有事の際、「憲法9条」の枠組みのなかで自衛隊は戦えるのか 令和5年版「防衛白書」が公表

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ジャーナリストの須田慎一郎が7月31日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。令和5年版「防衛白書」について解説した。

有事の際、「憲法9条」の枠組みのなかで自衛隊は戦えるのか 令和5年版「防衛白書」が公表

※画像はイメージです

令和5年版「防衛白書」

防衛省は7月28日、2023年版の防衛白書を公表した。中国・ロシア・北朝鮮の軍事動向を特集し、2022年に策定した安全保障関連3文書に基づく防衛力強化の必要性を強調。台湾海峡情勢については「急速に懸念が高まっている」と警鐘を鳴らした。

防衛予算の増額に関しても明示

飯田)去年(2022年)12月の3文書改定後、初めて出された防衛白書です。

須田)加えて2024年度から防衛予算が増加し、2027年度までにはGDP比2%に持っていく、防衛予算の倍増が決まっています。

飯田)そうですね。

須田)防衛予算に関して、なぜ増額する必要があるのか、今回の防衛白書に明示されています。そこから、「これだけリスクが高まっている」ということが読み取れるのではないでしょうか。

憲法9条の枠組みのなかで自衛隊が与えられた装備を使って実行できるのか

飯田)具体的な危機の高まりとして、台湾海峡情勢が挙げられていますが、この辺りにどう備えていくのかという話ですね。

須田)ハードの部分とソフトの部分があります。防衛予算で拡充できるのはハードの部分です。実際に有事になった場合、自衛隊がきちんと役割を果たせるのかどうかという懸念もあります。それについては、防衛白書からは見えてきません。

飯田)ソフトの部分が。

須田)それが不足を感じる部分ではないかと思います。具体的に言えば、確かに防衛予算の倍増は実現できるのですが、いまの憲法9条における枠組みのなかで、与えられた装備を使って戦えるのかは、国民の大きな懸念ですよね。その辺りにもう少し踏み込んでもらいたかったというのが、私の素直な見方です。

飯田)最近はいろいろなシンクタンクなどが主催し、「ウォーゲーム」と呼ばれる机上演習が行われています。中国から「台湾に関してはうちの内政問題だから」と言われてしまった際、「日本として何ができるか」ということ自体の認定に、すごく時間が掛かると言われています。

9条2項の「交戦権の否定」 ~戦える体制になっているにも関わらず、現実問題として戦えない

須田)加えて実際の戦闘行動になったとき、戦術の部分で自衛隊にどこまでの役割ができるのか。

飯田)実際の戦闘行動になったときに。

須田)武器使用を想定した場合、一体、誰の判断で、誰の責任で行うのか。問題が発生したときに、どういう形で責任を負うことになるのかが空白であり、法律で整備されていないのです。

飯田)誰の責任でやるのか。

須田)なぜ、まだ整備されていないのかと言うと、やはり9条2項の「交戦権の否定」に行きつくわけです。実際に戦える体制・装備になっているにも関わらず、現実問題として、それができないという側面もあるのではないでしょうか。

飯田)現場の部隊長などの判断で、「俺が責任を取るから行ってこい」と言えるかどうかは大きいですよね。

須田)そもそも、部隊長の責任で行うことが果たしていいのかどうか。それは酷な話だと思います。

場合によっては殺人罪で起訴される可能性も ~ソフト面での不備がたくさんある

飯田)そこには本来、国家の意思があるべきですね。そうすると、どうしても憲法問題になってきてしまう。

須田)戦時法がないわけですからね。

飯田)軍法もないから、ことと次第によっては、殺人罪で起訴される可能性もある。それはいくら何でもと思います。

須田)敵の軍隊と交戦しているときはいいのです。ただ、場合によっては民間人が巻き込まれる可能性もあるわけですから、そのときにどうするのか。100%ないということはあり得ませんからね。その規定がないのです。

飯田)事前に避難するにしても、今度は緊急事態に対する条項などもない。「ここは自分の家なのだから残るし、立ち入らせないぞ」と言われたら何もできません。実はハード面より、ソフト面で不備がたくさんある。

須田)これからはそういったところの議論を深める必要があると思います。

9条2項の改正について、憲法審査会で議論して欲しい

飯田)防衛白書は性格上、防衛省が出すものですから、他の省庁は言及しづらいところがあります。そこは官邸なり政府全体として横串を刺さなければいけないですね。

須田)そうですね。防衛白書において「9条2項を改正して欲しい」という方向性は、高度な政治問題になるから盛り込めないのは間違いないのですが。

飯田)論文として書くだけでも、かつて国会で問題にされたことがありました。

須田)それを議論できるのは国会の憲法審査会なのだから、きちんと機能させて議論を深めて欲しいと思います。

飯田)「開催することそのものが改憲への道なのだ」というような。

須田)軍靴の音が聞こえる、などと言われますが。

飯田)議論することそのものがダメということになると、何もできないですものね。

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