内閣支持率低下の根幹は「減税」の2文字だけを避けていること 青山繁晴議員が指摘

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作家で自由民主党・参議院議員の青山繁晴が8月24日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。不動産不況により危機的状況に向かいつつある中国経済について、また、岸田内閣のガソリン価格への対応について解説した。

内閣支持率低下の根幹は「減税」の2文字だけを避けていること 青山繁晴議員が指摘

2023年8月22日、記者の質問に答える岸田総理~出典:首相官邸HPより(https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/actions/202308/22kaiken.html)

中国の不動産不況で遠洋集団にデフォルト懸念

中国不動産大手の遠洋集団控股は8月22日、資金繰りの悪化により人民元債の償還が困難となり、債権者に期限の延長などを提案すると発表した。不動産不況で業績は悪化しており、債務不履行(デフォルト)の懸念が強まっている。

飯田)大手の碧桂園もそうですし、恒大集団はアメリカの連邦破産法15条の適用を申請しました。最近は不動産不況がいろいろと言われていますが、中国経済についてどうご覧になりますか?

今後、次々と延焼する中国経済の悪化 ~中国経済の根本的な問題は民間の産業資本がほぼないこと

青山)10年来ずっと予測されてきたことが、ついに火を噴いた。今後、どんどん延焼すると思います。北朝鮮のニュースをはじめ、深刻なニュースが多いのですが、いちばん深刻かつ長期にわたるものは、実はこれだと思います。

飯田)中国経済ですか。

青山)中国経済の根本的な問題は、民間の産業資本がほぼないということです。明治維新のあと、日本がなぜ富国強兵できたかと言えば、兵を強くすることは国家がやりましたが、国を富ませることは、実は民間が行ったのです。坂本龍馬が岩崎弥太郎という階級の低い武士に、「経済はおまん(お前)がやれ」と言ったという事実があります。

飯田)坂本龍馬が。

青山)そのような手紙や資料が多いので、事実と考えられています。それが三菱財閥になり、財閥は旧軍部と組み、よからぬこともありましたが……。ただ、民間が支えていたから、アメリカ軍はそれを見抜き、連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)は財閥も解体したのです。

民間の産業資本がないので、つまずきが生じると国家がすべて傾いてしまう ~中国の「不動産不況」は日本の「バブル崩壊」の比ではない

青山)中国は逆に民主主義、本当の資本主義というものが、鄧小平さんの時代ですらあったことがありません。中国語で「企業」は「公司(コンス)」と言います。日本語では「企業」、英語では“Enterprise”ですが、本当は共産党や軍の支配下にあり、民間の産業資本ではありません。どこかでつまずきが生じると、国家が全部傾く状況になってしまうのです。中国での「不動産不況」は、日本やアメリカで言うような言葉の意味とは違います。

飯田)中国の不動産不況は。

青山)つまり、地方政府に実質的に担保させ、どんどん不動産を、特に住宅をつくっていたわけです。また、人口はすでに減っており、インドに抜かれてしまいましたが、これから加速度をつけて減っていきます。

飯田)中国の人口が。

青山)つくりかけの無残な廃墟が中国全土に広がっている状況です。日本のバブル崩壊はもちろん深刻ではありましたが、人口で言うと、日本は1億人プラスアルファで、中国は14億人の世界ですので、桁が違うのです。

恒大集団がアメリカの裁判所に連邦破産法15条の適用を申請した意味 ~中国の需要があてにならなくなった今後、世界経済はどちらへ向かうのか

青山)恒大集団は、中国国内だと破産すらできないから、アメリカにお縋(すが)りすることになったのです。アメリカの裁判所に連邦破産法15条の適用を申請したのはそういう意味です。アメリカの法律を適用して、何とかパニックを抑えようとしている。

飯田)なるほど。

青山)国家の危機です。日本の財界や企業は、これまで中国頼みでした。中国の需要、つまり下水道もなく、カラーテレビも車も持っていない未開拓の需要が10億人ぶんくらいあると考えていた。

飯田)これまでは。

青山)先進国には行き渡ってしまい、ものが売れない時代ですから、中国の10億人に期待した。中国が何をしようとも、尖閣諸島でどのような狼藉をはたらこうとも、経済界が認めるような空気になったのです。しかし、いよいよ中国の需要はあてにならないことがわかった。「世界経済はいったいどちらに向くのだろう」と思います。

今後はラテンアメリカやアフリカなど、発想の転換が必要 ~中国にこだわることはない

飯田)各々が自分の国の内需を本当に大事にしていかないと、外需頼みでは立ち行かなくなるのでしょうか?

