特別警報、避難情報、2つの盲点【みんなの防災】
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ニッポン放送報道部畑中デスクのニュースコラム「報道部畑中デスクの独り言」(第490回)
千葉豪雨から1カ月が過ぎました。そのほか、北陸、名古屋でも浸水被害が相次ぎ、大雨災害に見舞われた夏。ニッポン放送では9月6日深夜(7日未明)に気象に関する特別番組も放送しました。今年の9月は敬老の日と秋分の日が近く、5連休の「シルバーウィーク」となりましたが、その間も台風の接近が見込まれます。早めの備えと警戒をお願いします。
さて、今年は新しい防災気象情報の運用も始まり、小欄でも詳細をお伝えしました。今回はレベル5特別警報と避難情報における2つの注意点を改めてお伝えします。
■特別警報の基準をおさらい

8月の千葉豪雨で起きた道路冠水
まずは最大級の警戒を必要とするレベル5特別警報。大雨に関するものは大雨、土砂災害、氾濫の3つです。実は特別警報の発表には定量的な基準があります。
レベル5大雨特別警報は
(1) 表面雨量指数で「災害がすでに発生している可能性が極めて高い値」以上となる1km四方の格子が概ね30個以上まとまって存在する」
(2) 流域雨量指数で「災害がすでに発生している可能性が極めて高い値」以上となる1km四方の格子が概ね20個以上まとまって存在する」
この(1)もしくは(2)を満たすと予想される状況で、激しい雨がさらに降り続くと予想される場合に発表されます。
レベル5土砂災害特別警報は「1時間雨量及び土壌雨量指数の組み合わせで、「災害がすでに発生している可能性が極めて高い値」以上となる1km四方の格子が概ね10個以上まとまって存在し、激しい雨がさらに降り続くと予想される場合」に発表されます。
レベル5氾濫特別警報は「水位が『河川の氾濫の起こる恐れが著しく大きくなる値』以上となり、かつその状況が継続すると予想される状況、もしくは氾濫は発生している状況」が発表の基準となります。
表面雨量指数は降った雨が地表にどれだけたまっているかを数値化したもの、土壌雨量指数は降った雨が土の中にどれだけしみ込んでいるかを数値化したものです。そして、流域雨量指数は川がからみます。降った雨が地表や地中を通って河川に流れ出し、河川に沿って流れ下る量を数値したものです。
各種雨量指数の計算方法などの詳しい言及はここでは避けますが、注目すべきは発表の基準となる「広さ」です。大雨特別警報は基準を超える箇所が大まかに言って20~30平方km以上、土砂災害特別警報は10平方km以上の広がりがないと発表されません。東京都内では例えば千代田区は約11.66平方km、中央区10.21平方kmです。つまり、千代田区だけ、中央区だけで「災害がすでに発生している可能性が極めて高い値」が計測されても、単独の特別警報には至らないということになります。特別警報が出ていなくても、災害が迫っている場所はあり得るわけです。レベル4のうちに「避難を終える」とする意味の一つがここにあります。
こうした狭い地域で最大級の警戒をすべき場所を知る情報としてキキクルがあります。キキクルはかつて「危険度分布」と呼ばれていました。土砂災害、浸水、洪水の3つの災害の危険度を5段階に色分けして表示するもので、特に3の赤は「警戒」、4の紫が「危険」、5の黒が「災害切迫」となっています。

8月13日午後5時50分の浸水キキクル 千葉県内で黒の「災害切迫」の地点がすでに点在している(気象庁資料から)
先月の千葉豪雨でレベル大雨特別警報が県内で初めて発表されたのは8月13日午後7時30分でしたが、1時間以上前の午後5時50分にはキキクルに黒の「災害切迫」が点在していました。特別警報発表前でも、狭い地域で黒の「災害切迫」が表示されるキキクルは文字通り危険度を示すものとして、避難の目安として有効な情報です。

午後7時30分、レベル5大雨特別警報発表時には千葉県内で黒の地点がここまで広がった(気象庁資料から)
■土砂災害警戒区域が指定されるのは人が住んでいる場所
8月13日午後5時50分の浸水キキクル 千葉県内で黒の「災害切迫」の地点がすでに点在している(気象庁資料から)続いて、避難情報です。これは各種警報を目安として自治体が発令するものです。レベル3警報であれば高齢者避難、レベル4危険警報であれば避難指示、レベル5特別警報であれば緊急安全確保を出す判断の目安となります。
さらに、内閣府の避難情報ガイドラインでは「避難情報の発令対象区域は可能な限り絞り込むことが重要」と記されています。発令対象区域を絞らないことで、いわゆる「オオカミ少年化」することを避けるためです。ただ、これまでの災害の経緯も考慮し、あえて「全域避難」を指示する自治体もあります。自治体独自の判断で間違いとは言えません。これらは6月の新防災気象情報運用開始直後にも小欄でお伝えしました。
ガイドラインが示す「災害リスクが想定される地域」は土砂災害警戒区域(特別区域含む)、洪水・浸水想定区域です。お住まいや職場のハザードマップで確認いただけます。
ここで注意していただきたいのは土砂災害警戒区域です。国土交通省の定義では「現在人家等が存在する、または将来人家等の立地が予想される箇所」となっています。例えば、裏山で人が住んでいない場所、山あいの道路、谷川や沢などは危険性が高くても土砂災害警戒区域にはならないのです。
台風や大雨は時を選びません。深夜や未明に襲ってくることもあります。ニッポン放送の特別番組では、暗い中、外に出るのが危険な場合は建物の中に留まるのも「避難」として、建物の2階以上、がけや急斜面から遠い場所に移動する「垂直避難」が一つの方法とお伝えしました。仮に避難所に避難する場合も、移動するまでの間に危険は潜んでいます。心がけておくことは一つ、普段から避難所へ移動するまでの安全なルートを決めておくことです。
この土砂災害警戒区域、国土交通省によれば、2026年6月末時点で、全国で72万カ所あまりと推定されます。東京都では1万5000カ所超に上ります。思えば、日本の地名には「●●谷」「●●坂」と呼ばれる場所が多くあります。それだけ斜面があるということです。
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改めて感じるのはどんなに情報がきめ細かくなろうと、完全ではないということです。以前、小欄でもお伝えした通り、“五感”を働かせて危険を察知できるよう、感覚を研ぎ澄ませること。土砂災害であれば、例えば「音」です。普段聞きなれない大きな音や異様な音が聞こえることがあります、山間部や裏山、急斜面の場所で山鳴りや石がぶつかる音が聞こえれば、土石流の前兆である可能性があります。
災害はいつ襲ってくるかわかりません。時には自らの判断で命の守る行動が求められます。
(了)





