中国政府の「習近平氏への忖度」が難航させる「米中首脳会談」調整
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経済アナリストのジョセフ・クラフトが10月24日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。発効から45年を迎えた日中平和友好条約について解説した。
日中平和友好条約の発効から45年 ~岸田総理が「建設的・安定的な日中関係の構築が重要」と述べる
日中平和友好条約の発効から45年を迎えた10月23日、経団連や日中友好団体が記念レセプションを開催した。岸田総理大臣はメッセージを寄せ、「建設的かつ安定的な日中関係」を構築する重要性を訴えた。
飯田)中国の李強首相もメッセージを寄せ、「新しい時代の要請にふさわしい中日関係の構築に取り組んでいきたい」と唱えています。日中関係をどのように見ていけばいいでしょうか?
クラフト)日中関係には、いろいろな問題が山積していますが、23日はある意味の記念行事だったので、それなりにポジティブな発言が多かったですね。
日中首脳会談を実現するために中国側に譲歩しすぎないか懸念
クラフト)それでも、李強首相は「日本も政策や立ち位置を修正した方がいいのではないか」という含みを持たせるような発言をしていました。懸念されるのは、11月のAPEC首脳会議での米中首脳会談はまだ決まっていませんが、調整を図るなかで、日中首脳会談があるのかどうかです。
飯田)日中首脳会談が。
クラフト)政権が「日中首脳会談も」ということで、中国側に譲歩しすぎないかと懸念しています。
この時期に中国のスペシャリストである垂駐中国大使が交代するのは疑問
クラフト)日本の垂駐中国大使が交代するのですよね。
飯田)そのような報道が出ています。
クラフト)垂さんは日本のなかでも突出した中国通で、独自の情報網があります。中国に対して批判的でもあり、中国政府側からは煙たがられている存在です。今回、それが交代するということで、少し心配ですね。福島の処理水問題があり、APEC首脳会議も始まりますが、このタイミングでの交代はどうなのでしょうか。
飯田)後任には、アジア大洋州局長や外務審議官を歴任し、現職は駐インドネシア大使の金杉憲治氏が起用される方針です。
クラフト)金杉さんも実力のある方です。中国のスペシャリストである垂さんに対し、金杉さんもアジアのスペシャリストで、もちろん中国にも精通しています。しかし、このタイミングでの交代はどうなのかなと思います。
中国大使は金杉氏、米国大使は山田重夫前外務審議官に交代
クラフト)アメリカの大使も今年(2023年)で代わり、外務省のエースと言われている山田重夫前外務審議官が派遣されます。2024年は大統領選があるので、より現地の情報を強化するということもあります。全般的に見て、大使レベルを変えているのは注目に値するのではないでしょうか。
中国との問題を抱えるなかで、なぜいま中国大使を交代しなければならないのか
飯田)垂さんは中国語研修組、チャイナスクールと呼ばれる人ですが、一方で台湾にも人脈があり、中国政府が警戒する大使だと言われていますよね。
クラフト)そうなのです。チャイナスクールと言っても、かならずしも親中ではありません。中国に対して厳しいことを言う人で、その意味では中国との問題を抱えるなか、中国に対してものを言える大使は重要だと思います。金杉さんが問題なわけではなく、垂大使は中国に対して日本の姿勢を毅然と示すシンボルにもなっていました。どんな内部事情があったのかは知りませんが、人事のタイミングが気になります。
中国側の「習近平氏への忖度」から難航する米中首脳会談の調整
飯田)アメリカのカービー戦略広報調整官によると、中国の王毅政治局員兼外相が26~28日にワシントンを訪れ、ブリンケン国務長官と会談すると報じられました。この辺りも米中首脳会談の最終調整になってくるのでしょうか?
クラフト)「首脳会談は双方にとって有益なのに、なぜ決まらないの?」と思われるでしょうが、国務省の幹部と話すと、やはり大変なようです。それは中国が独裁国家になっている1つの象徴でもあります。
飯田)1つの象徴。
クラフト)アメリカとしては、習近平氏にどのような情報が流れているかはわからない。部下が忖度して、「間違ったいい情報」しか届けていないのです。従って、習近平氏が実態を理解するためには、(アメリカ側が)直接言わなければ確認できないことから、アメリカは首脳会談を求めているのです。
飯田)本当の情報を伝えるために。
クラフト)中国側からは、「習近平氏にこのようなことは言ってはいけない。このように出迎えないといけない」というような要請が非常に多いようです。
飯田)アメリカ側に。
クラフト)物事をはっきりとトップ同士で言えないのであれば、首脳会談の意味がありません。その部分の調整で難航しているのです。最終的には決まると思いますが、習近平氏が恥をかくと、その下があとで失墜する可能性もあるので、「これは言ってはいけない」というような要請が多いそうです。
中国政府は国民に対して、「これだけアメリカに歓迎された」ということを演出したい
飯田)見せ方の部分も重要なのですね。そうでなくても今回、APECの議長国はアメリカで、サンフランシスコで開催されます。そうすると、中国から「わざわざ出向いた」という形にはしたくないということですね?
クラフト)出向くのはいいのですが、その代わり「アメリカから歓迎された」という印象を国内向けに見せなければいけない。中国側からは「大統領がどこで出迎えるのか、どんな晩餐会をやるのか」というような要望が強いとのことです。
飯田)外交儀礼上、「トップ・オブ・トップ」にしようと。
クラフト)中国政府からすれば、国民に対して「これだけアメリカに歓迎された主席なのだ」ということを演出したいのです。
飯田)「アメリカもここまで気を遣っているのだぞ」と見せたい。
「どう出迎えるのか、どのような晩餐会をするのか」など中国からの要望が多く、調整に難航
クラフト)アメリカはアメリカで本音トークがしたいのですが、中国側の本音は、「本音でトークされては困る」ということです。その調整が難航している。
飯田)アメリカとしては扉が閉まったあとの話をしたいけれど、中国側は扉が閉まる前の部分で「どうきらびやかにつくるか」を気にしている。
クラフト)扉が閉まってからも「きついことを言うな」とか、親分に恥をかかせるようなことは許さないという感じで、中国側の要望は細かいそうです。
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