衆院選終わる【2】大阪から見えてくるもの
公開: 更新:
ニッポン放送報道部畑中デスクのニュースコラム「報道部畑中デスクの独り言」(第457回)
■「健闘」か?「埋没」か? 日本維新の会の評価
与党の一角を占める日本維新の会(以下 維新)。実は私は今回の選挙は維新担当になり、何度か大阪に足を運びました。今回の衆院選は高市政権そのものの是非を問うものでしたが、連立入りした維新にも当てはまるものだったと思います。

記者会見する吉村洋文代表 笑顔はなく……
選挙戦では「高市政権のアクセル役、推進力」を強力にアピールしていました。維新は「12本の矢」という政策を公約として打ち出しましたが、中でも連立合意書に盛り込んだ議員定数削減、消費税の食料品2年間ゼロを強調し、「改革を前に進める」と訴えました。さらに、将来につながる社会保障改革は各党がアピールしていましたが、維新は「元祖」であることを強調していました。大阪・関西万博の成功もアピール、大阪だけでなく東京でも「ミャクミャク」をもって演説を聞き入る有権者もいました。
また、遊説では「とにかく自民党は腰が重たい、改革に後ろ向き」「自民党は大組織で、高市さんの政策にコミットする議員だけではない」という発言が相次ぎました。自民党が圧勝することで、党内の「腰の重たい勢力」が強まることを維新は懸念していました。これは高市早苗総裁も同じ思いかもしれません。今回の大勝で高市総裁から見た「党内野党」「ブレーキ役」も確かに温存されました。今後の党内運営が注目されるところです。
さて、維新です。投開票日の夜、大阪・中之島のホテルに設けられた開票センターに高揚感はなく、吉村洋文代表に笑顔はありませんでした。午後9時過ぎに行われた衆議院選挙に関する記者会見。吉村代表、藤田文武共同代表ともに「難しい選挙」「厳しい選挙」を繰り返しました。「高市さんのメガトン級の風が吹いてきた」「自民党の圧を感じた」とも話していました。一方で自民党の大勝については、「心を合わせて最大化した」という評価も。維新の議席は36で、公示前より2増やす結果に。高市旋風の中でも、一定の支持があったことをうかがわせました。
■粛々とした大阪の選挙戦
一方、衆院選とのトリプル選挙となった大阪府知事選には3人、大阪市長選は5人が争いましたが、自民、中道、国民民主、共産の各党がともに擁立を見送りました。早々と知事に吉村代表、市長に横山英幸副代表に当選確実が出ました。
選挙戦中、ずっと大阪にいたわけではありませんが、少なくとも私が滞在した大阪市内を見る限り、街宣車はあまり見られませんでした。高市人気で沸いた全国の中でも、大阪だけは全体的に「静かな選挙戦」という印象でした。高市総裁は選挙戦中、大阪には入らなかったことも影響したとみられます。一部の選挙区では総裁の録音メッセージが流されましたが、このあたりは維新への「深謀遠慮」がにじんでいました。
とは言え、長らく「維新VS自民」の対決が続くこの地域、小選挙区は前回の維新の19選挙区全勝から、今回、大阪19区で維新に「土」がつきました。落選候補は比例近畿ブロックで復活当選。自民党は大阪の小選挙区で落選した18人のうち、6人が復活当選を果たしました。両党の激しい対決にほかの野党は完全に「埋没」する形となり、両党以外に大阪で復活当選をしたのは参政党の1人のみでした。

日本維新の会の開票センター 当選1人目の「札つけ」が行われた
■副首都構想の行方、維新の魅力とジレンマ
今回の選挙で私が注目していたのは維新の政策、アイデンティティの一つである「大阪都構想」「副首都構想」です。特に、副首都構想は自民党の公約にも盛り込まれていました。
副首都構想は首脳機能のバックアップという意味合いがあり、ほかの自治体でも意欲を示している地域があります。維新はこれに加え、副首都の礎として、大阪を東京のような複数の特別区に再編して、府と市の「二重行政」の弊害解消が必要と主張しています。これが「大阪都構想」です。
ただ、大阪都構想はこれまで2回、住民投票で否決されています。今回の府知事・市長選は「三度目の正直」を期す「出直し選挙」という意味合いもありました。吉村氏は来年4月までの任期中に大阪都構想の住民投票の実施を目指す方向ですが、実際に構想が実現するには住民投票のみならず、府議会、市議会の同意が必要です。大阪府、大阪市両議会の同意を得て「法定協議会」を設置します。そこで特別区の数、行政事務のあり方、コストなど具体的な制度設計をします。そして総務省の承認、府議会、市議会の承認を経て、ようやく住民投票と相成るわけです。いくつものハードルがある中で住民投票にこぎつけられるかどうかは不透明です。
さらに、副首都構想について、維新は首脳機能のバックアップのほかに、経済成長、生産性向上、地方分権につながるものと位置付けていますが、ここはほかの勢力との温度差があります。
維新の演説に集まった有権者の中には、熱烈な「維新ファン」も多く、魅力については「公約を必ず守る実行力」「吉村知事の発信力」「見栄えもいいし性格もいい」という声から、「維新が知事、市長になってから大阪の街がきれいになってきた」と実績を話す人もいました。聴衆は東京・大阪問わず、比較的若い「現役世代」の人たち、子ども連れも目立ちました。ただ、「大阪都構想」「副首都構想」については「副首都構想と大阪都構想のからめ方がわかりにくい」「人情味のある大阪の魅力が薄れてしまう」と懸念する人もいました。
大阪を取材すると、行政実績で圧倒的な「地元感」のある日本維新の会ですが、こと天下国家を論じると「人気の源泉」が薄まるというジレンマを抱えているように感じました。

大阪の自民党遊説では片山さつき財務相が応援に駆け付けていた(東大阪市内)
■首都圏で「副首都構想」はどのように映る?
副首都構想については、大阪では吉村代表が「東京とのツインエンジンで日本を引っ張っていく、関西を強くする。大阪の政治を一歩前へ」と力強く語っていましたが、首都圏の遊説で維新の幹部や候補者から語られることはほとんどありませんでした。その理由について、ある候補者は「首都圏の人たちにとっては、自分たちがどうなるのか、その上で日本全体にどういう成長をつくるのかという話法が必要になる。街頭演説は一方的なもので、誤解を招く可能性もあって、向いていない」と話していました。
ただ、票につながりにくいとはいえ、維新のアイデンティティである「大阪都構想」「副首都構想」を首都圏の遊説で説明しないのは、「画竜点睛を欠く」とも感じます。記者会見で吉村代表は「全国でも討論会ではなかなかテーマとして挙がらなかった」と述べた上で、「議論について国会で法案の審議に入ってくる」と今後に期待を示しました。副首都構想は与党の公約としている以上、自民党も応分の責任を負うものだと言えます。実現のためにどう説明していくのか、単なる「アリバイづくり」に終わるのか、本気度が問われます。
(了)





