キヤノングローバル戦略研究所主任研究員でジャーナリストの峯村健司が11月24日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。日本が逆転敗訴した慰安婦訴訟のソウル高裁の判決について解説した。
慰安婦訴訟で日本が逆転敗訴
韓国の元慰安婦や遺族ら合わせて16人が日本政府を相手取り、元慰安婦1人当たり2億ウォン(約2300万円)の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、ソウル高裁は11月23日、訴えを却下した一審判決を取り消し、請求全額を支払うよう日本政府に命じた。
飯田)主権国家は他国の裁判権には服さないという国際法上の「主権免除」の原則があるため、日本政府はそもそも参加していません。
原告側の弁護士「勝訴するとは思っていなかった」
峯村)それは常識です。驚いたのは、判決後に原告側の弁護士が「まさか勝つと思わず、何も準備していない」と言ったことです。原告の弁護士ですら想定外な判決であり、「韓国の司法制度はどうなっているのだろうか」と思います。法的に見ても、判決文を見ても、よくわからない判断といえます。
説得力に欠ける判決
飯田)法に照らして判断したというよりは、イデオロギーの場になってしまったような感じですか?
峯村)イデオロギーもそうですし、唯一の根拠として言っていたのは、国際司法裁判所(ICJ)の例です。武力紛争下の違法行為は「主権免除が認められた場合もある」ということで、ロシアによるウクライナ侵攻に関し、ウクライナの最高裁がロシアに国家賠償を求めたケースを挙げています。しかし当時の日韓両国の関係は、武力紛争下ではなく、この事例は当てはまらないでしょう。
飯田)日韓の場合は。
峯村)主権免除も「これは厳しい」というものがあります。もちろん、それだけではなく、日韓の間では2015年の合意があったわけです。「最終的かつ不可逆だ」と言っているわけですから、どう考えてもおかしな判決です。
飯田)日本政府の立場としては、そもそも日韓請求権協定と日韓基本条約によって、最終的に解決している話です。当時、主権免除があるから何とかクリアするため、一括で出せるように請求権協定をつくったはずなのですよね。
峯村)そうですよね。もちろん司法は独立しているということもあるでしょうが、あまりにも説得力のない判決だなという印象です。
日韓の関係改善の強化に水を差させてはいけない
飯田)韓国政府としてもどう動くのか。
峯村)動かしようがないですよね。日本の資産を差し押さえる方法もあるでしょうが、手段自体がないと思いますし、いまの尹政権は対日関係を重視しているので、そこはぶれないと思います。
飯田)ようやく仏像の話などが正常化してきたところで。
峯村)日韓の関係改善強化は進んでいると思いますが、そこに水を差す出来事ですね。しかし、逆に水を差させないようにしなくてはいけません。
飯田)他のところを固めていく。
峯村)そうですね。
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