青山)その状況が既に起きています。外需、特に中国に期待してはいけませんが、まだ世界にはラテンアメリカの大陸と、アフリカ大陸があるわけです。特にアフリカは、未だに苦しんでいる人間がたくさんいます。

飯田)アフリカには。

青山)政府開発援助(ODA)も重要ですが、これだけ通信と運輸手段が発達しているのですから、隣国だからと言って中国の需要にとらわれることはありません。そう考えれば、まだまだ人類には希望が残されています。その代わり、発想の転換をしなくてはいけません。

内閣支持率低下の根幹は「減税」の2文字だけを避けていること 青山繁晴議員が指摘

中国の習近平国家主席(中国・陝西省西安市)=2023年5月19日 EPA=時事 写真提供:時事通信

日本のメディアや経済紙が伝えているものとあまりにも違う中国の実態

青山)見かけにだまされない。例えば、中国の全国人民代表大会(全人代)について、日本メディアは「中国の国会にあたるもの」と言いますが、全く違います。国会の機能は果たしていません。

飯田)違うのですね。

青山)「決定が早いから独裁国家の方がいい」という本を出す若手の学者がいますが、その方は独裁国家を歩いた経験をあまりお持ちではないと思います。私も含めて、民主主義の人間が独裁国家のなかへ仕事で入っていくと、独裁主義は発想が全然違うことがわかります。

飯田)我々とは発想が違う。

青山)つまずくと巨体が「ドタン」と倒れるような状態になっているのが、いまの中国の不動産不況です。日本のメディアや経済紙で伝えられている情報と、あまりにも実態が違うということを考えなくてはいけません。

今後、中国の経済ショックに備えなければならない

青山)私は「武漢熱」と呼んでいますが、新型コロナ感染症はまだ収束したとは言えません。特に中国で出ている変異株の情報は伝えられていない。それなのに団体客が中国から入って来ます。

飯田)団体客の入国も解禁されました。

青山)特に夏休みが終わり、子どもたちが学校へ戻っていったとき、「中国発の変異株のまん延が懸念される」と私は発信しています。最近はマスクをする人も少なくなり、スタジオのつい立てもなくなりました。

飯田)なくなりましたね。

青山)コロナ禍からの需要回復が期待できるため、アメリカも日本も景気がよくなっています。日本は賃金上昇が物価上昇の下をいっているので、誰にも実感がなく、そのため内閣の支持も弱いのですが。

飯田)最近は支持率が落ちています。

青山)国内総生産(GDP)の伸び率で言えば、生活実感は違うにせよ、年率6.0%というすごい伸び率になっています。しかし、やがて中国ショックで頭を叩かれる事態が、アメリカ経済でも日本経済でも起きると思います。それに備えなくてはいけません。

ガソリン価格の高騰に対してトリガー条項を発動しなければ「自由民主党が政権を担っている意味がない」

青山)ガソリンに関して言えば、「やはり補助金を元に戻しましょう」という岸田内閣のやり方ではなく、自由民主党の議員だからこそはっきりと言いますが、当然トリガー条項を考えなくてはいけません。

飯田)ガソリン税の「トリガー条項」。

青山)本来、3ヵ月連続でレギュラーガソリン1リッターが160円を超えてしまったら、税金分の2割5分くらいを軽減するというものです。東日本大震災の復興のため、これを凍結しているわけですが、なぜトリガー条項を発動しないかと言うと、減税が病的に嫌いなのです。

飯田)減税を行うことが。

青山)財務省が嫌がるからです。これを克服しなければ、「自由民主党が政権を担っている意味がない」と私は思います。

内閣支持率低下の根幹は、「減税」の2文字だけを避けていること ~「増税」しかないのであれば民主主義国家でも何でもない

飯田)実際、可処分所得が減ってしまっています。特にガソリン価格の高騰は、地方にこそ効いてきます。マイナンバーの件で支持率が落ちていると言われていますが、経済に関する影響の方が大きいのではないでしょうか。

青山)マイナンバーカードの問題については、デジタル化する際は最初にエラーがあることを理解している人の方が圧倒的に多いです。そんなことを言っているわけではなく、根幹のことですよね。

飯田)根幹。

青山)これから需要が回復するというときに、「なぜ増税思考なのか」と。減税してさらに新しい需要を生まないと、中国経済の破滅的な動きにも対抗できないのではないか。それは経済学者でなくとも、生活している人、仕事をしている人はみんなわかりますよね。

飯田)国民は。

青山)なぜ政府にそれができないのかという話です。

飯田)ガソリンの話でも、補助金が徐々に減っていくことは見えていたのに、ここまでどうして動いてくれないのかと思います。「お盆休みに動いてくれたら、もう少し違ったのに」とみんな思いますよね。

青山)もう一度言いますが、根幹は「減税」の2文字だけを避けていることです。「増税」という言葉があるのですから、「減税」という言葉もあります。「増税」しかないのだったら、それは民主主義国家でも何でもないですよね。自由民主党の内部から、もっと声を上げなくてはいけないと思っています。これから年末へ向け、党は税制改正の議論にも入っていきますので、例年にも増して重要だと思っています。私の責任も重いということです。

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