その手があったか! 自動車産業とロボット産業の融合
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ニッポン放送報道部畑中デスクのニュースコラム「報道部畑中デスクの独り言」(第478回)
■足取りしっかり……、「ヒト型ロボット」が自立歩行でお目見え
ドス、ドス、ドス……

三菱自動車のショールームにお目見えしたヒト型ロボット(7月9日撮影)
東京都港区の三菱自動車のショールーム、わきの黒いカーテンがサッと開かれ、ヒューマノイド=ヒト型ロボットがお目見えしました。機械的ながらもしっかりした足取りで展示車の「アウトランダー」の前に立ちます。男性スタッフが付き添ってはいましたが、全くの「自立二足歩行」。遠くから見ると、Tシャツを着たロボットは付き添いの人間と見まがうほどでした。
三菱自動車がロボット開発企業と協業に関する基本合意を結び、工場で活用するヒト型ロボットの共同開発と量産化を進めることになりました。協業する企業は「ハイランダーズ」という東京大学発のスタートアップ企業です。
「ヒトとロボットがともに働く新しい産業基盤の実現を目指す」
「一社の挑戦ではなく、日本の産業の力を次の時代につなぐための挑戦」
記者会見で三菱自動車の加藤隆雄CEOとハイランダーズの増岡宏哉CEOからは、日本の国力増強を見据えた発言がありました。

ヒト型ロボット、フィジカルAI 開発の必要性を訴える増岡CEO
■ヒト型ロボット、フィジカルAI……、日本の先駆者から世界へ
両社に共通しているキーワードは「労働力不足」。増岡CEOによれば、日本の人口減少は1年間に90万人のペースで進んでいるといいます。「あらゆる産業の成長が止まり、インフラも維持できなくなっていく。ゆっくりと死んでいく日本に残された子どもの人生がこのままでは真っ暗になってしまう」と増岡CEOは強い危機感を示します。
加藤CEOも日本の製造業では生産現場で労働力不足への対応が喫緊の課題だとし、「熟練工のノウハウをしっかりと伝承する態勢を整えていかないといけない」と訴えます。両社の問題意識、課題を解決する策がロボット開発における協業だったというわけです。
ヒト型ロボットは「N」と名付けられ、身長は成人男性に近い身長170cmあまり。「N」とは第四世代の開発機体ということでローマ数字の「ⅳ」をつなげたもの、このほか日本(=Nippon)、人間(=Ningen)、人々の願い(=Negai)の「N」も込めたと言います。遊休状態にある三菱自動車の京都工場で2027年の早い時期に量産を始めることを検討しており、将来的に1カ月当たり1000台の量産を目指します。

加藤CEO(右)と増岡CEO(左)
もう一つのキーワードは「国産開発によるフィジカルAI」。AI=人工知能に関するニュースを見ない、聞かない日はなく、日本政府も成長戦略17分野の一つと位置付けていますが、中でも物体を動かすフィジカルAIは今後の成長分野として注目されています。一方で、増岡CEOは、労働力不足を補うはずの無人化技術が海外製に大きく依存していると指摘します。「日本が一国として独立し続けるためには、日本のロボットの手で日本の産業を守っていく必要がある。フィジカルAIこそが人口が減り続ける日本の救世主になろうとしている」と強調しました。
三菱自動車はこれまでハイランダーズへの出資を実施してきましたが、今回、自社工場を活用したロボットの量産化に踏み込むことで、将来的に出資も増やし、強固な関係を築いていく構えです。両社によると、国産の開発によるヒト型ロボットの量産化は初めてで、加藤CEOは「日本で量産化するという点で、我々は(国内の)トップバッター」と胸を張り、増岡CEOは「フィジカルAIで世界のビックテック企業に対抗できるような日本のプレーヤーはまだ存在していない」と意欲を示していました。
実際の用途ですが、ロボット開発に関わるデータを収集した上で、自動車工場での活用を目指します。増岡CEOは「優先順位は荷役作業や人間のリスクが伴うところ」と話し、単純作業の導入から可能性を探っていく考えですが、フィジカルAIは様々な学習をして進化していくもの。加藤CEOは「工場の中ではいろんな作業がある」として、部品の運搬のほか、ボルトの締め付け、溶接などを例に挙げ、様々な活用に期待を示していました。

ヒト型ロボット「N」、四足歩行ロボットとともに(写真奥)
■余剰生産の補完、必要だった量産拠点……、win winの関係
記者会見を取材して、「こんな手があったか!」というのが正直な感想です。労働力不足もさることながら、人口減少で自動車の国内需要は頭打ちの状態です。一方、コスト削減やグローバル化の流れで海外生産は拡大し、国内で余剰となっている工場も少なくありません。ひと昔前、斜陽産業に数えられた造船業では、工場で船舶の代わりにキノコを栽培していたという笑えない話がありましたが、今回の取り組みは、余剰生産拠点を最新鋭技術の製品に活用し、その製品を車両の生産にも役立てるという「一石二鳥」の策と言えます。
三菱自動車の5月の中長期ビジョンではこの取り組みは示されていませんでした。「どの程度の大きさになるのか、まだ難しい」(加藤CEO)というのが、明示されなかった理由と思われます。大量のロボットでシステム化されれば、セキュリティなどの課題も出てくるでしょうが、「バリューチェーン戦略」の一種として成長の芽を感じました。
なお、三菱自動車と言えばやはり気になるのが「アライアンス」の関係、この取り組みが日産自動車と関わってくるのかという質問も相次ぎました。加藤CEOは今回の協業は「三菱単独のもの。アライアンスの使用は全然話はしていない」と明言した上で、「まず、我々が使えるようにしっかり確認して、使っていける確信ができたら、他社にも声をかけてもいいのではないか」と話していました。国内の自動車産業では規模は小さいながら、ある種のしたたかさを感じます。日産は件の経営再建により、追浜工場での2027年度末の車両生産終了を発表。その処遇はまだ明らかになっていませんが、こんな「win win」の知恵もヒントになるのではないでしょうか。
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ロボットと言えば、私事ですが学生時代に取得した資格があります。それは「産業用ロボット取扱者」。周囲の安全を確認した上でスイッチを入れたり、操作するという資格です。学生として資格を一つはとっておきたいという気持ちで、「特別教育」なる数日間の講習で取得したものですが、あれから40年近く。複雑化したロボットの世界で、この資格はまだ有効だろうか……、そんなことを思い出しました。
(了)





