NSBTシニア・ストラテジストの長島純が8月10日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。公明党の山口代表が岸田総理に要請した習近平氏への親書について解説した。
公明党・山口代表、岸田総理に習近平国家主席宛ての親書を要請
8月9日、自民党総裁の岸田総理大臣と公明党の山口代表の与党党首会談が行われた。公明党の山口代表は、自身が8月28日から中国を訪問するにあたり、習近平国家主席宛ての親書を作成するよう岸田総理に要請した。
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飯田)総理は「検討する」と答えたということです。対中国への向き合い方ですけれども、どうご覧になりますか?
長島)親書というのは、国家元首から相手の元首に向けた私信のようなものです。総理の自筆のサインがなければいけないので、位置付けは非常に重いと思います。
飯田)私信のようなもの。
長島)過去の例としては2015年、当時の自民党幹事長だった二階さんが、安倍元総理から親書を受け取り、習近平氏に渡しました。それが日中関係を大きく変えたと言われています。
飯田)当時、一帯一路やAIIB(アジアインフラ投資銀行)に日本がどう関わっていくかが注目されていました。親書には「一帯一路にも条件によっては乗る」というようなことが書かれたと報道されました。中国に対して向き合いを変えるようなメッセージが含まれていたのではないか、というものですよね?
山口代表が親書を要請する2つの意図
長島)そういう点で言うと今回、(山口代表が)親書を要請することには、何となく違和感を持ちます。
飯田)違和感がある。
長島)処理水の話などもありますが、親書を持っていけば習近平氏に会える可能性が高くなります。もう1つは、それによって「橋渡し役としての存在感」を示すことができるということです。
最終的には状況を見て岸田総理が判断する
飯田)岸田総理は、外務大臣としても歴代最長の経験を持ち、外交に力を入れています。先日の外務省の次官等々の人事を見ても、「自分で動かそう」という意思が強いように思います。それが今回のように人間外交的なことになってしまうのは、よくないような気がするのですが。
長島)総理は「検討する」と答えていますが、それは総理が最終的に判断の鍵を握るということであり、状況を見ていくのだと思います。
巨大な官僚組織のため、上層部が決めたことが下に届くまで時間が掛かる中国 ~上の統制が中国人民解放軍全体にどこまで浸透しているのかを見極める必要がある
飯田)中国との向き合い方で言うと、長島さんも関わった第2次安倍政権において、「対話のドアは開かれている」と常に言い続けてきたにも関わらず、最初の段階では「笑顔なく会う」ということが続きました。中国とはどのように付き合っていけばいいのでしょうか?
長島)中国はある意味、巨大な官僚組織だと思うのです。上が決めたことは下まで到達するのですが、あまりに大きいため、末端まで届くのに時間が掛かってしまう。
飯田)あまりにも大きいから。
長島)下は上からの命令がすぐ出ないので、いろいろなことをやってしまう。例えば中国の戦闘機が日本に近付いてきたり、勝手に防空識別圏を設定したり。
飯田)下がやってしまう。
長島)そこは日本と違うので、上の統制が中国人民解放軍全体にどこまで浸透しているのか、よく見極める必要があると思います。
飯田)最近もアメリカ軍の偵察機に中国軍の戦闘機が異常接近したり、アメリカ海軍の駆逐艦の前を中国軍の艦艇が横切ることがありました。いままでの戦狼外交の流れで、「俺たちもやってやろうか」というような意識があったのかも知れません。
長島)例えば戦闘機が20フィート(約6メートル)まで接近したということですが、飛行機の羽の長さがそのくらいなので、ほとんど接触するくらいまで接近したのです。
飯田)接触寸前まで。
長島)米軍は絶えず「人民解放軍がそういうことをすること自体、プロフェッショナルではない」と言っています。改善していくことは必要ですが、それは中国人民解放軍が決めることなので、我々は淡々と対応するしかないのです。
飯田)行動に対してしっかり何か言わないと、「これでいいんだ。もっとやってしまおう」と思われてしまうのですか?
長島)そうですね。ただ、向こうは下まで行くのに時間が掛かるということを見ないといけません。「中国はまったく変わっていない」と感じてしまうかも知れないので、我々も冷静に情報収集し、判断していく必要があると思います。
南西諸島は自分たちの影響力圏だと主張する中国
飯田)他方、麻生副総裁が台湾を訪問し、「我々には戦う覚悟が必要だ」と演説しました。この辺りのメッセージの出し方については、どうお考えですか?
長島)よかったと思います。中国が本気だと感じたのは去年(2022年)の8月、当時のペロシ米下院議長が訪台したあと、大規模な中国人民解放軍の演習がありました。そして、日本の排他的経済水域(EEZ)に5発の弾道ミサイルが着弾しました。
飯田)ペロシ元米下院議長が訪台したときに。
長島)これに対して日本が抗議したところ、中国の華春瑩報道局長は「日中両国は関連の海域で境界を確定していない。だから日本のEEZという概念は存在しない」と主張したので、私は驚きました。ですので、台湾有事が起きたときは、我々も同じように考えなくてはいけないのだと思います。
飯田)「ここは公海なのだから自由に通っていいのだ」というような理屈をつくってくるということですか?
長島)1つは領土の話です。極端な言い方をすると、彼らから見て「日本の領土とは確定していない」というようなことを言い出しかねないと思います。「南西諸島は自分たちの影響力圏だ」ということを言っているのではないでしょうか。
「かつて北海道から税金を納められていた」から北海道はロシアである ~北方4島と同じ
飯田)最近は尖閣のみならず南西諸島、特に沖縄について、「琉球王朝があった時代に我々は冊封関係にあったではないか」ということまで言い出しています。そこをさらに引っ張り、「自分たちの領土だった」と一部主張するようなニュアンスもありますが、どうご覧になりますか?
長島)ロシアも同じように、「北海道から税金を納められていた」という言い方をしているのです。彼らから見ると北方4島だけではなく、ある意味、北海道も同じなのです。それに対しては断固とした反対の姿勢と政策を打ち出していかなければいけないと思います。
飯田)ロシアの主張は当時、北海道で暮らしていらっしゃったアイヌの方々が税金を納めたという話ですか?
長島)そうです。「税金を納めたということは、ロシアの国民であると認めたに等しいではないか」と言う人もいます。
飯田)そういう歴史認識の問題から攻めてくる。ある意味、情報戦のようなところまで入ってくるわけですよね。
長島)私は2015年にインドネシア、ベトナム、フィリピンを回りましたが、当時は尖閣などでいろいろあったので、「同じようなことが必ず南シナ海でも起きるぞ」と言っていたのです。「そんなことはないだろう」と言われたのですが、そのあとベトナムがみんなやられて、中国は新しく島をつくりました。
飯田)新しく島をつくった。
長島)中国は全面を見て、いちばん弱いところから侵略していくというイメージなのです。
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