中露の「緊密な関係」は長くは続かない 沖縄本島・宮古島間を合同パトロールも

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日本経済新聞コメンテーターの秋田浩之が8月18日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。沖縄・宮古島間を通過した中露の合同パトロールについて解説した。

中露の「緊密な関係」は長くは続かない 沖縄本島・宮古島間を合同パトロールも

言葉を交わすロシアのプーチン大統領(左)と中国の習近平国家主席(ウズベキスタン・サマルカンド)=2022年9月16日 AFP=時事 写真提供:時事通信

中国とロシアの海軍艦艇が沖縄本島と宮古島の間を通過 ~日本側に「見せつけている」パターン

防衛省統合幕僚監部は中国・ロシア両国の海軍艦艇計11隻が8月17日、沖縄本島と宮古島の間を北上し、太平洋から東シナ海に向けて航行したと発表した。中国とロシアの艦艇が同時に沖縄本島と宮古島の間を通過するのを確認したのは今回が初めてで、領海への侵入はなかった。

飯田)中露の連携について、「合同パトロールだ」というようなことを言っていますね。

秋田)実態は日本海で共同演習し、そのまま解散せず、ぐるりと日本を取り囲むように航行して見せつけているというパターンだと思います。

今後、中露の共同演習や共同パトロールは定例化していく ~尖閣諸島や台湾海峡で有事が起きたときには、ロシアが中国とどう動くかも考えなければならない

秋田)2022年2月24日、ロシアによるウクライナ侵攻が始まった日に、日本政府の安全保障担当者と電話で話しました。彼は「尖閣諸島や台湾海峡で何かが起きたとき、これまでは中国がどう出るかということだけ考えていればよかった。しかし、これからはロシアが中国と一緒にどう動くかも考えなければいけない時代になるだろう」と言っていたのですね。

飯田)これからは。

秋田)まさに今回のロシアと中国の共同演習や共同パトロールは、何かがあって……例えば「日米韓首脳会談があるから牽制している」というようなことではなく、今後の年間スケジュールとして組み、定例化して行うものだと思います。単発の動きではないでしょう。

日米のように信頼し合って情報も共有したものではない ~一緒に散歩するようにパトロールして脅しているにすぎない

飯田)去年(2022年)の9月にも共同航行がありましたよね。

秋田)今回の中露の動きに関する政府内の分析として、例えば日本とアメリカのように情報まで完全に出し合い、さらには分業して一緒に戦う状態が最も緊密な協力とすれば、もう片方ではそれぞれ独立した軍で、それぞれが自分の犬を連れて同じコースを散歩するような緩い関わり方もあると思います。

飯田)緩い協力関係。

秋田)中国とロシアがやっていることは、いちばん緩い関係ではないかと。両国とも大きい国なので我々は脅威を感じるけれど、本質的には信頼しきっていないので、完全に情報を共有したり、手の内を出し合って完全な共同作戦を一体化して行うような動きではない。

飯田)中露の場合。

秋田)一緒に散歩するようにパトロールを行い、脅しているのだと思います。見せつけている。

飯田)「俺もいるんだぞ」と。

秋田)日本とアメリカのように信頼できる同盟として、手の内をすべて出し合って戦う軍隊になるという形とは違うと思います。

お互いを脅威に思っている中国とロシアの緊密は、どこかで天井を打つ

飯田)将来的にはどうですか?

秋田)中国とロシアの緊密さは増していくと思いますが、どこかで天井に当たると思います。中国もロシアも、お互いを脅威だと思っているからです。国境は長く接していますし、ロシアから見ると中国は人口で10倍、GDPでも約10倍の差があるほど大きくなっている。その中国が極東からアジアの海まで、すべて支配することをロシアの利益だとは思っていないでしょう。

中国にとっての潜在的脅威はアメリカではなく、ロシア ~国境を接する上、「不確実な脅威感」があるロシア

秋田)20年くらい前に中国の高官が「中国にとって最大の潜在的脅威は海の向こうにあるアメリカではなく、国境を接しているロシアだ」と言っていました。ロシアと中国が蜜月に入った時期に言っていた言葉ですが、それはいまも変わっていないと思うのですよね。

飯田)20年くらい前というと、ちょうど国境紛争も確定したくらいの……。

秋田)確定したころですね。「アメリカという国は王道をいく国だ」と言っていました。中国にある意味、正面から挑戦しているわけです。

ワグネルの反乱のようなことが来年起きる可能性は否定できない ~プーチン政権に強くコミットしている習近平政権が持つ不安

秋田)ロシアは国境を接しているから潜在的な脅威があるのですが、その上で何かの拍子に「ガラリ」と変わる。英語で言うと“uncertainty”、非常に不確定であり、「不確実な脅威感」があるのがロシアだと。

飯田)不確実な脅威感。

秋田)それは、地形が変わらない以上は変わっていないと思うのです。プリゴジン氏のような人が出てきて、ちゃぶ台返しが起きかねない。そうなると、プーチン政権に強くコミットしている習近平政権としては、「来年はどうなっているのか」などが気になると思うのです。

過剰反応せず、油断もせずに警戒するべき ~中露の関係は長くは続かない

秋田)そう考えると、今回の共同演習、パトロールは彼らが同盟関係に進むというものではない。協力は深まっていくのですが、「どこかで天上にぶつかるのではないか」ということも踏まえながら、過剰反応せず、だからと言って油断もせずに警戒するべきではないでしょうか。

飯田)台湾の頼清徳副総統がちょうどアメリカを訪れているタイミングです。ここで恣意的な行動を見せたのかと思ったのですが。

秋田)例えば、1週間前後の変更という意味で「そこにぶつける」ということはあったかも知れませんが、今回の頼清徳氏の動きがあろうとなかろうと、行っていたと思います。「効果的に」という考えで予定を微調整した可能性はあるかも知れませんが。

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