「パジェロ」7年ぶり復活。三菱自動車、ブランド構築を急ぐ

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ニッポン放送報道部畑中デスクのニュースコラム「報道部畑中デスクの独り言」(第487回)

復活のベールを脱いだ往年の看板車種は堂々としたたたずまいでした。

大型SUV「新型パジェロ」がついに世界初公開。品川駅からほど近い東京・高輪のホテルの発表会場は海外のメディアも駆けつけ、熱気に包まれました。

「パジェロ」7年ぶり復活。三菱自動車、ブランド構築を急ぐ

新型パジェロと岸浦社長

■堂々としたフラッグシップ……、小型版2車種も今後投入し「パジェロシリーズ」展開へ

「三菱自動車ブランドをけん引するフラッグシップモデル。技術の粋を集め、もてるすべてを注ぎ込んだ。新型パジェロで新しい冒険の物語を始めたい」

発表会で三菱自動車の岸浦恵介社長は、新型の狙いをこのように強調しました。

パジェロは1982年に初代がデビュー。当時はレジャー向けの車両をRV(レクリエーショナル・ビークル)と呼んでいましたが、RVブームとダカールラリーの活躍で、オフロード車として人気を博しました。これまでの世界生産台数は329万台に上ります。しかし、その後の販売不振に加え、合理化の流れの中で、2019年には国内向けの生産を終えていました。

自動車メーカーには経営状況がどうであれ、「背骨」となるクルマ、「シンボル」としてなくてはならないクルマというものは存在すると思います。三菱自動車にはギャラン、ランサーエボリューションなど、時代を彩ったクルマが少なくありませんが。背骨、シンボルとしてふさわしいクルマはやはりパジェロではないか……、顧客からは復活を求める声が多くあがっていたといいます。岸浦社長も発表会後の質疑応答で、パジェロを「三菱車とイメージした時に最も思い浮かべるクルマ」と語っていました。

「パジェロ」7年ぶり復活。三菱自動車、ブランド構築を急ぐ

東京・高輪のホテルで開かれた発表会

新型パジェロはラリーで培った経験を基に、剛性の高いはしご型のフレーム、環境面に配慮したクリーンディーゼルエンジンを搭載。さらに、道路の状況に合わせて7つの走行モードが設定されています。パジェロのDNAとも言える要素ですが、電動化の可能性について岸浦社長は「ニーズに合わせて最適なパワートレインを開発し、準備していきたい」と将来に含みを残しました。自らも試乗したということで、「オフロードの凸凹した所でも車体がぐらぐらしない。(競合モデルと比べて)言葉ではなかなか言えないほどのレベルの違いを感じた」と、強い自信を示していました。

三菱では今後、コンパクト、スモールの2つの車種を追加し、「パジェロシリーズ」として展開する方針です。以前はコンパクトサイズの「パジェロイオ」、軽自動車の「パジェロミニ」が存在していましたが、これに準ずるラインナップが予想されます。

車両価格は10月に発表され、国内発売は12月の予定です。パジェロはメディア関係者の中にもファンが多いようで、一層の関心が集まっていました。一方、7年のブランクで存在を知らないユーザーもいます。そういった層にどうアピールし、ブランクを埋めていくかも注目です。

「パジェロ」7年ぶり復活。三菱自動車、ブランド構築を急ぐ

左:水平基調で堂々とした上質な室内
右:シフトスイッチは武骨さを感じさせる

■ワイルドさと上質感……、オフロードSUVのバランスに腐心

クルマに乗り込んでみます。さすが全長5mに迫るサイズは堂々としたもの。ドアも厚く、ガッチリしています。ステップも高く、前席・後席ともアシストグリップをつかみながら「よいしょっ」と乗り込む形になります。

室内は上質そのもの。インパネ表面、コンソール、ドアトリムにはソフト素材があしらわれています。着座位置は高く、見下ろす形の運転となりますが、計器類、ナビ画面は薄型の大型ディスプレイがインパネの運転席側から中央にかけて整然と収まっており、圧迫感はあまりありません。歴代モデルに備わっていた高度計はディスプレイに組み込まれます。エアコン操作など物理スイッチは残しながらも、スイッチ類はほどよく整理されてゴチャついた感じはなく、キャメルと濃灰色のツートーンの内装は乗員を豊かな気分にさせてくれそうです。

「パジェロ」7年ぶり復活。三菱自動車、ブランド構築を急ぐ

会場の外では登坂能力の高さをアピールしていた

一方、パジェロと言えば、オフロード車ということで、ワイルドなイメージがありました。最近はオフロードSUVでも高級感ある内装は珍しくありませんが、上質であればあるほど、泥などをつけて乗り込むのが申し訳ない気分にもなります。「ワイルドさと上質感」……、ややもすると二律背反の関係になりがちな両者のバランスについては商品企画担当者も「企画・開発の各ステップで議論し、苦心したポイント」と話します。その上で出した結論は「パジェロの思想を、現在の技術と感性で解釈し直して継承するアプローチの徹底」だったそうです。

デザイン担当者は上質さを追求しながらも、内装は汚れが目立ちにくい色を徹底的に検証し、砂漠の砂や泥が付着しても目立ちにくく、拭き取りやすい素材を選んだとしています。インパネのソフト素材についても、高級感の演出だけでなく、悪路走行で同乗者が車内で体をぶつけても、けがを防ぐ「安全装置」としての機能を果たしていると強調していました。

そう言えば、室内は柔らかな雰囲気の中にもインパネ、シフトスイッチ、ドアハンドルなどは直線的なデザインが施され、武骨さも感じました。

「パジェロ」7年ぶり復活。三菱自動車、ブランド構築を急ぐ

歴代パジェロも勢ぞろい

■ブランド力強化に向けて……、一層の「コトづくり」を求む!

三菱自動車では2030年度の国内販売台数を24年度の1.5倍にする目標を掲げており、パジェロの復活で達成を後押ししたい考えです。世界でも約100カ国で販売する予定です。

「一番はブランドを強化すること。われわれが強みとするべきところをさらに尖らせる」

5月の中長期ビジョン発表でもあった岸浦社長の発言から感じるのは、ブランド力構築を急ぐ姿勢です。三菱自動車は東南アジア諸国に強みを持ちますが、この市場も中国勢の台頭で競争が激しくなってきました。そこで重要なのは価格だけでなく「存在感」であり、ブランド力の強化と考えているようです。

「パジェロ」7年ぶり復活。三菱自動車、ブランド構築を急ぐ

7年ぶりの復活でブランクは埋められるか

ブランドというと思い当たることがあります。往年のパジェロは「パジェロ製造」という岐阜県坂祝町にある工場で生産されていました。坂祝町も当時「パジェロの町」として知られており、廃止が取り沙汰された際も地元などから撤回運動があがるほどでした。しかし、2021年に海外向け生産も終了し、工場は閉鎖されました。

ラリーでの活躍とともに、「専用工房」ともいえるパジェロ製造での生産は、それ自体がパジェロブランドの構築に一役買っていたと思います。今回の新型パジェロはタイ生産。もちろん品質面で問題はないでしょうが、例えば工場を「パジェロファクトリー」「パジェロコーナー」と名付けるなど、製造過程にも一段の工夫があってもいいのではないか……、いわば「コトづくり」としての取り組みです(こうしたことは意図してか否か、日産自動車が上手い気がします)。

ブランド力向上に向けて、フラッグシップに与えられた役割であると思います。

(了)

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