国民生活からかけ離れてしまっている現在の金融政策
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元経産省官僚で政策アナリストの石川和男が9月29日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。10年ぶりの高い水準となった長期金利について解説した。
長期金利が10年ぶりの高い水準に
飯田)10月28日、長期金利が10年ぶりの高い水準になりました。新聞報道では「トリプル安」などと書いているところもありますが。
石川)我々一般庶民からすると、金利と言えば「預貯金金利」になります。企業に勤めている金融などの担当者は別として、多くの国民は自分のお金を手元に置いておくと危ないから、銀行や郵便局に預ける。しかし、21世紀になってからは金利が低いので……。
飯田)低いですね。
石川)もう少し前の時代だと、金利が3%~4%あって、100万円を預けたら1年後には利子が3万円~4万円だったわけです。
飯田)羨ましいですね。
石川)そのくらいの時代が懐かしく思いますが、いまは桁が2桁ぐらい違う。
日本経済の悪いところは預けたお金が増えないこと
石川)人によって認識は違うと思いますが、日本経済のダメなところは、預けたお金が増えないことです。住宅ローンで借りて返すというのもありますが、やはり預けたお金が増えなければ、預けなくなりますよね。
飯田)増えないとなると。
石川)国債も財源ではないですか。よく「国債を発行して翌年の予算にあてる」などと言いますが、そんなものは誰も買う気がしないのではないかと思います。0.75%という金利もそうです。確かに先週に比べたら高いけれど、これで人々の関心が国債に集まるかと言えば、そうはなりません。
国民生活からかけ離れてしまって「何ですかこれ?」という世界になっている ~金利を上げるように誘導しなければならない
石川)いつまでたってもそのままです。そろそろ本当に、もう少し庶民に響く金利政策に転換していく必要があると思います。庶民が関心を持たなかったら、政治に反映されません。金利の話は国民生活からかけ離れてしまって、「何ですかこれ?」という世界です。どこかで荒療治を行い、金利を多少上げるような状態に誘導しなければならないと思います。
飯田)荒療治をして。
石川)やはり庶民生活において関心を持たれないと、政治問題化せず、盛り上がりません。街を歩く人に「長期金利が上がりましたが、皆さんどう感じますか?」と聞いても、「何それ?」で終わってしまうと思います。
金利が低いのでみんな関心がない ~岸田政権には本当の経済対策を長期で掲げて欲しい
飯田)金利が3%~4%だった時代は、80年代~90年代初頭ぐらいだと思います。確かにあのころは庶民がこぞって「NTT株はどうなるのだろう」などと関心を持っていました。いろいろな会社が割引債を出していて、「どれがいちばん有利なのか」と、雑誌でも特集が一面を飾っていました。「リテラシーだ」などと言うけれど、景気がよければ自然とみんな学ぶのですよね。
石川)関心があるから学ぶのですが、いまは誰も関心がない。いまの10代~30代ぐらいまでの人は、金利が高かったころを知らないのです。
飯田)物心ついたときから0金利だった。
石川)金利はマーケットの力が非常に大きいのですが、政治でどこかを動かさないといけないと思います。岸田政権には、本当の経済対策を長期で掲げていただきたい。「数年後にはこうなる」というような政策を打ち出して欲しいですね。
「貯蓄も投資も両方選べるような時代」にする
飯田)確かに「貯蓄から投資へ」などと言いますが、「貯蓄しても儲からないのであれば、少し投資しようか」と、個々人が能動的になれば変わるかも知れませんね。
石川)普通の人に「貯蓄から投資へ」と言っても、何に投資していいかわからないではないですか。
飯田)博打ではないかと思ってしまう。
石川)昔は預金だったわけです。それが安心だった。「投資しろ」と言っても、リスクが高くて失敗したらダメになってしまいます。それしかオプションがない状態ではなく、安心して預けられて、「投資リテラシーのない人でも大丈夫」という世の中に、もう1度日本を戻すべきです。そういう政策の方向に持っていく。
飯田)安心して預けられる。
石川)安心して預けられれば、余裕もでき、投資を考えるかも知れません。両方必要だと思います。「貯蓄から投資へ」ではなく、「貯蓄も投資も両方選べるような時代」に挑戦する。多少の荒療治は必要ですが、やるべきだと思います。
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