民間需要の寄与率が低く、内情的には「デフレ基調」はまだ続いている

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ジャーナリストの須田慎一郎が8月21日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。前年同月比で3.1%上昇した7月の全国消費者物価指数について解説した。

民間需要の寄与率が低く、内情的には「デフレ基調」はまだ続いている

※画像はイメージです

7月の全国消費者物価指数、前年同月比3.1%上昇

総務省が8月18日に発表した7月の全国消費者物価指数は、価格変動の大きい生鮮食品を除く総合指数が、前年同月比で3.1%上昇した。上昇率は6月から0.2ポイント下がったが、3%以上の上昇となったのは11ヵ月連続である。

飯田)3.1%上昇しましたが、どうご覧になりますか?

GDPの成長率を見ると民間需要の寄与率が低い ~4月~6月期のGDP1次速報では内需はマイナス

須田)内容の問題なのですが、デフレ基調から脱却できるのかどうかを考えると、内情的には、まだデフレ基調が続いているのではないかと思います。

飯田)デフレ基調が続いている。

須田)消費者物価指数だけ見ているとわからないのですが、国内総生産(GDP)の成長率を見ると、民間需要の寄与率がまだまだ低いのです。

飯田)民間需要の寄与率が低い。

須田)公共事業投資等も含め、観光地の需要が牽引してGDPが成長しているわけです。そうすると、まだ内需はそれほど強くなっていない状況です。このまま公的支出を減らしていくと、失速してしまうのではないでしょうか。

飯田)8月15日に発表された4~6月期のGDPの1次速報を見ると、内需はマイナスになっていましたよね。

須田)そうですね。

飯田)輸出入の差し引きでプラスになっているような感じでした。

景気がよくなって物価が上昇していかないと、スムーズな賃上げに進んでいかない ~ものを買うことができず、需要がさらに低下するというマイナスの循環に

須田)内需、特に個人消費が引っ張って物価が上昇しているわけではなく、原材料費の価格高騰によるコストプッシュインフレというような状況になっている。悪いインフレ傾向が出てきています。

飯田)7月の消費者物価指数のなかでも、食料がかなり上がっています。やはり原材料価格、まさにコストプッシュの部分ですね。

須田)生鮮食品を使ったあらゆる商品・製品が上がっている状況です。しかし結果的に、これがストレートな賃金上昇には結びついていないのです。

飯田)賃金上昇には。

須田)やはり景気がよくなって物価が上昇していかないと、スムーズな賃上げに進んでいかない。そうすると、国民生活は非常に苦しくなります。ものを買うことができなくなり、さらに需要が低下していくという、マイナスの循環になってしまうのではないでしょうか。

物価は上昇しているが、賃金上昇がカバーしているので、生活に対して負担感がないアメリカ

飯田)さらに個別の価格で見ても、ガソリン代が上がって、リッター当たり全国平均でも180円を超えてきています。それに対して政府は手を打たないですね。

須田)私は先日、アメリカから帰ってきたのですが、相当、物価が高いです。

飯田)アメリカは。

須田)ランチに「サーモンベーグル」というサンドイッチのようなものを食べても、日本円に換算すると3000円以上します。「高い」と思うかも知れませんが、向こうの学生やビジネスマンは普通に食べているわけです。それだけの所得があるのだろうと強く伺えます。

飯田)収入があるから3000円でも食べられる。

須田)見かけ上の価格は高いけれど、賃金上昇がそれをカバーしていますから、さほど生活に対しては負担感がない。

飯田)アメリカの場合は。

「ビッグマック指数」では日本よりタイや韓国の方が価格が高い ~ここで物価上昇に転じると賃金上昇が伴っていないだけに国民生活はより苦しくなる

須田)逆の見方をすると、いまの「ビッグマック指数」1つを取っても日本は上から44番目くらいで、インドネシアやタイ、韓国の方がビッグマック価格が高いのです。そう考えると、日本は異常に物価が安い。

飯田)ビッグマックは世界中で売られているから、その値段を各国の通貨でどう付けているかによって「レートがわかる」というのが、「ビッグマック指数」と呼ばれるものです。それによると、日本は世界から見ても「安い」という感じなのですね。

須田)そうです。デフレが30年ぐらいずっと続いてきた影響があるのですが、そこでコストプッシュインフレが起こり、物価上昇に転じてしまうと、賃金上昇が伴っていないだけに国民生活はより苦しくなります。

内部留保している大企業は賃上げし、中小・零細企業に利益配分するべき

飯田)賃上げしてもらわなくてはいけないけれど、そのインセンティブが企業にあるかどうかは、まさに内需がどうなるかによるわけですね。

須田)ただ、鶏が先か卵が先かという問題もあります。これだけ人手不足になっているけれど、大企業は外国人労働者をもっと入れろと言う。なぜならば、賃金を上げたくないからです。

飯田)大企業としては。

須田)しかし、これだけ内部留保があるのだから賃金を上げる、あるいは部品単価や工賃を上げて、中小・零細企業に利益配分するべきだと思います。

飯田)いままでのデフレにおいて、コストを削ることで出世してきた人たちが経営の中枢にいるわけです。その人たちは、それ以外の方法を思いつかないのでしょうか?

須田)なおかつ、そこで賃上げしてしまうと、利益水準が下がってきてしまうという恐れがあるのではないでしょうか。消費者が求めるような商品の開発に力を注いでいく、投資していくわけではなく、逆のベクトルに働いてしまっているのではないかと思います。

飯田)「実質値上げ」と呼ばれる、いままでより中身を減らすような方法が多いですよね。「実質値上げ」と言えば、まだ聞こえはいいかも知れませんが、「品質が落ちているのではないか」というものも多いです。

須田)要するに、クオリティが下がっているわけです。

飯田)それでいいのでしょうか。貧すれば鈍する方向に進んでいるような気がするのですが。

値上げをしても売り上げが下がっていないユニクロの商品や「うまい棒」の例も

須田)一方では値上げを行い、結果的に購入数量を下げなかった商品もあるのです。

飯田)クオリティが評価され、値上げしてもみんなが買うから。

須田)例えば、ファーストリテイリング社が展開しているユニクロの製品がそうです。値上げしても売り上げが下がっていません。「超大企業だからできることだ」という指摘があるかも知れませんが、例えば昨年(2022年)、2割値上げした駄菓子のうまい棒も、売り上げは下がっていません。

飯田)値上げに関する許容度は、国内にも出てきているけれど。

須田)その一方で、クオリティが伴っていない大手メーカーがつくるウインナーソーセージなどは、ステルス値上げを行ったことで、消費者から拒否されていますからね。

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