元衆院議員で弁護士の若狭勝氏が12月8日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。京都アニメーション放火殺人事件の裁判員裁判について語った。
京都アニメーション放火殺人事件の裁判員裁判、検察が青葉被告に死刑を求刑
京都アニメーションのスタジオが放火され、社員36人が死亡した事件の裁判で、殺人などの罪に問われている青葉真司被告に対し検察は12月7日、死刑を求刑した。一方、被告の弁護士は、責任能力はなかったとして改めて無罪を主張した。
刑事責任能力の有無が争点
飯田)刑事責任能力が争点だと言われていますが、どうご覧になりますか?
若狭)刑事責任能力というのは、「それがいいことか、悪いことか」を判断する能力です。その判断に基づいて、自らの行動をコントロールできる能力のことを言うのですが、今回の裁判は、まさにそうした能力が「あるか、ないか」が最大の争点でした。
この事件で死刑求刑できなければ、今後、死刑求刑はできない
若狭)検察は「完全にその能力があった」として、死刑を求刑した。一方、弁護側は「その能力が少し弱かった、あるいはまったく欠けていたため無罪」と主張し、検察側と弁護側が真っ向から対立していたのです。今回、検察は死刑を求刑しましたが、検察のスタンスとしては死刑求刑しかなかったと思います。
飯田)検察のスタンスとしては。
若狭)36人が亡くなっており、火をつけて苦しませながら殺害するという方法も極めて悪質です。また、被害者遺族が厳重処罰、要するに死刑を求めていることを鑑みても、検察はこの事件で死刑を求刑できなかったら、今後、死刑求刑はできないというような状況だったと思います。
検察側の精神科医と弁護側の精神科医の責任能力についての見解が対立 ~どちらを採用するかが裁判員の議論対象に
飯田)責任能力について、青葉被告が相当な段取りをしていたところから、検察としては「正常な判断能力があった」と主張しているわけですか?
若狭)責任能力があるかないかは、動機が何なのか、計画性があったのか、犯行直後の本人の行動がどういうものだったのかなど、総合的に見て判断されます。主に精神科医による「当時どういう精神状態だったのか」という分析が、責任能力を判断する決め手になるのです。
飯田)精神科医の分析が。
若狭)しかし、今回は被告人の責任能力について、精神科医が相対立するような見解を述べました。検察側の精神科医は「完全に責任能力がある」とし、弁護側が申請した精神科医は、「完全な責任能力はなかったのではないか」という結論を示しています。どちらを採用するかが、裁判員の1つの大きな議論対象になると思います。
裁判員が一般感覚から当時の犯行に至る心理状況を「理解できるか否か」で判決の行方が決まる
飯田)専門家であってもそれだけ割れてしまうのに、プロではない裁判員の方々が判断しなければならないのは難しいですね。
若狭)そうなのです。専門的な話ですから、言葉を聞いても専門用語が多いので、普通の人が理解しにくいところもあります。ただ法律的には、精神科医の言うことに必ずしも拘束される必要はありません。当然、悪いことであり許せないけれど、裁判員が一般感覚から、本人の当時の心理状況について「犯行に至ったことを一応は理解できる」と思うのか。あるいは我々市民としても、まったく行動パターンが読めず、「なぜ、このような動機でこのような犯行をするのか理解できない」と裁判員が感じるのか……。来年(2024年)1月に判決が言い渡されるようですが、その判断によって判決の行方が決まると思います。
飯田)判決は2024年1月25日に言い渡される予定です。
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