経済低迷の中国 強気一辺倒ではいられない

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ジャーナリストの須田慎一郎が11月20日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。米サンフランシスコで行われた日中首脳会談について解説した。

2023年11月16日、日中首脳会談~出典:首相官邸HPより(https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/actions/202311/16usa.html)

2023年11月16日、日中首脳会談~出典:首相官邸HPより(https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/actions/202311/16usa.html)

日中首脳会談、1年ぶりに開催

岸田総理大臣は11月16日、滞在していた米サンフランシスコで、中国の習近平国家主席と会談を行った。両首脳は戦略的互恵関係を包括的に推進することを再確認。岸田総理は日本産水産物の禁輸措置の即時撤廃を求め、両首脳は対話を通じて解決していく方針で一致した。

米中首脳会談とセットで見るべき

飯田)アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議のために滞在していたサンフランシスコで、日中首脳会談も行われました。今回の会談をどう見たらいいでしょうか?

須田)日中首脳会談だけでなく、米中首脳会談とワンセットで見る必要があると思います。一時期はデカップリングという言葉に代表されるように、「今後の西側と中国は距離を広げていく、あるいは最終的に分断される」という状況でしたが、そうではないということです。

「歩み寄るために何ができるのか」を探り合うスタートになった

須田)完全な分断は不可能なのだから、「分離するところと手を携えるところを分けていこう」という流れです。分離される部分の代表としては、半導体などがあると思います。経済安全保障という観点もありますから、半導体や通信はそのような方向になります。

飯田)半導体や通信は。

須田)一方で中国にとっても、完全にそこがデカップリングされてしまうと、特に半導体分野は自国経済にも大きなダメージがあるので、何とか譲歩を引き出したいところです。日本の海産物なども含め、「完全に輸出・輸入しない」などと分離することはできません。「歩み寄るために何ができるのか」を探り合うスタートになったのではないかと思います。

今後、日中間で「言うべきことは言う」状況になる可能性を秘めた日中首脳会談だった

飯田)スタートというのは、中身よりも「まず会うことが大事」という意味ですか?

須田)会い方ですよね。これまでの日本外交は、両国の友好関係を大事にしようとして、「言うべきことを言わない」というケースがありました。あるいは事務方に任せるようなところがあった。

飯田)首脳同士に関しては、にこやかに会うのだと。

須田)処理水の問題や、処理水に端を発した海産物の輸入停止の問題、あるいは尖閣周辺の日本のEEZに設置したブイの問題についても、岸田首相が言及して解決を求めた。「どの程度のレベルで求めたのか」は今後、検証が必要だと思いますが、その辺りについて言及しました。今後、日中間で「言うべきことは言う、求めるべきものは求めていく」という状況になる可能性を秘めた日中首脳会談だったのではないかと思います。

笑顔なく、厳しい表情で対応した岸田総理

飯田)結果の概要については外務省のホームページなどにも出ていますが、他にも邦人の拘束に関し、改めて早期解放を求めたということです。写真も掲載されていますが、笑顔はないですね。

須田)習近平国家主席は、国内向けの情報発信を強く意識しており、日本に対しては常に厳しい表情を向けてきました。それに倣ったわけではありませんが、変な譲歩をしたと思われないよう、あえて岸田さんもそのような表情をしたのではないでしょうか。

飯田)中国に関しては、いろいろな問題が山積していますからね。

須田)加えて日本国内の民意を考えた場合、中国に対して融和的な対応を取ると、自民党を支持している岩盤保守層が逃げていくという国内的な政治リスクも抱えています。岸田さんとしても、今後の政局において「にこやかに対応することは、プラスには作用しない」という計算が働いたのだと思います。

経済が低迷し、強気一辺倒ではいられない中国

飯田)他方、米中首脳会談は4時間あまり行われました。しかも2人で散策するシーンをメディアに撮らせた。これは習近平さんからの国内向けパフォーマンスの要求に、アメリカ側が応えた部分があるのでしょうか?

須田)バイデンさんも2024年に大統領選挙を控えているので、国内の中国系も意識していると思います。また、中国では不動産バブルが崩壊し、景気が低迷している状況のなかで、このまま西側諸国と強硬に対峙するやり方が通用するのか。次の経済成長の原動力を考えると、外国との良好な関係を欠いてしまえば、このまま失速しかねない状況があります。中国としても強気一辺倒ではいられないのでしょう。

飯田)アメリカ側もある程度、中国の要求に乗ったのかと思いきや、記者会見で「あなたは今後も習近平氏を独裁者と呼ぶのか?」という質問に対し、バイデンさんから「独裁者と呼ぶ」という発言がありました。最後の最後で「一矢報いたのか」と思いましたが。

須田)それはある意味で日本基準なのです。民主主義の基準からすると、独裁者であることは間違いありません。「言うべきことは言う、指摘すべきところは指摘する」というのがアメリカ政治のベースなので、忖度や配慮はしません。バイデンさんのいつもの対応だと思います。「ブリンケン国務長官が眉間に皺を寄せた」というような報道もありますが、映像を観ても、偶然ではないでしょうか。

飯田)バイデンさんも「統治形態が我々とは違う」ということを言っていました。そうなると、不規則発言というよりは、練られた上での発言かも知れませんね。

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