政治日程でみる消費税率引き下げ議論

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ニッポン放送報道部畑中デスクのニュースコラム「報道部畑中デスクの独り言」(第482回)

■公約実現? 市場の信認? ……消費税率引き下げは“賭け”か

「足元の物価高に鑑み、出来る限り早期に対応を講じる観点から、令和9年4月1日から2年間、軽減税率の対象となっている飲食料品に係る消費税率を1%とする。あわせて『働き控え』に早期に対応するとともに、中低所得の現役勤労者に手厚く対応する観点から、本制度の本格導入を先取りした取り組みとして、飲食料品に係る消費税1%相当分の範囲内で、現時点で公的機関が保有する所得情報を活用した『所得に連動したきめ細かな給付』を令和9年度に導入する。これらの取組みにより、全体として飲食料品に係る消費税の実質ゼロ化を実現する」

政治日程でみる消費税率引き下げ議論

国会議事堂

社会保障国民会議で最大の焦点となっていた消費税率の扱いについて、中間とりまとめは与野党の意見を「併記」の上、上記のような表現が盛り込まれました。また、この措置は令和11年(2029年)4月に、所得に連動する新たな給付制度を本格的に導入するまでのつなぎと位置付けられました。高市早苗首相が上記に沿った決断を下し、8月5日に閣議決定。秋の臨時国会での関連法成立を目指します。

消費税率期間限定の引き下げ、これがどのような効果をもたらすかは様々な見方があります。引き下げ容認派の考えは高市首相が減税を「悲願」とし、政権公約(「検討を加速する」という表現ではあったものの)にもなっていた消費税率引き下げが実現しなければ、「公約不履行」として政治不信がより高まるというもの。最近、コンビニやスーパーでも物価高を痛感する中、食事に関する値段が下がるのは確かにありがたい話ではあります。

一方、反対派からは税率引き下げで減少する税収の穴埋め=代替財源を懸念する声が聞かれます。中間とりまとめでは「市場の信認を損なうことのないよう、特例公債に頼らず、たとえば、補助金・租税特別措置の見直しや追加的な税外収入の確保など、歳出・歳入全般のあらゆる見直しを通じて確保することとし、令和9年度予算編成プロセスにおいて予算編成を具体化する中で結論を得る」となっています。高市首相も「税収動向などを見極めつつ、歳出、歳入両面の見直しを進める」と述べ、特別会計や基金などの活用による財源捻出をもくろみますが、具体的な穴埋め項目については触れていません。為替や国債市場に悪影響を及ぼさないかというわけです。

経済界でも経団連の筒井義信会長は閣議決定直前、記者団に対し、「国民目線と市場目線を重視して、財源の明確化をしっかりやってほしい」と述べています。

政治日程でみる消費税率引き下げ議論

社会保障国民会議 中間とりまとめ

■消費税率引き下げの期間、政治スケジュールを眺めてみると……

この消費税率引き下げの議論、政治日程という視点で見ると、いくつかのシナリオが見えてきます。

何よりも与党が参議院で過半数を割る中、関連法が今年秋と目される臨時国会で可決できるかが直近の焦点です。「副首都」構想関連法で賛成に回った新党みらいも、消費税減税については当初から反対の姿勢、賛成の意向を示す日本保守党を加えても参議院では過半数には足らず、ハードルは低くありません。

関連法が成立したとしても、令和9年(2027年)4月の消費税率引き下げ時に統一地方選挙、さらにその約3カ月後には参議院選挙が控えます。消費税率引き下げの効果がどう出るかは不透明ですが、少なくとも政権側は減税の実績を強調する選挙戦になるでしょう。特に参院選では勢力図がどうなるかが注目されます。

そして2年後の令和11年(2029年)4月に消費税は8%に戻る算段です。高市首相は元に戻すことを明言していますが、野党はこれを「再増税」として批判しています。
この時点で衆議院現職の任期は3年2カ月で満了まで残り10カ月。そこで思い出すのが12年前、2014年のできごとです。かつて政権与党だった民主党と自民・公明両党のいわゆる「三党合意」に基づき、この年の4月に消費税は8%に引き上げられました。しかし、その後景気は減速し、7~9月のGDP(国内総生産)の速報値が年率換算で1.6%のマイナスになりました。これを受け、安倍晋三首相(当時)は翌年2015年10月に予定された10%への消費税率引き上げを、1年半延期することとし、この判断の是非について国民の信を問うたのです。いわゆる「アベノミクス解散」。自民党は291議席を獲得し、長期政権へとつなげました。

さて高市政権、消費税率8%に戻る前後の経済状況によっては「いつか来た道」の如く、延期をもって信を問う解散もあり得るのではないか……、気の早い話でしょうか。

もちろん、政治は「一寸先は闇」……、今後3年の間に何が起こるかはわかりませんが、消費税についてはこれまでも選挙の大きな争点になってきました。2年後に税率を戻すと明言している高市首相ですが、この“約束”は守るのか?「アベノミクス解散の再来」となるのか? その前に参院選の結果はどうなるのか? ……今後、どんな政治状況が見えてくるのか注目です。

(了)

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