生成AIの規制 「フェイクかどうか」を認証できるシステムが必要

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東京大学先端科学技術研究センター特任講師の井形彬が10月3日、ニッポン放送「新行市佳のOK! Cozy up!」に出演。世界的な生成AIの規制について解説した。

生成AIの規制 「フェイクかどうか」を認証できるシステムが必要

※画像はイメージです

岸田総理大臣がAI規制について「日本が主導して国際ルールづくりを進めている」と述べる

岸田総理大臣は10月1日、京都市で開幕した国際会議「STSフォーラム(科学技術と人類の未来に関する国際フォーラム)」の年次総会で講演した。岸田総理は主要7ヵ国(G7)の議長国として、生成AI(人工知能)の規制の在り方などを議論する「広島AIプロセス」を提案したことに言及し、「信頼できるAIの実現に向け、日本が主導して国際ルールづくりを進めている」と述べた。

新行)「広島AIプロセス」は今年(2023年)5月に広島で開かれたG7首脳会議で創設が決まりました。G7は生成AIに関する国際ルールを2023年中に策定する方針ですが、必要になってくる国際的なルールはたくさんあると思います。

トム・ハンクスのフェイクコマーシャルが出回る ~第三者機関によって「これは生成AIです」「これは生成AIではない本物の動画です」と認証できるシステムが必要

井形)一般の人が「これは生成AIでつくったものだ」と判断できるようなシステムが、どうしても必要だと思います。昨日(10月2日)、アメリカの俳優のトム・ハンクスさんがインスタグラムで、「自分が出ているネットコマーシャルが出回っているけれど、これは僕ではない」という内容の投稿をしました。

新行)トム・ハンクスさんが。

井形)「ディープフェイク」を使って、あたかもトム・ハンクスさんがネットコマーシャルをサポートしているかのような形なのですが、完全にフェイクだったのです。

新行)さっそくそのような事例が出てしまっているのですね。

井形)コマーシャルなどももちろんそうですが、「政治家や大統領がこんなことを言った」というものが既に出ていて、あとから「実はフェイクだった」ということがわかるケースも出ています。

新行)既に。

井形)花丸印なのかどうかはわかりませんが、第三者機関が「これは生成AIです」、「これは生成AIではない本物の動画、音声です」と認証できるようなシステムが必要だと思います。

日本がリーダーシップを発揮することは重要だが、外れてしまった国に対する対処をどうするのかを考える必要がある

新行)日本が主導して、リーダーシップを発揮できる場面ではあるのですか?

井形)AIだろうと何だろうと、特定の先端科学技術を持っている国でなければ、ルールづくりには関与しにくいと思います。

新行)ルールづくりに関与するためには。

井形)日本はAIの特定の分野において、かなり頑張っているところがありますので、他の国が決めたルールに対して「遵守します」、「いい子になって守ります」というのではなく、岸田総理が自分で旗を揚げて「これをやっていく」とリードすることは重要だと思います。

新行)日本がリーダーシップを発揮することは。

井形)ただ一方で、これは「G7で進めていく」と言っていますよね。そうなると、例えばインドが「グローバルサウスのリーダーである我々を無視するのか」というようなことを言ってくるかも知れませんし、イスラエルも「AIと言えば我々だろう。なぜいちばん進んでいるのに我々が入っていないのか」と言うなど、いろいろな国々が不満を示してくると思います。「外れてしまった国への対処をどうするのか」ということに関しては、考えなくてはいけないと思います。

いろいろな国がお互いに「一緒に決めよう」と言っており、最終的に「どこがコアになるのか」がまだ見えていない

新行)最初はG7でつくっていき、徐々に広げていく形になるのでしょうか?

井形)日本・アメリカ・インド・オーストラリアの4ヵ国で構成される「クアッド」という枠組みがあります。その「クアッド」で、AI、バイオ、量子に関するルールづくりをまず始めて、そこからG7やインド太平洋経済枠組み(IPEF)など、さまざまなところへ持っていこうという話はされているようです。

新行)なるほど。

井形)また日米の2ヵ国間では、「まず我々でAIのルールの基礎をつくり、それをクアッド、あるいはG7へ持っていって広げよう」と言われているようです。みんながお互いに「一緒に決めよう」と言っており、最終的に「どこがコアになるのか」がまだ見えていないところではあります。

新行)小さいグループそれぞれに日本が入ることが大切ですか?

井形)先ほども言った通り、例えば韓国など、クアッドやG7にも入っていないような国が「除け者にされている」と考える可能性がありますので、そこへのフォローも必要になってきます。

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