ジャーナリストの佐々木俊尚が7月5日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。オンライン形式で開催された上海協力機構(SCO)の首脳会議について解説した。
「上海協力機構」首脳会議でイランの正式加盟を承認
中国とロシアが主導する安全保障や経済協力の枠組み「上海協力機構」の首脳会議は7月4日、中国の習近平国家主席やロシアのプーチン大統領らが出席し、オンライン形式で開かれた。閉幕後に会見したインド外務省によると、これまでオブザーバーとして参加していたイランの正式加盟が承認された他、ベラルーシも加盟に向けた文書に調印した。
飯田)イランは核開発をめぐり、アメリカなどと激しく対立しています。
ソ連崩壊で中央アジアの多くの国が中国と国境を接することからできた上海協力機構 ~冷戦後の枠組みの軍事同盟から、徐々に西側に対抗する軍事同盟に
佐々木)上海協力機構という名前だけ見ると経済同盟のようですが、実は軍事同盟です。冷戦後に「中ソ関係」という言葉があって、中国とソ連は対立したり国境紛争が起きたりと、いろいろあったのです。
飯田)ありましたね。
佐々木)しかし冷戦後、徐々に仲がよくなった。ところが中ソ国境は、かつては中国とソ連だけの長大な国境だったのですが、ソ連が分裂したために、ロシア以外のウズベキスタンやタジキスタンなど、中央アジアの国々がたくさん中国と国境を接するようになったのです。
飯田)ソ連崩壊によって。
佐々木)そのため不安定なので団結し、「安全保障を安定させよう」という方針で上海協力機構ができた。当初はある種、冷戦後の枠組みの軍事同盟だったけれど、徐々に「対NATO」のようになってきました。
飯田)対NATO。
佐々木)NATOだけではありませんが、いまのアメリカやヨーロッパの西洋主導、あるいは日米主導の国際秩序、軍事的な枠組みに対抗する形で、新しい軍事同盟としての色が強くなってきたのです。昔の「ワルシャワ条約機構」のような。とは言え、そこまで強いつながりではありませんが。
「中国・ロシア対日米欧の西側」の間でインドを引き合っている
佐々木)インドが入っていますが、日本側からするとインドは、自由で開かれたインド太平洋(FOIP)構想のなかで重要なポジションです。
飯田)そうですね。
佐々木)今回のウクライナ侵攻でも、インドを西側諸国として引き入れようとしています。しかし、インドはロシアから武器を買っている面もあり、一方的に西側に立つわけにもいかない。だからと言って、経済的には西側にいたいところがあるので、微妙な立場に立たされているわけです。
飯田)微妙な立場に。
佐々木)要するに「中国・ロシア対日米欧の西側」との間で、引き合いをしている感じです。
上海協力機構の首脳会議をオンラインで開催して西側に気を遣ったインド
佐々木)上海協力機構の首脳会議ではイランの加盟を認めましたが、今回はオンラインで開催されています。
飯田)リアルではなくオンライン。
佐々木)報道によると、インド側としては加盟国を招きたかったけれど、インドで開催してしまうと、アメリカやヨーロッパに顔向けしにくい。だからオンラインで開催し、「それほど盛大にはやっていません」というような体裁を保つ目論見があったとも言われていますが、微妙な話ですよね。
飯田)インドとしては、ある意味、両方に足をつけておきたい。
バランス外交の難しさ ~韓国の文政権も成功しなかった
佐々木)そうですね。でも、バランス外交と言えば聞こえがいいけれど、現実的には難しい。韓国の前政権は、中国とアメリカの間でバランス外交をやろうとしたけれど、両方から怒られてうまくいかなくなりました。
飯田)文在寅政権が。
佐々木)いまは保守政権になったので、日本・アメリカ側に戻ってきたという感じで、中国とも距離を置くようになりましたが、バランスを取るのは難しいのです。
飯田)ある程度の国力が必要になる。インドは人口が多い国ですが。
佐々木)経済規模も大きいです。インド人は優秀なので、アメリカのいまの大手テックは軒並みインド人ですからね。
飯田)経営トップが。
佐々木)Googleもマイクロソフトも、Adobeもインド系の方です。経済規模は期待できますが、軍事的にはさほど大きくないことを考えると、「インドはどういうポジションでこれから進んでいくのか」が気になるところです。
インドはグローバルサウスをまとめられるのか
飯田)「グローバルサウスの代表として」などと言われますが、それぞれの国に事情があるなかで、インドがまとめられるのかどうか。
佐々木)かつて冷戦時代には非同盟諸国というような言葉がありました。
飯田)ありましたね。
佐々木)ソ連側にもアメリカ側にも立たない、非同盟の連盟をつくろうという動きでした。当時は結束があったと思いますが、いまのグローバルサウスは1つの同盟やグループになっているわけではありません。アフリカとインド、あるいは東南アジアと南アメリカでは、それぞれ状況も違えば、西側と中露のどちらにつくのかという向き合い方も違います。
飯田)そうですよね。
佐々木)インドがグローバルサウスのなかで、どのように存在感を発揮するのかを考えると、まだわからない部分がある。そもそも、アフリカと東南アジアを一緒にまとめるのは無理があるのではないでしょうか。
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