ジャーナリストの佐々木俊尚が10月4日、ニッポン放送「新行市佳のOK! Cozy up!」に出演。オースティン国防長官と会談する木原防衛大臣について解説した。
木原防衛大臣、オースティン国防長官と初会談のためワシントンへ
木原防衛大臣は就任後初めてアメリカのオースティン国防長官と対面で会談するため、10月3日午前、ワシントンに向けて出発した。会談では相手のミサイル発射基地などを攻撃できる「反撃能力」をはじめ、日本が進める防衛力の抜本的強化を踏まえ、日米の役割分担や装備品の整備などについて意見を交わしたいとしている。
新行)また、北朝鮮による弾道ミサイル発射の情報について、韓国を含めた3ヵ国で即時に共有する仕組みの構築や、海洋進出を強める中国への対応などで緊密に連携していくことを確認したい方針です。
佐々木)木原稔さんは今回初めて大臣を務めます。54歳で、2世ではありません。自民党神奈川県連の「かながわ政治大学校」を卒業し、公募で熊本から選出されました。
一貫して安全保障専門の木原防衛大臣
佐々木)2019年の安倍政権の最後の時期は、総理大臣補佐官であり、安全保障担当でした。そこからまだ4年ぐらいしか経っていませんが、一貫して安全保障専門の方です。特に最近、防衛装備品の輸出ルールについて、要件緩和に向けた与党協議が始まっています。
新行)殺傷能力のある武器輸出も、現行ルールで認められた「警戒」などの活動目的に当たれば、輸出可能とするという。
佐々木)これはホットな話題です。次期戦闘機をイタリア・イギリス・日本の3ヵ国で共同開発することが決まっていますが、3ヵ国だけで使うのでは儲からない。防衛産業としても困るので、共同開発した戦闘機を他国に売るという方向に行く必要があります。そのためには、ある程度解禁しなければいけません。
新行)他国に売るためには。
佐々木)よく防衛産業について、「軍需産業で儲けて日本を戦争に追い込もうとしている」などと言う人もいますが、まったく逆です。日本にも三菱重工など、防衛産業があります。でも、日本では自衛隊にしか売れず、マーケットが小さすぎて全然儲からないため、「撤退したい」というような方向になってきている。
新行)他には売れない。
佐々木)それでは防衛省が困るので、「何とか頑張ってください」と尻を叩いている状況です。しかし、輸出がある程度できるようになれば、東南アジアなどに売ってマーケットが広がり、防衛産業も成立します。
新行)マーケットが広がって。
佐々木)「防衛産業で大儲けするために国を戦争するよう焚きつけている」などと言うのは、1970年~1980年代の古い神話でしかありません。それをもう少し知らなければいけないと思います。
韓国の世論調査では、日本と軍事同盟を結ぶことについて「約52%が賛成」
佐々木)今回のオースティン国防長官との会談では、いろいろなことを話し合うと思います。特に「日米韓の枠組みをどうするのか」は注目される議論です。
新行)日米韓の枠組みをどうするか。
佐々木)日本とアメリカには日米安全保障条約があります。米国と韓国も、米韓連合司令部があるので、完全に米軍の下に韓国軍があるという仕組みです。
新行)米軍と韓国軍の関係は。
佐々木)ところが、日本と韓国の間には何の軍事条約もありません。こういうことを言うと「韓国なんか放っておけ」と怒る人が出てくるのですが、そうも言っていられない状況になりつつあります。ロシア・中国・北朝鮮など、核保有していて、なおかつ強権国家のような国が増えている状況ですから、何とかしなければならない。
新行)そうですね。
佐々木)韓国の世論調査では、「韓国は独自に核保有すべきか」と聞くと、7割ぐらいの人が「核保有すべきだ」と答えています。北朝鮮と国境を接しているので、日本よりも危機感が強いのでしょうね。さらに6月ぐらいの世論調査を見ると、日本と軍事同盟を結ぶことについても、約52%が賛成しています。
新行)そうなのですね。
佐々木)日本は「韓国はいまひとつ信用できない」などと思っているかも知れませんが、逆に韓国ではそういう意見が出ている。それは知っておいた方がいいと思います。
「在韓米軍の駐留と、核兵器を持つことのどちらを優先しますか?」と聞くと、「米軍駐留の方がいい」と言う人が多い韓国世論
佐々木)しかし、「韓国の国民が核保有したがっている」というのも微妙な話で、実際には核保有などできません。核不拡散条約に加盟していますし、そもそもアメリカが許しません。ですので、韓国国内では「日本も一緒に核を持って欲しい」と言っている識者もいるようです。
新行)そうなのですか。
佐々木)日本が核を持つということは、現状の世論で考えるとあり得ない。あくまでも「日米安保条約の枠内で」ということになります。
新行)日米安保条約の枠内で。
佐々木)韓国が核を持とうとすれば当然、米韓の軍事条約が壊れ、米韓同盟が壊れる可能性もあるわけです。実際、韓国の世論調査では「在韓米軍の駐留と、核兵器を持つことのどちらを優先しますか?」と聞くと、「米軍駐留の方がいい」と言う人が多く、核保有の方が少ないのです。
新行)そうなのですね。
佐々木)「核保有したら米韓同盟が壊れる。でも核保有したい」という、異様にジレンマがある特殊な世論です。我々から見ると、この辺りが「韓国はいまひとつ信用ならない」、「ぶれているな」と思うところです。
韓国も仲間に引き入れ、ロシア・北朝鮮・中国との対抗軸をつくっていかなければ、日本の未来はない
佐々木)ただ、日本に対する韓国世論も変わってきています。福島第一原発の処理水放出についても、中国は強く反対しましたが、韓国は意外に冷静でした。一部の左派系政党が反対しただけで、世論調査、あるいは現政権も反対していません。
新行)安全性を認めています。
佐々木)その辺りは日本としてもある程度受け止めつつ、ここで韓国も仲間に引き入れ、ロシア・北朝鮮・中国との対抗軸をつくっておかないといけません。いつまでも「韓国けしからん」と言っているだけでは、「この先の未来がないのではないか」と個人的には思います。
番組情報
忙しい現代人の朝に最適な情報をお送りするニュース情報番組。多彩なコメンテーターと朝から熱いディスカッション!ニュースに対するあなたのご意見(リスナーズオピニオン)をお待ちしています。