「処理水」めぐる高市大臣の批判に中国語で反論した中国の国内事情

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ジャーナリストの須田慎一郎が10月2日、ニッポン放送「新行市佳のOK! Cozy up!」に出演。オーストリアのウィーンで開かれたIAEAの年次総会について解説した。

「処理水」めぐる高市大臣の批判に中国語で反論した中国の国内事情

国際原子力機関(IAEA)の年次総会で演説する高市早苗科学技術担当相=2023年9月25日、オーストリア・ウィーン 写真提供:時事通信

IAEA総会が閉幕、処理水への批判は中国のみ

オーストリアの首都ウィーンで開かれた国際原子力機関(IAEA)の年次総会が9月30日に閉幕した。東京電力福島第一原発の処理水放出を批判したのは中国のみで、日本の取り組みを支持する声が上がるなど、各国が理解を示した。

中国が高市大臣の中国への批判に対して英語ではなく中国語で反論したのは、中国国内に向けてのメッセージ

新行)8月24日の処理水放出後、初めてのIAEA総会となりました。3日間の総合討論で、日本の取り組みや処理水放出を批判したのは中国だけでした。

須田)総会には日本から高市早苗科学技術担当大臣も出席して、中国に対する批判を展開しましたが、高市大臣の演説は英語で行われました。IAEAを含めた国連関連機関、あるいは国連での演説において公用語が6つあるため、6つのうちいずれかを使えばいいのですが、高市さんは英語を選びました。英語が最も各国で理解されますよね。

新行)そうですね。

須田)それに対し、中国サイドの反論は中国語で行われました。これも公用語の1つなのでいいのですが、「なぜ英語で反論しなかったのか?」というところが1つの注目ポイントです。中国語で演説したため、出席していた各国の関係者はポカンとしてしまう状況でしたが、あれはあくまでも中国国内向けのメッセージだったと考えるべきです。

新行)国内に向けてのメッセージだったのですね。

振り上げた拳の落としどころを探る中国

須田)あの状況を見たときに、「そろそろ中国は振り上げた拳の落としどころを探っているのではないか」と感じました。

新行)落としどころを探っている。

須田)処理水の放出に関して「肯定する」という方向に方針転換が行われたのではないかと思います。もちろんそれは正式決定ではありません。ただ、「どこか風向きが変わってきたな」と思います。

日本産のホタテを「第三国経由で輸出して欲しい」と中国から要望 ~シンガポール経由で輸入したホタテを「シンガポール産」として売る

須田)先日、ホタテの取材で北海道の方に行ってきました。現地では確かに大量の殻付きホタテが積み上げられてはいるのですが、いろいろと話を聞くと、中国の業者サイドから打診があるのだそうです。

新行)中国の業者サイドから。

須田)10月いっぱいで中国国内の日本産ホタテの在庫が、すべて途絶えてしまうのだそうです。ところが中国国内では「日本産のホタテを食べたい」という声があるので、あれば売れる状況にある。

新行)需要がある。

須田)そこで、「第三国経由で輸出してくれないか」という内々の要請が来ているのだそうです。仮にシンガポール経由で冷凍ホタテが輸出されるとすると、「シンガポール産」の形になる。「そんなことが果たして可能なのか?」と思いますよね。

松坂牛や神戸牛をカンボジア経由で輸入し「カンボジア産和牛」として販売する中国

須田)かつて牛海綿状脳症(BSE)問題が起こったときに、中国は日本産とアメリカ産の牛肉の輸入禁止措置を取りました。その輸入禁止措置は今日まで続いています。

新行)現在も。

須田)ところが中国国内では、正真正銘の松坂牛、神戸牛、宮崎牛が売られています。日本から直接入れているのではなく、カンボジア経由で入れているのです。「これはカンボジア産の和牛です」と、わけのわからない売り方をしている。

いずれかのタイミングで面子を立てた形での輸入再開となる可能性が高い

須田)そういう国なのです。ホタテを中国がまったく買わなくなることはあり得ませんし、いずれかのタイミングで、面子を立てる形での輸入再開となる可能性が高いと思います。

新行)面子を立てる形で。

須田)しかし、1ヵ国に集中して輸出するような状態だと、いろいろなリスクを伴うので、「やはりここは分散するべきではないか」というような話も現地に行ったときはされていました。

新行)いろいろな国々に、ということですよね。

須田)そうですね。

ホタテは国内の消費者が購入した場合、殻を剥かなければならない

新行)日本においては、農林水産大臣が「ホタテを1人5粒食べて」と呼びかけたり、SNS上でも「#食べるぜニッポン」というハッシュタグとロゴ画像を使い、水産物の写真投稿を呼びかけたりもしています。食べて応援しようという流れが国内でできていますよね。

須田)ただ、食べて応援するのも難しいのです。ホタテは殻付きになっているので、加工する必要があるという問題があります。

新行)殻を剥かなければならない。

須田)生産している現地では、加工して貝柱を取り分けて輸出したり、国内の市場に回しているわけではありません。殻ごとなので、現地には加工業者がいないのです。中国の場合は、殻のまま冷凍で買ってくれるので輸出しやすく、輸出が増えています。食べて応援するためには、まずホタテの殻を剥く作業をしなければならない。

新行)X(旧ツイッター)では、「日本の若い子はホタテや牡蠣の殻剥きなんかやらないからなあ」というようなつぶやきもありました。

須田)この際、殻剥きを覚えていただきたいですね。

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