「性同一性障害」 社会・制度・法律が十分に追いつけていない
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慶應義塾大学教授で国際政治学者の細谷雄一が10月26日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。最高裁が違憲との判断を示した「性同一性障害特例法」の規定について解説した。
最高裁、戸籍上の性別変更に手術必要の規定は「違憲」と判断
性同一性障害の人が戸籍上の性別を変更するのに、生殖能力をなくす手術を事実上の要件とした「性同一性障害特例法」の規定が憲法に反するかどうかが争われた家事審判で、最高裁は10月25日、「違憲で無効」とする判断を示した。最高裁の裁判官15人全員一致の判断だった。
飯田)手術要件に関しては違憲という判断ですが、一方で外観要件に関しては高裁段階で検討されていないとして、自ら判断せず審理を高裁に差し戻しました。この件についてはX(旧ツイッター)やメールでもご意見をいただいています。新宿区の“イデア”さんから、「公衆浴場や旅館の女性風呂、トイレ、更衣室、スポーツ競技などの扱いはどうするのか。性的少数者の方々の人権を尊重することも重要ですが、多数を占めている普通の人たちの権利も尊重して欲しいと思います」といただきました。権利と権利がバッティングすることも想定されます。細谷さんは日本以外のさまざまな事例もご覧になっていると思いますが。
3つのジェンダーの議論に
細谷)去年(2022年)、1年間イギリスにいたのですが、ジェンダー問題については非常に深刻な状況でした。イギリスの方と話すと、ジェンダーには生物学的なジェンダーと、アイデンティティとしてのジェンダー、そして同性愛も含まれますが、性的指向としてのジェンダーの3つを考えないといけないと言います。いままではこれが1つだったのです。
飯田)これまでは。
細谷)アメリカやヨーロッパの場合、大衆浴場や温泉のような場所がほとんどないので、裸で同性の人と入る機会が少ない。そこは日本独自の問題であり、対応が難しいと思います。
10~20年掛かる問題
細谷)一方、アメリカやヨーロッパで問題になっているのは、もともと男性だった人が女性としてのアイデンティティでスポーツ競技に出ることです。多くの人たちがかなり高いパフォーマンスの結果を出しています。アイデンティティは女性ですが、もともと男性だった人が女性として競技に出て高いパフォーマンスを出したときに、それを認めるかどうかは、アメリカやヨーロッパで深刻な問題になっています。
飯田)体力的には男性ですからね。
細谷)まだ制度、社会、法律が十分に追いつけていないと思いますね。
飯田)今回は司法判断が出たというだけで、社会慣習も含め、すべてを「ガラッ」と変えることができるかと言うと、社会全体の認識が追いつかない可能性もあると思います。
細谷)おそらく10~20年掛かる問題でしょう。
飯田)今回、「性同一性障害特例法」に対して違憲判断が出たので、おそらく法律を変えることになると思いますが、そのとき一緒に議論しなければいけないのは、社会慣習も含めた部分になるのでしょうか?
細谷)認識が先に変わり、それに合わせて慣習と制度・法律が変わっていくような形になると思います。
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