ビッグモーター「保険代理店登録」取り消しへ 交通事故減少で「事故車両修理で収益を上げる」ビジネスが成り立たない

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ジャーナリストの佐々木俊尚が11月9日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。金融庁が保険代理店登録を取り消す行政処分を出す検討に入ったビッグモーターについて解説した。

【ビッグモーター家宅捜索】ビッグモーター茨木店=2023年10月6日午前、大阪府茨木市 写真提供:産経新聞社

【ビッグモーター家宅捜索】ビッグモーター茨木店=2023年10月6日午前、大阪府茨木市 写真提供:産経新聞社

中古車販売大手ビッグモーター、保険代理店登録取り消しへ

飯田)金融庁が調査に入っていました。

車の事故が少なくなり、「事故車両の修理で収益を上げる」というビジネスが成り立たない

佐々木)ビッグモーターの件を見ていて思うのは、そもそも車の事故が減っている。交通事故で言うと、昭和40年代の交通戦争と言われていた時代は、年間4万人くらい亡くなっていたけれど、いまは3000人を切っています。そのくらい減っているのです。その上、車自体も丈夫になって、昔のように故障しなくなった。ですので、「事故車両を修理する」というようなビジネスが業界全体で成立しなくなってきているのです。

飯田)損害保険というスキームそのものが。

佐々木)それでもビッグモーターは営業力だけで売り上げを伸ばそうとしたのですが、やはり無理があるわけです。環境や状況が変わったら、それに合わせてビジネスモデルを変えていかなければならないのに、そうしなかった。日本全体がその傾向にあります。集中的な労働だけで何とかしようとしている。

飯田)「エイヤ!」とやれと。

佐々木)そうなのです。例えばDXやデジタル化などで対応すべきところを対応せず、無理していたのがうまくいかなくなり、あちこちにほころびが生じてきた。それがビッグモーターの事件だという感じがします。

ビジネスモデルを変えずに労働力で何とかしようとするところに無理があった

飯田)特約店制度で修理するということで、裾野も広いだけに、なかなか変えられなかった。

佐々木)日本は諸外国と比べ、平均的な一般労働者の能力が高いので、そこに頼りすぎています。ビジネスモデルを変えずに、人間の力で何とかしようとする。それこそ江戸時代には産業革命ではなく、日本は勤勉革命という……。

飯田)手工業で。

全体的な仕組みを変える必要がある

佐々木)手工業で何とかしようとしてしまう。「勤勉に働けば何とかなるのだ」と考えてきたわけで、その伝統が未だに残ってしまっている部分があります。勤勉であることは大事なのですが、それだけですべてをカバーすることはできません。

飯田)約4万件の死亡事故が3000件以下になってしまえば、リスクを分散することによって、被害を受けた人にお金を払うというスキームそのものが成り立たなくなります。他の保険と一緒に売らなくてはならなくなり、損害保険のなかでも、自動車だけに特出して商品をつくることができなくなったのかも知れない。

佐々木)全体的な仕組み自体を変える必要があると思います。

飯田)このままでは経営が成り立たなくなるので、支援先を探しているビッグモーターですが、打診を受けた同業大手ガリバーを運営するIDOM(イドム)は検討を中止したようです。

佐々木)他の同業他社も余裕はないはずなので、難しいところです。この業界に再編が迫られるのは間違いありません。もう少し見守りたいと思います。

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