東京大学先端科学技術研究センター特任講師の井形彬が10月3日、ニッポン放送「新行市佳のOK! Cozy up!」に出演。有事の際の食料確保に向けた法整備について解説した。
農水省、有事の際の食料安全保障の確立へ向けた法整備を検討
新行)農林水産省は10月2日、「不測時における食料安全保障に関する検討会」を開きました。紛争や凶作などで食料供給が途絶える事態に備えるため、国が民間事業者に対して農畜産物の生産に加え、輸入や出荷の計画作成を求めることができる法整備を検討する方針を示しています。どうご覧になりますか?
井形)省庁もそうですが、数年くらい前から議会連盟レベルでもかなり議論が進んでおり、ようやく形になってきたという気がします。
特定の国からものが入ってこなくなった場合を想定し、サプライチェーンの多様化を進める
井形)一方、内容を見ると「すべて自国でつくれるようにしよう」というような方向性が見えますが、これは最も効率のいいやり方ではないかも知れません。
新行)どういうことでしょうか?
井形)例えば紛争があった場合、特定の国からものが入ってこなくなる可能性はありますが、全部を日本でつくる必要があるかと言うと、そうではありません。紛争に関係ない国や、信頼できる同盟国など、パートナー国から輸入できるのであれば、それはそれでいいのです。
新行)パートナー国から。
井形)もちろん自給率は増やした方がいい。ただ、すべてを自国でつくるというよりは、「A国から買えなくなったらB国やC国、D国からも買える」というように、サプライチェーン(供給網)を多様化する方向に進める視点があってもいいと思います。
経済安全保障と食料安全保障の議論を連携して行うべき
新行)食料安全保障の場合は、農林水産省が引っ張ることになるのでしょうか?
井形)農林水産省と、安全保障ですので外務省も加わります。やはり経済安全保障だと、どうしても経済産業省が引っ張る傾向があり、もしかしたら省庁間でのライバル意識が少しあるのかも知れません。
新行)省庁間で。
井形)食料安全保障も、大きく言えば経済安全保障の一部だと思います。去年(2022年)通った経済安全保障の法律を見ると、「半導体の供給が紛争などで止まってしまった場合は、他国からも買えるようにする」と、今回の話と同じようなことが考えられています。
新行)半導体の場合も。
井形)「エネルギーが止まったらどうするか」という場合も、「他国から買えるようにしたり、国内でももっとエネルギーをつくれるようにする」ということが入っています。
新行)エネルギーも。
井形)肥料に関しても経済安全保障のところに入っていますが、なぜか食料については入っていないのです。ですので、今後は経済安全保障と食料安全保障の議論を連携して行う必要があると思います。
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