IAEA「処理水調査」に分析機関を参加させた中国の「もう1つの意図」

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戦略科学者の中川コージが10月25日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。福島第一原発の処理水海洋放出後、初めてとなるIAEAの調査について解説した。

中国の習近平国家主席(中国・陝西省西安市)=2023年5月19日 EPA=時事 写真提供:時事通信

中国の習近平国家主席(中国・陝西省西安市)=2023年5月19日 EPA=時事 写真提供:時事通信

福島第一原発の処理水放出開始後、IAEAによる初の調査始まる

東京電力福島第一原子力発電所に溜まる処理水の海洋放出をめぐり、計画の安全性を検証している国際原子力機関(IAEA)は放出後初となる調査を10月24日から開始した。27日までの4日間、放出に反対する中国からも科学者が参加し、福島第一原発の設備の状態なども調べる。

中国の科学者も調査に参加

飯田)中国は日本を批判するなかで、科学者を送ってきました。これは軟化の兆しと見ていいのでしょうか?

中川)もともと内政理由で反対しただけなので、中国は自ら非科学的だとわかっていながら、日本側に泥を投げつけていたわけです。最初から長期化すれば負け戦になることはわかっていたので、その意味では、「短期で引き上げたい」という気持ちはあったのだと思います。

飯田)長引かせずに。

中川)長くなれば長くなるほど、中国国内でも「そもそも非科学的だったのではないか」という議論が広がってしまう。エリートだけわかっていればいいことが、一般大衆の人民にまで伝わってしまうと困るので、長期化することはそもそも問題だったのです。

飯田)政府としては。

中川)また、日中韓首脳会談に合意しているなかで、軟化ムードに進みたいところもあるでしょう。自らマイナスにして、それを0に上げると、軟化したように見えるではないですか。DVのようなもので、「殴っていたではないか」ということはありますが。

飯田)改めて見るとそうですね。

中川)軟化に感じるけれども、マイナスが0に近付いたようなものです。中国側としても軟化させる予定だったし、具体的な内容としても軟化させたいので、このような反応になるのでしょうね。今後はなかったことのように扱うのではないでしょうか。

中国への属国化が強まり、習近平氏にいいように使われるロシア

飯田)中露首脳会談の直前に、ロシアが「中国に乗って我々も水産物を禁輸する」など、遅れて表明しましたが、「空気が読めないな」と思いました。

中川)ロシア内での反日の意識で動いたところも、1つのシナリオとしてあると思いましたが、その後の習近平へのへりくだり方を見ると……。

飯田)プーチン氏の習近平氏に対する。

中川)「両国の連携は緊密だ」というようなことを言いましたよね。あれを見ていると、どちらかと言えばワン・オブ・ゼム、つまり多くの国のなかの1人とする要因に仕立てられたのではないでしょうか。中国だけが反対しているのではなく、「ロシアも反対しているぞ」ということで……。

飯田)ある意味の正当性を訴える。

中川)自分だけ赤信号で進んでしまうと、中国としてもビビッドに映ってしまうけれど、「ロシアも引き連れて2人いれば、そうは見えないだろう」というような要因に使われたのだと思います。ロシアが属国化して習近平氏にいいように使われているため、あの発言が出たというのが私の見立てです。

飯田)しかし、そのくらい両国関係も変わってきています。

中川)かなり上下関係がはっきりしましたね。以前は兄弟ぐらいの感じがありましたけれど、「完全に支配権が確立したな」と思います。「赤信号に手を引っ張られて来たな」というのが、福島処理水に関する中国とロシアの関係だと思います。

処理水放出後の官民が連携した批判への「カウンタープロパガンダ」を「敵ながらあっぱれ」と見る中国

飯田)日本国内の世論の動向などを見ても、放出前は風評被害などが懸念されていましたが、むしろ「福島の水産物を食べて応援しよう」という方向に振れましたよね。

中川)今回の日本の反応は非常によかった。1つは内政要因で出てきているわけですが、中国としてはもう1つ、「日本がどのような広報戦略を仕掛けるのか」も見ていたと思います。

飯田)処理水放出に関しての。

中川)だから処理水批判をせざるを得なかった部分があるのですが、それは消極的要因です。積極的要因としては、批判したときに「日本側が政治的判断としてどう動くのか」という、「カウンタープロパガンダ戦」のような日本の能力を見ていたと思うのです。それに対して日本は官民が連携し、上手くカウンターを仕掛けられたので、中国側も「敵ながらあっぱれ」と見ていると思います。

飯田)敵ながらあっぱれと。

中川)今回のように強気に出ると、中国はきちんと評価するのです。中国側としても「日本は頑張っているではないか」と見たのだと思います。日本政府は非常にいい手を打ったし、民間側も冷静に動くことができた。いい例がつくれたのではないかと思います。

飯田)IAEA総会の基調講演のなかで、中国側が海洋放出を批判した際、高市さんが急遽現場で反論しましたが、あの辺りの動きも……。

中川)国際機関を使う手段は王道ですし、それだけではなく、「ホタテを食べよう」など国内向けのキャンペーンも張りました。官民でいい連携ができたと思います。

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