経済的な理由から「関係改善」したい米中 協力しやすい気候変動問題を協議

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慶應義塾大学教授で国際政治学者の細谷雄一が7月18日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。米ケリー大統領特使と中国の気候変動問題の担当特使・解振華氏の会談について解説した。

経済的な理由から「関係改善」したい米中 協力しやすい気候変動問題を協議

インドネシアのバリ島で、握手する中国の習近平国家主席(左)とバイデン米大統領=2022年11月14日 (ロイター=共同) 写真提供:共同通信社

米ケリー大統領特使が北京で気候変動問題を協議

アメリカのバイデン政権で気候変動問題を担当するケリー大統領特使は7月17日、中国の気候変動問題の担当特使・解振華氏と北京で会談した。

飯田)気候変動問題の中身もそうですが、米中関係に何とか道筋をつけたいような文脈で、このニュースが報じられることも多いようです。最近はアメリカ高官の訪中が続いていますが、現在の米中関係について、どうご覧になりますか?

対中政策を転換し、関係性を改善したいバイデン政権 ~気候変動、環境問題は、米中で協力しやすい分野であると認識

細谷)春ごろからバイデン政権の対中政策が明らかに転換してきました。当然ながら、一部は5月の広島サミットにも影響していたのですが、やはり中国との関係を改善したいのです。

飯田)アメリカは。

細谷)7月7日にイエレン財務長官が訪中しました。そのときに中国側のカウンターパートに対し、あまりにも腰を深く、頭を下げてお辞儀してしまい、批判されていました。

飯田)いろいろと言われました。

細谷)アメリカはいま、経済を中心に「対中関係を改善せよ」という圧力が国内からも出ています。2022年に国家安全保障戦略と国家防衛戦略をつくり、これまでは外交安保上の理由から、中国に対してかなり強硬な路線が示されていました。

飯田)強硬路線が。

細谷)ところが今年(2023年)の春ごろから、景気回復のためには中国の力、市場が必要だということで、財務長官を中心に対中関係を改善したい思惑があった。ところが中国は強硬ですから、成果を生んでいないのです。そういった意味では、気候変動や環境問題は、米中で協力しやすい分野だと認識されているのではないでしょうか。

飯田)今回、バイデン政権の特使であるジョン・ケリー氏は、もともとオバマ政権で国務長官を務めた方ですよね。

細谷)当時のオバマ政権は、対中融和政策的な性質が強かったので、ケリー特使を中心に最も協力しやすく、必要な分野でもある気候変動問題で米中関係を改善したい意向が強く見られていると思います。

経済的な理由から中国側も対米関係を悪化させたくない

飯田)一方でブリンケン氏が訪問したときは、席の順番なども含め、皇帝に謁見するようだったという報道もありました。

細谷)中国のアメリカに対するアプローチは変わってきました。「アメリカが中国に頭を下げれば協力してやってもいい」ということです。習近平政権の3期目になってから、そういう態度が濃厚に出ています。

飯田)頭を下げれば協力してやると。

細谷)一方で、人民日報や環球時報の記事を読むと、中国側も対米関係を悪化させたくないのです。改善が難しいことは十分に認識していると思いますが、これ以上悪化させたくもない。経済的な理由からも、中国国内ではそのような認識が強いのだと思います。

世論に向けて対中強硬論を示しながら、景気回復の側面では中国との協力も必要 ~その2つをどう両立させるかの最適解がまだ見えないバイデン政権

細谷)来年(2024年)の大統領選挙では、対中強硬なアメリカ世論と、ウォールストリートのような経済金融上の理由から、対中関係を改善したいという圧力との間で、バイデン政権はしばらく揺れ動くのではないでしょうか。

飯田)選挙が近くなると、「強い打ち出しをしなければならない」と考えますか?

細谷)両方ですよね。経済の数値もよくしないといけませんので、当然ながら、中国との経済的な関係強化も求めてくると思います。世論に向けて対中強硬論を示しながら、景気回復の側面では中国との協力も必要です。バイデン政権は、その2つをどう両立させるか、最適解がまだ見えていないのではないでしょうか。

台湾有事の際、アメリカの軍事的関与を阻止したい中国

飯田)他方、中国側のアプローチですが、かつて「太平洋は広い海なのだから分け合える」というようなことを言っていました。一部報道ではブリンケン氏が訪問したときに、習近平氏が「地球は広いから二分できる」というようなことを言い出したとされています。二分論のようなものまで出てきたということは、かなり強硬なのでしょうか?

細谷)一方では習近平政権の1期目のときに、いまおっしゃったような形で、どうにかして西太平洋における中国の勢力圏を確立し、アメリカの介入を阻止しようとしたわけですが、失敗しました。

飯田)当時は。

細谷)むしろアメリカは日米同盟を強化し、この地域への関与を続けたので、いまの中国に楽観論はないと思います。ウクライナへの関与について、バイデン政権は武器支援をしていますが、直接的な軍事介入にはかなり躊躇しています。

飯田)ウクライナ戦争において。

細谷)そのため、おそらく台湾を武力統一するような事態が起きたとき、中国としては、アメリカの軍事的な関与を阻止することが最大の目標なのではないでしょうか。

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