マイナンバーカードの問題点は「岸田総理自身が動かないこと」 菅前総理の「新型コロナワクチンへの対応」との違い

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ジャーナリストの鈴木哲夫が7月27日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。マイナンバーカードをめぐる問題について解説した。

マイナンバーカードの問題点は「岸田総理自身が動かないこと」 菅前総理の「新型コロナワクチンへの対応」との違い

2023年7月7日、挨拶する岸田総理~出典:首相官邸HPより(https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/actions/202307/07aseang7.html)

政府、2024年秋に健康保険証を廃止する方針変わらず

マイナンバーカードをめぐる問題で参議院の地方創生・デジタル社会特別委員会の閉会中審査が7月26日に開かれた。そのなかで河野デジタル担当大臣は健康保険証とマイナカードを一体化する「マイナ保険証」に関し、「メリットは非常に大きい」として、「いわゆる紙の保険証を2024年秋に原則廃止する方針は変更しない」との考えを示した。

飯田)先日、番組で河野さんにインタビューを行いましたが、「お尻を決めないと物事が進まない」とおっしゃっていました。

鈴木)国会答弁でも「方針は変えない」と答えていました。もちろん、いろいろな問題点はあるし、すべてに対応できているかと言うと、まだ足りないところがあると思います。

「マイナンバー」と「マイナンバーカード」の違いをもっと発信するべき

鈴木)マイナンバーやマイナンバーカードなど、いろいろなものがあって複雑なのです。私も取材していて、わからなくなることがあります。まず、それぞれの個人に「マイナンバー」を付けることによって、いろいろな行政手続きが楽になる。マイナンバーは既にみんなに付いているのです。

飯田)システム上。

鈴木)マイナンバーは、飯田さんにも私にもあります。ただ、「マイナンバーカード」はまた別のものです。

飯田)マイナンバーカードは。

鈴木)マイナンバーカードとは何かと言うと、マイナンバーも含め、いろいろなものを紐付けることによって、行政もしくは我々が受ける行政サービスを「どこまで効率的に一元化していくか」という。どちらかと言うと、どううまく使えば行政がうまく回るのかというものです。

飯田)紐付けることによって。

鈴木)もっと言えば、私たちが何を受けられるのか。「このカードを持っていれば、こういう便利なこともできる」と。

飯田)マイナンバーカードで何でもできると。

鈴木)もし何かあって救急搬送された場合、自分の既往症やどこで診察を受けたか、また服用している薬など全部がリンクする。「そういうカードである」として、マイナンバーとは分けなければいけません。

飯田)そうですね。

鈴木)これが一緒になってしまい、「個人情報が」などと言われているけれど、個人情報に関しては既にナンバーが付いているわけだから、わかるのです。乱暴な言い方ですが、あくまでも「便利なカードかどうか」という視点で考えた方がいいと思います。

飯田)あのカードに何かデータが入っているわけではなく、カードはマスターキーのようなものです。

鈴木)「鍵を開けたらなかに何があるか」が大事で、これがまさに紐付けなのです。

マイナンバーカードを鍵として開けた「そのなか」の全体像を先に説明するべきだった ~健康保険証から税金まで「生活のあらゆるもの」が入っている

鈴木)いまのところは健康保険証が紐付けられており、やがて免許証もそうなるでしょう。ただ私が気になるのは、健康保険証もそうですが、全体像を語っていないではないですか。

飯田)全体像を。

鈴木)去年(2022年)の段階では「紐付けするけれど、保険証も従来通り使っていいですよ。カードで使うこともできますよ」と「両方OK」でした。しかし、急に「2024年秋から健康保険証とマイナンバーカードを一体化して、従来の健康保険証は原則廃止する」と言い出した。

飯田)そうでしたね。

鈴木)このカードを鍵として使い、「なかに何があるのか」という全体像を、なぜ最初に語らないのでしょうか。最初の段階から免許証や、他の役所との絡みでは支援金の問題、また税金や給料など、「このカードを鍵として開けると、生活のあらゆるものがなかにある」という全体像をまず語らなければいけない。それなのに、全体像が語られていないという問題点があると思います。

マイナンバーカードの問題点は「岸田総理自身が動かないこと」 菅前総理の「新型コロナワクチンへの対応」との違い

2023年7月7日、挨拶する岸田総理~出典:首相官邸HPより(https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/actions/202307/07aseang7.html)

マイナンバーカードによって、各省庁に横串を刺すことができる ~ここが十分に語られていない

鈴木)河野さんはよく言うのだけれど、利便性ですよね。

飯田)利便性。

鈴木)マイナンバーカードによって、政策に横串を刺す。いままでは行政が縦割りだったから、例えば子どもに関する問題が起こった場合、文科省だけでなく、病気の部分では厚労省が関わるなど、縦割りの構造でした。

飯田)そうですね。

鈴木)でも、マイナンバーカードによって横串が刺され、情報が共有されていれば、すぐに対応できます。そういうメリットがあると思うけれど、十分に語られていません。

各省庁に横串を刺すようなマイナンバーカードならば、岸田総理が「マイナンバー情報総点検本部」の本部長をするべき

鈴木)もう1つ言うと、横串を刺すようなカードだから、各省庁の縄張りが関係するわけです。これを壊せるのはデジタル庁の一大臣ではなく、やはり総理大臣です。岸田総理がしっかりと「河野さん、やってくれ。全責任は俺が取る」と言うべきです。

飯田)岸田総理が。

鈴木)わかりやすいのは新型コロナワクチンへの対応です。当時、大変だったではないですか。運ぶのは国交省で、冷蔵庫は経産省、ワクチンそのものは厚労省が担う。会場で打つときには総務省と文科省も関わりました。

飯田)地方自治体も絡みますし、国の接種会場については防衛省が絡んだ。

鈴木)河野さんはそれを任されたのです。彼は横串を刺していったけれども、壁があった。そこで菅前総理が、直に現場へ電話を掛けたのです。

飯田)そうでしたね。

鈴木)そもそも今年(2023年)の2月ごろには、マイナンバーに関してトラブルの報告が上がってきています。その時点から危機感を持って対応しなければならなかった。

飯田)その時点から。

鈴木)仮に菅さんが総理だったら、すぐに河野さんを呼んで「こういう報告が来ている」と言っていたでしょう。菅さんはある種、危機管理のプロのようなところがあったので、すぐに対応したと思います。

飯田)菅さんならば。

鈴木)「これは総務省に全部跨る。俺が総務省に電話するから」という感じで、新型コロナワクチンに対応していましたが、同じように動いたと思います。

飯田)そうですよね。菅さんは「1日100万回打つ」と明言していましたから。

鈴木)それを岸田さんもやらなければいけないのですが、私の取材では、岸田さんはほとんど何も動いていなかった。そういう意味では、横串を刺す政策ならば、岸田さんがマイナンバー情報総点検本部の本部長になってもいいのではないでしょうか。

飯田)確かにそうでないと総点検できないですものね。

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