作家で自由民主党・参議院議員の青山繁晴とジャーナリストの須田慎一郎が12月12日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。パレスチナ自治区ガザ南部まで到達したイスラエル軍の侵攻について解説した。
イスラエルのネタニヤフ首相が「ハマスの終わりの始まり」と主張
イスラエルのネタニヤフ首相は12月10日のビデオ声明で、イスラム組織ハマスの多数の戦闘員が投降したとして「ハマスの終わりの始まりだ」と主張した。ロイター通信によると、イスラエル軍の戦車が10日、地上侵攻するパレスチナ自治区ガザ南部の最大都市ハンユニス中心部に到達したとのこと。
飯田)南部侵攻も最大都市まで及び、「いますぐ降伏しろ」と要求しているようです。このままガザ全土にイスラエル軍は進駐していくのでしょうか?
ネタニヤフ首相も「終わりの始まり」
青山)ハマスがかなり追い詰められているのは事実です。でも、ネタニヤフ首相も終わりの始まりではないかと思います。
飯田)ネタニヤフ首相も。
青山)いま、ガザもパレスチナ自治区ではなくイスラエルが支配、あるいは傀儡政権をつくって……1993年のオスロ合意など、双方がきちんと主権を確立しようと決めたことを全部捨てるような意図があり、それがわかってしまっていますよね。
イスラエル国内で支持率が低いネタニヤフ首相
青山)先日、外交官になることが決まったイランの学生たち10人以上と、私を含めた日本の国会議員2~3人で直接議論する場がありました。イランはハマスを自主的に応援していますから、かなり激しい議論になったのですが、私は「外交官として多様な見方を身に着けて欲しい」と思いました。
飯田)多様な見方を。
青山)同じイスラエルでもラビン首相という、もともとは軍の強硬派だったけれど考え方を変えた人が、ノルウェーのオスロで、当時のPLOのアラファト議長と水面下の交渉も含めて合意に至ったわけです。そのラビン首相が、イスラエルの若い過激派に殺されてしまった。
飯田)そうでしたね。
青山)ネタニヤフ首相の強硬路線だけが全部イスラエルなわけではなく、脈々と続いているのです。日本でもさまざまな考え方がありますが、外交官であるならば「ハマスが絶対に正しい、イランが絶対に正しい」と考えるのではなく、それぞれの相手の立場があることを理解して欲しい。「それが民主主義だから」ということをお願いし、最後はよくわかってくれました。
飯田)それぞれの立場がある。
青山)イスラエル国内のネタニヤフさんの支持率はとても低いです。岸田さんより低いかも知れません。「あのような強硬なやり方で、イスラエルは果たして生きていけるのか」と、みんな疑問を持っているわけです。
2つの主権国家をつくるべき
青山)最終的には自治政府ではなく、パレスチナ人の主権国家とイスラエルという主権国家を共存させるしかありません。先日、ノルウェーのストーレ首相が訪日され、朝食会で話す機会がありました。オスロ合意の失敗はイスラエルが全体を持っており、そのなかに自治区をつくったからこのような悲劇が起きているので、私は「2つの主権国家をつくるべきだ」と言い、基本的には「そうですよね」という話になりました。これは強硬路線のネタニヤフ首相にはできない話です。
飯田)入植地を増やして、パレスチナを圧迫するだけですからね。
青山)(オスロ)合意の破壊ですよね。本当の問題はガザよりも、ヨルダン川西岸地区の方で、もっとすさまじい事態も起きているわけです。かつてのユダヤの人々のように、パレスチナ人を世界中に散らせるわけにはいきません。数千年経っているわけですからね。2つの主権国家をつくるしかない。そのときは、イランと日本との信頼関係も活かせるはずだということを言いました。
ネタニヤフ政権が強硬派になる理由
須田)なぜネタニヤフ政権が強硬派になるかと言うと、小党乱立で、宗教右派と言われている過激派を入れ込んでしまったからなのです。彼らはパレスチナの存在そのものを認めず、「すべてがイスラエルだ」と主張する人たちであり、それが政権内にいる以上、決着には結びつかないのではないでしょうか。現状では無理ですね。
青山)須田さんの言う通りで、実際にエルサレムへ行くと空かずの門が未だにあり、「救世主が来たら開ける」と言うのです。私は「キリストが2000年前に来たではないか」と言いましたが、ユダヤ教からすれば、キリスト教は新興宗教なのです。宗教が果たして人間を救うのか。ずっと血が流れていますので、複雑な気持ちになります。
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