とりあえず「注視する」と言っているだけの岸田政権 エネルギー問題の解決に向け「足りないこと」

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前日本銀行政策委員会審議委員でPwCコンサルティング合同会社チーフエコノミストの片岡剛士が10月10日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。日本のエネルギー問題解決に向けた岸田政権の課題について解説した。

とりあえず「注視する」と言っているだけの岸田政権 エネルギー問題の解決に向け「足りないこと」

2022年10月4日 岸田政権発足1年の受け止めについての会見 記者の質問に答える岸田総理 ~首相官邸HPより https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/actions/202210/04bura2.html

プーチン大統領がサハリン1をロシアの新設会社に移管する大統領令に署名

プーチン大統領は10月7日、日本政府や企業も参画してロシア極東サハリン沖で行われているエネルギー開発事業サハリン1について、ロシア政府が新設する会社に事業を移管する大統領令に署名した。日本の商社が出資するサハリン2に続く措置で、日本側は事業を続けるかどうかの判断が求められる。

飯田)設立後1か月以内に出資するか決めろというようなことを言ってきているようですけれども、あの手この手でいろいろとプレッシャーをかけてきますね。

片岡)そうですね。この手の問題というのは非常に難しいと思うのですけれども、私自身は2つ考えることがあると思っています。1つは日本としてみた場合にやはり原油の調達先というのは中東しかないのです。中東からの原油が途絶してしまった場合に基本的に日本は非常な意味でエネルギー不足に悩まされるという。こういった問題をどう解決するかという話が1つです。

それからそうしたものを進めるためには、今回のロシアの件もそうですがいろいろなところから調達をするという話になるわけです。これは平和が前提なのです。国際関係が安定しているということに日本はコミットし続けないと、結果的に自分たちの安全保障ないしはエネルギーなどがめぐりめぐって大きな影響を受けるという話なのです。これは30年前とか40年前とか、そういった時期からずっと日本では断続的に話題になっているという。最近私自身がそのことを非常に強く感じたのは、小室直樹さんの『危機の構造』という本があるのですが、最近再刊されていまして、別にこれを宣伝するつもりはないのですが、このなかでいわゆるオイルショックの話を書いています。まさにいま私がお話したような1つの特定の地域からエネルギーを供給しているという問題とそれから多極化するには平和、安全保障が前提という話は小室さんもおっしゃっているのです。

この問題はずっと日本の大きな問題であるにもかかわらずなかなか抜本的な解決策がとられていない。こうした話が問題として起こると日本人はそのときは覚えるのですけれども、すぐ忘れるのです。健忘症みたいなところも含めて問題の構図というのはぜんぜん変わっていないなというところはとても感じるニュースだと思っています。

飯田)特に調達先をとりあえず分散させるというところで、各企業としてもいろいろな努力をしてきたという。天然ガスで言えばカタールだけではなくてインドネシアであったりマレーシア、オーストラリアであったりということになっていますが、他方2つ目の国際平和にどうコミットするかという辺りはなかなか苦手だったりしますよね。

片岡)そうですね。どうしても日本の場合ですと自分の庭先の部分に対しては非常に注目しやすいのですが、ただぜんぜん違う地域の予想もしないところからの影響というのがまわりまわって日本のまわりに大きな問題をもたらすのです。そういう話を我々はいまウクライナの情勢でそういったものを体験しているわけですよね。だからそういう意味で言うと、ちょっとした変化に対して日本としては敏感にならなければいけないわけです。その辺りのところというのが今回のニュースでものんびり構えているとまわりまわってこういう話になってくるということなのですよね。

飯田)国際社会のところでどう対処していくのかというと、個別具体的な話よりも価値観などを掲げてやらなければならないとか。それこそ第2次安倍政権は日本で初めてと言っていいくらいそれを掲げようとしたというところがあるかもしれないですよね。

とりあえず「注視する」と言っているだけの岸田政権 エネルギー問題の解決に向け「足りないこと」

ロシア・サハリン州の液化天然ガス基地(上)から運搬船に延びるパイプ=2009年(共同) 写真提供:共同通信社

「注視する」と言っているだけでは問題の解決にはつながらない 問われる岸田政権のビジョン

片岡)そうですね。そういう意味では岸田政権のビジョンというのが非常に問われているわけですよね。私の個人的な印象でいえば、ずっとどんな問題に関しても「注視する」ということを言っていれば切り抜けられるというようにとれてしまう部分があるのです。特に安全保障問題とか足元の経済動向というところで、とりあえず「注視します」という話が多く出てきている気がするのですが、こうして「注視する」という話をしているだけでは当然問題の解決にはつながらないのです。

今回のエネルギー問題の話についても短期的な対応として何をすべきなのかということと、それから中長期的なエネルギーの供給構造をどうするのか。最終的に省エネを進めるとかグリーン化を進めるのであれば、どういうかたちでエネルギー政策をミックスさせていくべきなのか。やはりこういうところと例えばそのために必要な経済開発、エネルギー開発、技術協力の在り方、こういう話を一気通貫でしっかり点検するべきだと思います。

飯田)エネルギーの話で言えばグリーンの方にふれるとしてその供給源は何なのだという。太陽光なのか地熱とかを使うのか、あるいは原子力というのも当然視野には入ってくるでしょうし。

片岡)そうですね。

飯田)それを排除するのであればどうするのだという具体策が必要ですよね。

片岡)あとはそうしたことを考えるときにはやはり日本の地理的な特徴というものを考える必要がありますよね。例えば太陽光のパネルみたいな話については日本の場合は平地が少ないのでなかなか設置できないですよね。風力に関しても景観の問題もありますし、あとは安定的に電力を供給できるかと言われれば、太陽光といったような話は特に安定的にはなかなか電力供給はできないですよね。

飯田)2021年冬などに問題になったのはそこですよね。

片岡)そうですね。これは安定的に供給できないのに加えて電力価格がより高くなるという。そういう側面もあって、そうすると製造業などにとってみるとコストが上がってしまうわけです。ただでさえエネルギーのコストというのは、日本は諸外国に比べて電力費用が高いわけです。これがそれ以上上がってしまうと経済全体の効率性というのを大きく損なうことにつながります。私自身エネルギーの問題というのは非常に難しい要素をはらんでいると思うのですけれども、「省エネを進めます」というと確かにグリーン化という部分で人々のQOLというのは上がるかもしれません。満足度は上がるのかもしれません。ただそれによって経済を大きく犠牲にしてしまうと、そういったもの全体をふまえた日本国全体の経済構成はやはり大きく低下するのではないか。要はバランスが必要なのです。そういったところをふまえてどうするのかというところを考えなくてはいけないので、いろいろな境界領域ですから専門分野の方が集まって解決策を考えていく必要があるなと思います。

飯田)そしてその足元の経済の強さみたいなものも安全保障に影響してきたりします。

片岡)そうなのですよ。特に東アジアのなかでの中国の位置づけがなぜこんなに高まったのかということを考えれば一目瞭然というか、経済はとても大事ですよね。日本の場合はぼんやりしていたら20年停滞してしまって、どんどん追い抜かれるという構図になっていますが、そういったところが結果的に安全保障のプレッシャーが強まるなどという話にもなるわけです。軍備などの分野についても日本としてはどういう体制でやっていくべきなのか、必要なところにどうやってお金をかけるのか、こういうところをやはりしっかり検討して対応策を出していく必要があるのかなと思います。

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