岸田政権がいまするべきことは「最低賃金の引き上げ」ではない 須田慎一郎が指摘

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ジャーナリストの須田慎一郎が10月2日、ニッポン放送「新行市佳のOK! Cozy up!」に出演。最低賃金の引き上げについて解説した。

岸田政権がいまするべきことは「最低賃金の引き上げ」ではない 須田慎一郎が指摘

2023年9月21日、ニューヨーク経済クラブ主催による講演を行う岸田総理~出典:首相官邸HPより(https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/actions/202309/21usa.html)

最低賃金、10月1日から順次引き上げ

最低賃金が10月1日から都道府県ごとに順次引き上げられる。2023年度の全国平均の引き上げ幅は過去最大の43円。時給の平均は初めて1000円を超え、1004円となる。

新行)最低賃金について、働く人たちからは「物価上昇が続くなかで引き上げ額が十分ではない」という声が上がる一方、企業からは「中小企業の支払い能力では厳しい対応だ」という懸念の声もあるようです。

最低賃金の引き上げは中小事業者の首を絞めることになり、場合によっては事業継続が困難になる可能性も

須田)最低賃金を政治的思惑で引き上げることになったのですが、「いまはそのような環境にあるのか?」とも思います。引き上げることに対して反対はありませんし、もう少し引き上げ幅が大きくてもいいのですが、これを実現してしまうと、特に最低賃金の引き上げに大きな影響を受ける中小零細企業、あるいは小規模事業者の経営が大丈夫なのかと、心配で仕方がありません。

新行)最低賃金の引き上げをしてしまって。

須田)利益がきちんと上がらないなかで人件費が高騰してしまうと、事業継続が難しくなり、場合によっては廃業や経営破綻、倒産という状況にもなりかねません。そうでなくても雇用を抑制する方向になりかねないので、働く側にとってはプラスですが、雇用する側、特に中小事業者の首を絞めることになる可能性があります。

最低賃金を上げる前に、景気をよくして中小企業が利益を上げられる環境を整えるべき

須田)私が指摘したいのは、「岸田政権はその前にやるべきことがある」ということです。つまり景気をよくして、きちんと中小零細企業が利益を上げられる環境を整えることです。景気回復はまだ道半ばです。

新行)まだ道半ば。

須田)有権者は支持してくれるかも知れませんが、中小企業にとっては死活問題になってきます。「まずは景気をよくしてください」と思います。

新行)順番が違うということですよね。

須田)インボイス制度も同じです。中小事業者がきちんと利益を上げられるようになり、適正価格で買い取ってもらえる状況になれば導入するべきですが、そのような環境ではないのですから、「いまやるべきことなのか?」と思います。

発注数量を増やすことによって、利益の絶対額を増やしてきた下請け会社 ~経営を維持することは可能でも賃金を上げるインセンティブは働かない

新行)企業としては、賃金の上昇と雇用はバランスですよね。

須田)一方で、日本を代表する産業に自動車産業がありますが、最終製品をつくっているトップの自動車メーカーの下には、1次下請けから5次下請けまであります。6階建てのピラミッド構造になっている。

新行)6階建ての。

須田)ところが、そのメーカーが下請けメーカーに発注する部品単価、あるいは部品の手間賃・工賃は、この20年間ずっと下がり続けているのです。

適正価格で売って適正な利益を上げる構図をつくることが必要

須田)なぜそれで経営が持つのかと言うと、売り上げも微々たる利益なのだけれど、発注数量を増やすことで利益の絶対額を増やしてきたからです。しかし、これだと経営維持は可能かも知れませんが、「賃金を上げていく」というインセンティブは働きません。

新行)経営は可能でも。

須田)「なぜこの20年間、単価が下がり続けなければいけなかったのか?」ということです。確かに経営効率を上げるのはいいかも知れませんが、それによって結果的に中小零細企業の業績が厳しくなり、首を絞めていることにならないか。そもそも適正価格で売って、適正な利益を上げる構図をつくる必要があります。なおかつ景気をよくする。そこに手を付けず、「最低賃金を上げれば有権者は喜んでくれるだろう」と考えるのはいかがなものでしょうか。

経済対策としてお金が出ていくような仕組みをつくるべき

新行)「年収の壁」を解消する対応策も、10月から始まります。

須田)これについても社会保険料は折半なので、言ってみれば企業の負担を強くすることになります。「このまま放置してもいい」ということではなく、それによって困っている人たちに対し、国がきちんとバックアップ体制を敷いていく。補助金という形になるのかも知れませんが、それを敷く一方で、企業が負担に耐えられるような経済環境をつくるべきなのです。

新行)そもそもの土台の部分ですね。

須田)いま岸田政権は経済対策に関して、何とか景気のテコ入れをしようと動いています。そのようななかで、一時的なものになるかも知れませんが、テコ入れ策としてお金が出ていくような仕組みをつくるべきです。企業に負担を与えるだけで、その辺りが一向に見えないのが少し不可解なところです。

お金を使う気がない「経済対策の5本柱」

新行)「経済対策の5本柱」については、どう評価されていますか?

須田)「お金を使う気がないのだろうな」と思います。ようやくコロナが明けて経済が回復し始め、企業や個人が暗中模索のなかで動いています。安定軌道に乗せていくためには、政府がしっかりとお金を使わなければいけないのですが、その意欲や、景気をよくしようという気持ちが見受けられません。目新しいメニューが5項目も並んでいるのですが、どれも「中途半端なレベルにも達していない」というものばかりです。

新行)還元するという言葉もありましたが。

須田)例えば減税と言っても、「どこに対する減税なのか?」という問題もあります。もっと踏み込んで「消費税の減税なども考えているのか?」と思うのですが、一切考えていません。「減税」という言葉で「有権者が喜ぶのではないか」という下心が見え隠れしているのです。

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