自動車メーカー、「背骨」となるクルマを考える【2】
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ニッポン放送報道部畑中デスクのニュースコラム「報道部畑中デスクの独り言」(第489回)
小欄でお伝えしている国内乗用車メーカーで「背骨」となるクルマ、その後半です。改めて独断と偏見での選抜であることをご容赦ください。
■「小・少・軽・短・美」を象徴するスズキの2車種

47万円の価格がインパクトを放ったスズキ・初代アルト
軽自動車を含む国内販売シェア2位の地歩を固めつつあるスズキ。「背骨」はアルトとワゴンRで異論はないでしょう。
軽自動車市場が規格改定などで過渡期にある中、排出ガス対策で後れをとっていたスズキ(当時は鈴木自動車工業)が1979年、47万円という全国統一価格を掲げた乾坤一擲のクルマがアルトでした。内外装とも極めてシンプルな仕上がりでしたが、生活の足としての本質を取り戻し、大ヒットを記録しました。軽の商用車「ボンネットバン」という新たな市場を開拓し、他社も同様のタイプ(ダイハツミラ・クオーレ、三菱ミニカ・エコノなど)で追随する結果となりました。
そして、1993年に投入された「ワゴンR」は背の高い「軽トールワゴン」というジャンルを確立しました。バブル崩壊後、これまたクルマに求められるものは何かを突き詰めた結果でした。現在、軽自動車はスペーシア、ジムニー(これも歴史は古い)、ハスラーなどのスーパーハイトワゴンとSUVが人気、また、軽自動車以外の登録車もソリオやクロスビーなど、ラインナップが充実する中、アルト、ワゴンRはやや陰に隠れた存在ですが、本質を追い求めたクルマとして、この2車種はスズキの金字塔と言えます。次期型の開発はどうあるべきか、関係者からは苦悩の声が聞こえてきますが、これからも本質を突き詰めてほしいと期待しています。
■軽のトップセラーを争うダイハツ……、意外な車種を“抜擢”

ダイハツ・ハイゼットカーゴ(現行)EVも追加された
ダイハツはかつてコンパーノベルリーナ、シャレードなどを生産し、存在感を示していました。現在はトヨタの完全子会社で主に軽自動車、コンパクトカー部門を担い、特に軽自動車市場はスズキとトップ争いを展開しています。軽乗用車の主力はムーヴ、タントなど。また、歴史をひも解くとフェロー、マックス、クオーレ、ミラ、エッセ、ミライースなどの系譜がありますが、ここでは意外な車種を挙げます。
1960年に初代がデビュー。現在はEV(電気自動車)版も投入しているのが軽トラック・バンのハイゼットです。トヨタ、SUBARU(スバル)にもOEM(相手先ブランド供給)を行っています。供給を受けるスバルでは車名はサンバー、かつては独自の存在感を放っていましたが、軽自動車撤退後はダイハツから供給を受けています。ハイゼットの最大のライバルはスズキ・キャリイですが、サンバー、キャリイともに初代デビューは1961年。ハイゼットは軽トラのみならず、現存する軽自動車の中で最も古い歴史を持つ車名なのです。
さて、もう一つは実は現存しておらず、いわば例外的存在、期待を込めてのクルマです。昨年のジャパン・モビリティショーでは軽四輪のEVが出展されていました。その名は「ミゼットX」。かつて一世を風靡したオート三輪の名車がミゼットでした。その後、四輪車「ミゼットⅡ」として一時復活しましたが、再び世に出れば、間違いなくダイハツの「背骨」の称号にふさわしいと思います。「ダイハツメイ」の実現なるか注目です。
■唯一無二、マツダが守る2つの「R」、SUBARUを支える3つの技術

マツダのロータリーEVシステム(コンセプト)
マツダは車名よりも“社名”を前面に押し出すメーカーです。2019年から海外仕様と同じく、国内仕様も車名(ペットネーム)を廃止し、乗用車(登録車)はほぼ英数字に統一しました。軽自動車のキャロル、商用車ではファミリアバン、ボンゴ、タイタンに往年の車名をとどめますが、これらは自社開発ではなく、他社からのOEMに切り替えられています。
「背骨」の一つは英数字の車名で唯一の例外、ロードスターで異論はないでしょう。トヨタとマツダの資本提携発表の際、トヨタの豊田章男社長(当時)にマツダで一番乗りたいクルマをたずねたところ、間髪入れず「ロードスター」と答えたことを思い出します。世界的評価も高く、マツダが大切にすべき車種の一つです。
さて、もう一つは……、悩みます。ファミリアの系譜を継ぐアクセラ→マツダ3か? 内燃機関にこだわった「SKYACTIV(スカイアクティブ)」技術をフル実装したSUVのCX-5か? 否、私はMX-30、その中の「ロータリーEV」を挙げます。三輪トラック・軽自動車主体だったマツダが乗用車本格参入の切り札としたのがロータリーエンジンでした。オイルショックの苦境など紆余曲折を経て、現在は発電用エンジンとして生き残っています。カーボンニュートラル燃料、排出ガス対策が進化を遂げれば、今後も活路はありそうです。
ROADSTARとROTARY……、これら2つの「R」を「背骨」と称したいと思います。

