数量政策学者の高橋洋一が10月12日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。「総合経済対策で大胆な対策を前倒しする」という政府の方針について解説した。
政府、総合経済対策で大胆な対策を前倒しする方針
政府が10月にまとめる総合経済対策をめぐって10月11日、岸田文雄総理大臣は自民党の茂木敏充幹事長と会談した。大胆な対策を月末を待たずにできるだけ前倒ししてとりまとめる方針を確認した。
飯田)具体策としては、子ども食堂や生活困窮者に食品を提供する「フードバンク」への支援事業の拡充や、子どもの居場所づくりを考えるモデル事業の創設などを盛り込む考えを示したということです。
まずはGDPギャップを埋める ~埋めれば失業率が下がる
高橋)こういう対策をつくるときに、どのようなプロセスで行うかということを、マスコミの人もわかっていないのでしょうか。何か記事を書きたいから、個別の話からいくでしょう。でも役所からみると、個別のものを積み上げて説明するのだけれど、総合経済対策の場合はあまりよくありません。最初に需給ギャップ(GDPギャップ)があって、それを埋めるという考えがまずあります。埋めなければ失業者が出るだけです。
飯田)需給ギャップ(GDPギャップ)というのは、需要と供給のマッチングで……。
高橋)その差ね。
飯田)差の部分。
高橋)総供給と一緒になるのがいいのです。そうなると、あまり失業が発生しない。
飯田)特に日本の場合は、需要の部分がいま冷え込んでいるから。
高橋)需要が少なすぎるのです。
飯田)供給する能力は高い。
高橋)海外がインフレになるのは需要が大きくて、供給を上回っているからインフレになるのです。
飯田)コロナ禍のあとで、「いま使うぞ」とみんな使ったから。
高橋)どちらかと言うと、対策が多いからなのですけれど。
飯田)経済対策が積極的に行われている。
GDPギャップを埋めるためには30兆円の経済対策が必要 ~外為特会の埋蔵金と国債費の埋蔵金で50兆円はすぐに出てくる
高橋)しかし日本の場合は、まだ需給ギャップ(GDPギャップ)がかなりあって、内閣府の計算だと約17兆円あるということです。ただ、内閣府は総供給を低めに見積もっているから、総供給を真面目に見積もると、たぶん30兆円くらいです。
飯田)だいたい30兆円くらい。
高橋)30兆円くらいの真水で経済対策を行うことを、最初は考えるのです。そうすると「財源が」と言うでしょう。「財源が」と言われたら簡単で、いまであれば短期的な1~2年の対策だから、恒久財源を用意する必要はなく、埋蔵金で対応できるのです。外為特会の埋蔵金と国債費の埋蔵金を取り出せば、50兆円くらいはすぐ出てしまいます。
飯田)50兆円も出るのですね。
高橋)そこから話をすることが大切です。私が経済対策のアドバイスをしているときは、いつもこういう話をしました。
外為特会の含み益約37兆円を経済対策の財源にすることはできる ~2005年にも「埋蔵金」60兆円を経済対策の財源に
飯田)所信表明演説があり、それに対して各党の代表質問が行われました。国民民主党の玉木雄一郎代表は、まさに外為特会の含み益が出ている話をしています。
高橋)外為特会で外債を持っているのだから、含み益だけで40兆円近くあるのは間違いありません。それに対して、「それはできない」と言ったでしょう。しかし、私は2005年くらいの時代に埋蔵金男と言われましたが、そのときにやっているのです。当時は、確か埋蔵金を60兆円出したと思います。
飯田)60兆円。
高橋)だから小泉純一郎元首相も「増税しない」と言い切ってしまったのだけれど。
飯田)消費増税はしないのだと。
高橋)「自分のときには」と言ってね。
37兆円の含み益
飯田)外国為替の特別会計、例えばアメリカの国債などを持っていると、いまの円安は含み益がたくさん出てくるということになるわけですよね?
高橋)外債投資をしている人からみれば、いままで投資していて円安になったら、儲かるに決まっているでしょう。それと同じです。
飯田)円高のときにドルを買って、円を売る形で介入したときにアメリカの国債を買ったと。あの当時は円高だから……。
高橋)だいたい円高なのだけれど、いまの外債の平均取得価格の為替レートは約100円です。
飯田)100円。
高橋)いまは140円だから、3割以上は差益が出ています。
飯田)玉木さんは「ざっくりとした計算ですけれど」と言いながら、「37兆円くらいあるぞ」と。
高橋)あれは役所から資料をもらっているはずです。資料をもらっていなくても、だいたいの数字はわかりますが。
飯田)しかし国会でやるとなったら、はっきりとした数字も取り寄せながら提示した。
経済対策の財源に「できないことはない」
高橋)現在の単純計算ですが、含み益を出しているはずです。玉木さんの質問に対して、岸田総理は「できない」と言いましたが、2005年ごろの埋蔵金と同じ理論なので、論破することは簡単です。
飯田)できないというのは、「いますぐ国債を全部は売れないでしょう」というような議論で。
高橋)いくらでも解決策があります。2005年のときもまったく同じ議論になりましたが、私が財務省に言い返し、「他にはないか」と言ったら(質問が)なくなってしまったから、小泉さんに持っていって承諾されたのです。
飯田)「お金に色はついていない」ということと関係しますね。
高橋)岸田総理はあのように言っていますが、予算委員会でどんどんやればいいのです。そうしたら詰まると思いますよ。20年以上前にも同じようなことを言っているのだから、これはダメですよね。
飯田)しかも、小泉さんのときに一度「埋蔵金」を使って政策を打ったことがある。
高橋)そうです。だから使えるのです。
飯田)あと財源があるのならば、メニューの問題ですか?
高橋)それは政治家が好きにやればいいのです。私は財源まで用意して、あとは口を挟まないようにしていました。だって、政治家が(何をするか)楽しみでしょう。
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