ジャーナリストの須田慎一郎が10月2日、ニッポン放送「新行市佳のOK! Cozy up!」に出演。10月20日に召集される秋の臨時国会について解説した。
秋の臨時国会、10月20日に召集へ
政府は9月29日、秋の臨時国会を10月20日に召集する方針を固めた。岸田総理は経済対策の裏付けとなる補正予算案を臨時国会に提出すると明言。噂される解散については、「いまは考えていない」と述べた。
解散が遠のく ~自民党内でも議論が交わされる補正予算案
新行)内閣改造後、初の国会となります。岸田総理は補正予算案を提出すると明言しており、物価高などへの対応をめぐって与野党の論戦が行われる見通しです。解散について「いまは考えていない」と総理は話していますが。
須田)10月20日に臨時国会を召集し、10月中に経済対策を決めて補正予算案をまとめる方針ですが、仮に年内に成立させようとすると、解散に打って出るタイミングを失ってしまったのではないかと思います。
世耕参院幹事長「15兆~20兆円規模の補正予算」に「規模ありきの予算はおかしい」と党内から反論が上がる ~積極財政派と緊縮財政派が綱引きを繰り広げる展開に
須田)臨時国会に補正予算案が出てくることを考えると、少し解散が遠のいた感じがします。補正予算案については、これから自民党内でも激論が交わされそうな雲行きです。当初、世耕参院幹事長が記者会見で「最低でも15兆円~20兆円規模の補正予算を」と言っていました。
新行)そうですね。
須田)これに対して、党内から「規模ありきの予算はおかしい」という声が上がっています。規模ありきとなると、ばら撒きのようなイメージがありますが、大規模な予算編成については牽制球が投げられています。
「責任ある積極財政を推進する議員連盟」が萩生田政調会長と世耕参院幹事長に「真水ベースで20兆円規模の補正予算」を提出する予定 ~どの程度の規模で補正予算を編成するのか
須田)今週末くらいから、積極財政派と緊縮財政派が激しく綱引きを繰り広げる展開になるのではないかと思います。なぜなら、もともと「安倍別働隊」と呼ばれていたアベノミクスを推進する議員連盟であった、「責任ある積極財政を推進する議員連盟」という総勢102人の議員で構成される議員連盟があり、ここが今週中に提言をまとめて、萩生田政調会長と世耕参院幹事長に提出する予定になっています。中身は「真水ベースで20兆円規模の補正予算を」という言い方です。
新行)20兆円規模の補正予算。
須田)「どの程度の規模で補正予算を編成するのか」が最も大きな注目ポイントです。15兆円~20兆円という金額に何か根拠があるのかと言うと、誤解を招きかねない報道が多いのですが、2023年4~6月期の需給ギャップ(需要と供給力のギャップ)が、プラス0.4%になったという報道が相次ぎました。
補正予算で15兆円~20兆円の真水ベースでの財政出動をしなければ、またデフレに戻りかねない危険も
須田)需給ギャップがマイナスだと需要が少ないために、デフレ基調と呼ばれます。これが3年9ヵ月振りにプラスになりました。そのため、「平時に戻った」とも言われているのです。
新行)プラスになったことで。
須田)これを言っているのは特に財務省です。しかし、本当に平時に戻ったのかという検証作業がいま進んでいます。もともと平成デフレ不況があり、コロナショックもあって企業が生産しない体制になっていたため、供給能力そのものがものすごく絞られていました。
新行)コロナ禍もあり。
須田)実数を計算してGDPの比率で考えると、どうも3%~4%ほど供給力が低く見積もられていた形跡があるのです。逆に言うと、サバを読んでいた可能性が高い。
新行)3%~4%ほど低く。
須田)GDPを大体500兆円と考えると、3%サバを読んだとして約15兆円、マックスの4%だと約20兆円になります。世耕参院幹事長の言っていることには数字的な根拠があるのです。それだけ供給能力がサバを読まれていた。それほど上乗せするとなると、まだまだデフレ基調が続いているという状況になります。ですから積極財政派が言うように、本格的に景気を安定軌道へ乗せるためには、補正予算において真水ベースで15兆円~20兆円の財政出動をしなければ、またデフレに戻りかねない危険を孕んでいるのです。
新行)デフレに。
須田)そうは言っても、緊縮財政派の方々はそれをやりたくない。その辺りの綱引きが今週中にも始まるのではないかと思います。
減税するのであれば、消費税減税に踏み込まないと意味がない
新行)関連して、自民党の森山総務会長が北海道北見市で講演し、新たな経済対策で減税が検討されていることを踏まえ、「税に関することは国民の審判を仰がなくてはならない」と述べました。
須田)減税は形を変えた補助金です。「税金を貰わない」ということは、一旦貰ったものを返すという意味なので、補助金なのです。そのため、真水ベースに加わります。とは言っても、「どこに対する補助金なのか」ということです。
新行)どこに対する補助金なのか。
須田)原油価格の高騰で減税すると言っても、一般消費者に対する減税にはなりません。業者に対するものであり、消費者の方にはほとんど恩恵がない可能性がある。
新行)消費者には。
須田)減税するのであれば中身が大事です。「所得税減税なのか、消費税減税なのか」は重要なポイントであって、それを考えず、ただ「減税に関して国民の審判を仰ぐ」と言ってみたところで、ほとんど意味がないと思います。やるのであれば消費税減税くらい踏み込まないと意味がないでしょう。
減税・増税だけではなく、社会保険料についても民意を問う必要がある
新行)“かんぬき”さんから、X(旧ツイッター)でご意見をいただいています。「減税に民意が必要なら当然、増税にも民意が必要ですよね。税金の使い方に民意が反映されていないのはどうするのでしょう?」といただきました。
須田)もう1つポイントなのは、2024年度から「異次元の少子化対策」で3.5兆円の新たな予算措置が講じられます。「年内にその財源を明示する」と岸田総理は方針を示しています。
新行)財源について。
須田)例えば「増税ではなく、社会保険料の引き上げによって賄う」ということになると、「一緒ではないか」となってしまいます。減税・増税だけではなく、社会保険料をどうするかについても当然、民意を問う必要があると思います。
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