SUBARUの水平対向エンジン+ハイブリッドシステム(コンセプト)
続いてSUBARU(スバル)。熱烈なファンは「スバリスト」と呼ばれます。この言葉は1975年、スバルが発行する情報誌でユーザーである大学助教授が「スバルは紳士の乗り物」として投稿し、この呼称を提唱したのが始まりとされています。
クルマとしての2台を挙げるとすると……、スバル1000→レオーネ→レガシィの流れをくむステーションワゴンのレヴォーグに、スバルSUVの嚆矢であるフォレスターということになるでしょうか。スバル360を源流とする軽自動車は、現在はプレオプラス、ステラなどの車名は残るもののOEM車であり、自社開発からは撤退しています。
トレイルシーカーなどのEV、レイバックなどのSUV、スポーツカーのBRZ……、いまはスバルも10を超える車名を展開していますが、スバルも社名そのものが「背骨」と言えます。「中島飛行機」という飛行機メーカーを前身に持ち、現在も航空宇宙部門を有するスバルは独自の存在感を放ちます。自動車部門の象徴はもちろん水平対向エンジン、四輪駆動、それに運転支援システムの「アイサイト」です。この3つの経営資源をたゆまぬ改良と進化で続けていくことこそ、スバルの「背骨」を守っていくことになるのでしょう。
画像は両社の唯一無二の存在に敬意を込めて、クルマではなく、技術のカットモデルを掲載します。
■知名度がありながら消える車名が多い三菱……、しかし、これは健在だった!

7年ぶりに車名が復活 三菱・初代パジェロ
そして、最後は三菱自動車。7年ぶりに復活したパジェロは、象徴として間違いない存在です。一方、三菱も様々な車種が出ては消える歴史をたどりました。三菱自動車の前身、新三菱重工業が初めて乗用車に用いた車名はコルトでした(海外では継続中)。コルトのサブネームから始まったギャラン、高性能版の「エボリューション」を輩出し続けたランサーなどなど……、どれも現存していれば「背骨」の候補になっていたと思います。
さて、どうしたものか……、考えあぐねているうちに、ある車名を思い出しました。それは「デリカ」です。当初はトラック・バンの商用車として1968年に登場し、その後、乗用車版のワゴン(スターワゴン)が派生。現在は商用車の系譜は途絶えましたが、SUVミニバンの「D:5」、「D:2」(スズキ・ソリオのOEM)、「デリカミニ」(軽自動車は日産と共同開発)と大小3車種を展開し、堂々とその車名を守っています。
拡大が予定されるパジェロシリーズとともに、今後も引っ張っていく存在となるのか、一方でパジェロのみならず、往年の車名復活が多いのが三菱自動車の特徴です。それだけ歴史を大切にしているとも言えますが、パジェロに続く車名復活によって「背骨」の座が交代することもあり得ます。注目していきたいと思います。
各メーカーの「背骨」……、改めてまとめると次のようになります。
トヨタ…クラウン、カローラ
日産…スカイライン、フェアレディZ
ホンダ…シビック、Nシリーズ
スズキ…アルト、ワゴンR
ダイハツ…ハイゼット、ミゼット
マツダ…ロードスター、MX-30
SUBARU…レヴォーグ、フォレスター
三菱自動車…パジェロ、デリカ
いかがでしょうか。あくまでも小生が独断で勝手にピックアップしたもので、異論があるのも承知の上です。確実に言えるのはここに挙げたクルマは戦後の黎明期から70数年の日本車の歴史の中で、荒波を乗り越えてきたということです。その奮闘に敬意を表するとともに、これらをなくす時はクルマづくりをやめる時、僭越ながら各社にはそんな覚悟で「背骨」を守っていただきたいと思っています。
(了)





