ふるさと納税は本来、「返礼品目当て」ではなかったはず

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ジャーナリストの佐々木俊尚が10月4日、ニッポン放送「新行市佳のOK! Cozy up!」に出演。ふるさと納税の返礼品に関連する基準の見直しについて解説した。

ふるさと納税は本来、「返礼品目当て」ではなかったはず

※画像はイメージです

ふるさと納税、見直しスタート

総務省は10月から、ふるさと納税の返礼品に関連する基準を厳格化して運用を始めた。具体的には、自治体に対して確定申告を行わなくても税の控除が受けられる「ワンストップ特例制度」のために必要な書類などの発送費用や、仲介サイトに支払う手数料もすべて経費に計上し、5割以下にするよう求めている。

新行)過度な返礼品競争で経費が5割を超える自治体が相次いだため、10月から基準が厳格化されました。それを受け、寄付額の値上げや返礼品の内容を減らすなど、対応に追われた自治体もあったそうです。

ふるさとに納税するというよりも「返礼品に納税する」ことになってしまっている

佐々木)菅義偉さんが始めたのですが、もともとの狙いは、ある種の社会分配でした。都市に人口が偏ってしまっているため、「地方にも少し分配を増やしましょう」というところがよかったのです。

新行)社会分配。

佐々木)しかし、「返礼品目当てでふるさと納税を行う」という状態になってしまった。ふるさとに納税するというよりも、「返礼品に納税する」という方向へ過剰に進んでいます。

冷凍保存できない野菜は人気がない ~冷凍できる海産物や肉に集中

佐々木)いま、ふるさと納税のポータルサイトがたくさんあるではないですか。そういうところで検索し、「美味しいものを見つけて買う」ということをみんながした結果、同じ地方でも格差が生まれてきた。冷凍できるので、海産物や肉のある土地が異常に強いのです。

新行)保存しやすいから。

佐々木)野菜がおいしいところはあまり売れない。野菜を箱で送られても冷凍しにくいし、食べきれないではないですか。だから、イクラやウニや数の子、牛肉や豚肉などに集中してしまう。

新行)そうですよね。

佐々木)そのため、加工だけして「うちの名産は肉だ」などと打ち出す地域も出てきています。「原材料はその地域で生産されたものに限る」というのは、そういう傾向があるからです。

福島第一原発の処理水放出の際には、いわきの水産物を応援しようといわき市のふるさと納税が増えた

佐々木)そうは言っても、その土地に愛着があるとか、その土地を応援したいのでふるさと納税を行うという、本来の仕組み自体は頑張って維持して欲しいのですよ。

新行)その土地を応援するために。

佐々木)例えば、福島第一原発の処理水放出が始まった際、いわきの海産物をみんなで応援しようと、いわき市へのふるさと納税が増えています。私も買いました。

新行)そうなのですね。

佐々木)何年か前に新潟県糸魚川市で大きな火災があり、大変な状況だったのですが、あのときも糸魚川にふるさと納税をしました。当時は緊急のふるさと納税(緊急寄附)だったので、返礼品がなかったのですよ。

水害や災害などが起きたときにふるさと納税を行う

佐々木)完全に税金を糸魚川に渡し、「見返りはありません」という状態でしたが、みんな意外とたくさん緊急寄附を行ったのです。

新行)見返りがなくても。

佐々木)水害や災害などが起きたときに、ふるさと納税を使う。または「旅行などで訪れてみたらよかった」と思えば、後日、東京に戻ってふるさと納税を行うようなことがあってもいいと思います。納税する側の心の持ちようではないでしょうか。

新行)応援するという意味では、クラウドファンディングにも似ているような気がしますね。

佐々木)「READYFOR(レディーフォー)」のようなものもありますよね。ああいうものをふるさと納税でやるということです。クラウドファンディングにお金を投じるよりも、税金を自分の住んでいる町から移すというように、税に対する認識も少し変わってくるのではないでしょうか。

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