国の人たちも入っているのです。

宮家)しかし、政治ですから。科学ではありません。科学であれば、既に結論が出ているはずです。世の中には政治的な側面が常にあるので仕方がないとは言え、風評の問題がこんなに長引くとは思いませんでした。

飯田)長引きましたね。

宮家)しかし、ようやく動き始めたし、韓国も以前とは違って政治状況が変わっていますから。

太平洋諸国には丁寧に説明する必要がある

宮家)太平洋諸国については、やはり丁寧に説明する必要があります。ようやくこういう形でプロセスが動き始めたのは、いいことだと思います。

飯田)太平洋諸国に丁寧な説明が必要というのは、かつて核実験等が行われたところでもあるからですか?

宮家)それもあります。処理水が太平洋の反対側に行くのかどうかはわかりません。しかし、これはそういう問題ではなく、政治的な問題ですから。やはり丁寧に「我々はあなた方を忘れてはいません。ちゃんと説明に参りますよ」という姿勢が大事だと思います。

飯田)海は公共財ですし。

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