今年の夏も「異常気象」……、専門家が見解示す【みんなの防災】

By -  公開:  更新:

ニッポン放送報道部畑中デスクのニュースコラム「報道部畑中デスクの独り言」(第486回)

今年の夏も「異常気象」……、専門家が見解示す【みんなの防災】

気象庁・異常気象分析検討会後の記者会見(中央が中村尚会長)

■地震、酷暑、台風、豪雨……、あらゆる現象が起きた今年の夏

9月に入りました。ニッポン放送では今週「防災ウィーク」を展開しています。

今年の夏は厳しい暑さになりました。今年から新設された最高気温40度以上の呼称「酷暑日」は延べ36地点で観測。西日本では8月の九州北部の降水量が1946年の統計開始以降最少となるなど、雨の少ない状態が続き、各地のダムの貯水量に影響を与えました。

7月28日には最大震度7を観測した熊本地震がありました。台風は15号が東から西に進む異例のコースをたどり、8月11日に初めて茨城県に上陸しました。そして「千葉豪雨」、富山・石川・福井の「北陸豪雨」は台風接近を伴わない大雨災害として衝撃を与えました。被災地ではまだまだつめ跡が残っている所があります。改めてお見舞い申し上げます。

気象庁では先日、専門家を交えた異常気象分析検討会が開かれました。中村尚会長(東京大学名誉教授)は検討会後の記者会見で、西日本の高温や九州北部の少雨、千葉豪雨について、数値データを基に「非常にまれな現象であることは間違いない。異常気象と呼んで差し支えない」と述べました。

■千葉豪雨で予測できなかった線状降水帯

8月13日から14日に起きた千葉豪雨では「レベル5大雨特別警報」「レベル5土砂災害特別警報」が千葉県内で相次いで発表され、半日に満たない短い期間で大雨となりました。1時間に降った雨が千葉市で115ミリに達するなど、県内の複数の地点で観測史上1位を記録しました。

原因については日本の南の海上でできた「モンスーンジャイア」と呼ばれる巨大な低気圧と、東の海上の高気圧の縁を回る湿った空気、それに、「寒冷渦」と呼ばれる上空の寒気の南下が寄与したとみられます。

今年の夏も「異常気象」……、専門家が見解示す【みんなの防災】

2026年夏後半の大気の流れの模式図(気象庁資料から)

加えて、線状降水帯の発生が被害を広げることになりましたが、気象庁はこれを予測できませんでした。上空の寒気、海からの湿った空気により、大雨の強度そのものは予測していたものの、地表付近の冷気層(冷たい空気)の広がりを十分予想できなかったということです。

千葉の豪雨がある前には埼玉県などで大雨があり、各地でレベル4危険警報が発表されていました。東京都内でも一部の河川に「レベル4氾濫危険警報」が出され、私も社内で情報整理・出稿作業にあたっていました。そして、千葉にレベル5特別警報が発表され、深夜、現地に向かいました。先の小欄でお伝えした通りです。

このように、日中は埼玉など関東内陸部に雨域の中心がありました。冷気層はその大雨が残したもので、千葉にも広がったというわけです。東からの暖かく湿った空気はこの冷気層に乗り上げて上昇し、積乱雲を形成しました。さらに、降った雨の冷たさとともに、蒸発により気化熱が奪われて(皮膚が水に触れるとヒンヤリするあれです)空気が冷やされました。水蒸気が凝結する度合いも高まり、降水が強まりました。

解析雨量と降水予測を見ると一目瞭然で、8月13日午後5時から6時の解析雨量では強い雨域が千葉県にかかっていますが、降水予測ではかかっておらず、場所にずれが生じています。予報技術が進化しても、線状降水帯予測についてはまだまだ途上にあるのが現状です。

気象庁によれば、予測が当たった「適中率」は線状降水帯半日前予測では運用開始前の想定で25%程度のところ約15%、今後3時間以内の発生を予測する直前予測では想定50%程度のところ、約30%となっています。一方、線状降水帯が発生する前に予測できた「捕捉率」は半日前予測の想定50%程度が、実際は約47%、直前予測では想定80%程度のところ、約62%となっています。(いずれも8月30日時点)。いずれも想定には達していません。直前予測は今年5月から発表を開始し、気象庁ではきめ細かい情報発信に努めていますが、今後はAIモデルなども活用し、予測精度を上げていきたいとしています。

今年の夏も「異常気象」……、専門家が見解示す【みんなの防災】

千葉豪雨では解析雨量と降水予測との間にずれがみられた(気象庁資料から)

■秋に向けて、日ごろからの備えを

現在は台風24号が接近しています。さらに南から高気圧の縁を回る暖かく湿った空気、北東からの冷たい風により、日本付近に横たわる秋雨前線が活発になる恐れがあります。影響は長引き、台風の進路から離れた地域でも今週後半から週明けにかけて厳重な警戒が必要です。

検討会の中村会長はこの夏の異常気象を受け、「過去の経験や常識が通用しづらくなっている」と話していました。レベル4危険警報が発表されたら、自治体からの避難情報に注意すると同時に、自らも“五感”を働かせて危険を察知できるよう、感覚を研ぎ澄ませることが求められます。そして、線状降水帯はどこでも起きる可能性があるということを念頭に、早めの備えが必要です。

(了)

Page top